遠距離
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*りんside*
世界大会の日本代表が集まる強化合宿。
その合宿所は…私の想像を遥かに越えた大きさでした。
白「りんちゃんが来てくれてほんまに嬉しいで。今、目の前におることが奇跡みたいや」
『わ、私も…白石さんの傍にいることが、夢みたいです///』
白「…りんちゃん」
『っ白石さん、』
お互いに向かい合って座る。
白石さんに見つめられる度、正座していた足が勝手にもじもじと動いてしまう。
ふ、と優し気に目を細める姿に、ドキンと大きく鼓動が鳴った時……
幸「…君達、いつまでそうしている気だい?」
不「一応、ここは僕らの部屋でもあるんだけど…」
呆れたような幸村さんと不二先輩の声に、慌てて振り向いた。
『えと、ごめんなさい…っ///』
白「先寝てて良かったんやで?」
幸「うん、君達が夜中に帰ってきてイチャイチャし始めるまでは気持ち良く寝てたんだよ」
2段ベッドの下で話し合い(?)をしていた白石さんと私。
"イチャイチャ"してる自覚なんてなかったから、カーと顔が赤く染まっていった。
ここは、合宿所の寮の中。
夜遅くに到着したこともあり、それぞれの施設は後日訪れることになって。
コーチや先生達に挨拶すると言った要先生とは別れて、私は白石さんに案内されるまま寮に入っていった。
寮は4人部屋が基本らしく、白石さんは不二先輩と幸村さんと同室だった。
『あの、私、ここにいていいんでしょうか?』
急に合宿に参加して、当然のように寮の部屋にいていいのだろうかと不安になる。
不「この時間に女子部屋に行くのもなんだし、いいんじゃないかな」
『あの、起こしちゃって本当にごめんなさい…』
幸「大丈夫だよ、気にしないで」
睡眠妨害してしまったことが申し訳なくて、しゅんと頭が下がる。
「りんちゃんが参加してくれて嬉しいよ」と2人は優しく笑い、私は安心して頬を緩めた。
不「じゃあ、僕は裕太の様子でも見てくるよ。裕太、昔から枕が変わると眠れないんだ」
幸「俺は赤也が夜更かししてないか見てこようかな。ゲームしてたら没収してくるよ」
不二先輩が唐突にそう言うと、幸村さんもふふっと楽し気に微笑む。
白石さんも含めて、3人共とても綺麗な顔立ちをしているから、揃うと妙に威圧されてしまう。
えっえっ、と混乱している間に、2人は部屋を出て行ってしまった。
『や、やっぱり、迷惑だったんでしょうか…』
白「(気ぃ遣うてくれたんやなぁ…)」
暫くポカンと目を丸くしていた私は、白石さんの正面にいることが急に恥ずかしくなって。
白石さんが少し動いただけで、ドキッと鼓動が大きな音をたてる。
白「なんちゅーか…こう改めて2人きりになると、照れるもんやな」
『!』
白石さんも同じことを思ってたなんて思わなくて、さっきよりもポカンとしてしまう。
そんな私が面白いのか、くすくす笑う白石さん。
…やっぱり、本物ってすごい。
メールも、電話も、白石さんとやり取りするだけで嬉しくて、ドキドキする。
でも、目の前で声を聞いたり、顔を見てしまうと…もっと、
『(…愛おしいなぁ)』
ぼおっと白石さんを見つめてしまっていることに気付けなくて。
白石さんは私と目が合ったと思ったら、すっと視線を逸らして、顔を覆うように掌を当てた。
白「…ほんま、堪忍してや」
『ふぇ?』
白「自分、今どんな顔しとるかわかっとる…?」
『か、顔??』
どんなって、どんなだろう。
白石さんは手を伸ばして、私の頬にそっと触れた。
白「俺のことが大好きで、仕方ないって顔しとる」
ふぇ!?と身を跳ねたくても、真っ直ぐに見つめてくる白石さんに何も言えなくなってしまう。
ドキドキと煩くなる鼓動に耐えながら、ぎゅっと目を瞑る。
頷こうとしていると、白石さんはコツンと額と額を合わせてきた。
白「…俺も会いたかった」
「いつもりんちゃんのこと考えとった」と囁く白石さんに、胸の奥がきゅっと締め付けられる。
苦しくて、恥ずかしくて。それでも応えなくちゃと、私も白石さんの頬にそっと手を添えた。
『じゃあ…一緒ですね』
離れた場所にいて、会いたいと思ってたのは私だけじゃなかったんだ。
もしかして白石さんも、普段から寂しいと思ってくれてたのかな…?
微笑む私を見て、白石さんは少しだけ目を丸くしてからふわっと頬を緩める。
くっついた額からお互いの気持ちが伝わっているみたい。
その時、ジリリリリリと寮全体に大きな音が響き渡った。
『な、何でしょうか?』
白「…火事、やないよな?」
呟いた白石さんの言葉に、もしかしたらそうかもしれないと不安が大きくなる。
『私、見て来ます…っ』
白「え、りんちゃん!?」
白石さんの声を背中に受けながら、ピューッと駆け出していた。
大きな音は寮だけじゃなく、合宿所全体に響き渡っているみたいだった。
何処を歩いても火が燃えているような形跡はない。
『何かあったのかな…』
火事じゃなくて、不法侵入とか……
広すぎる合宿所を1人で歩いていることが急に怖くなってきて、サーと顔が青ざめていく。
ザザッと人が動いた気配に、ビクゥと浮く身体。
慌てて近くの柱に隠れると、建物の中から誰かが出てきた。
『……へ、』
どうして……
『お兄ちゃん…?』
他の人もいるのに、不思議とお兄ちゃんしか目に入らない。
独り言のような言葉に反応するように、お兄ちゃんが振り向いた。
お互いの存在を確かめるような視線が絡み合う。
やがてそれは別の方向に逸れて、お兄ちゃんの姿は茂みの中に消えていった。
『お、にいちゃん……』
その時ふと、あの夢が頭の中を過った。
"お兄ちゃん、何処…?"
真っ暗な闇の中、何度呼んでも応えてくれない。何処を探してもいない。
胸をえぐるような、悲しい夢。
大きな音が薄れて遠くなっていく。
私はお兄ちゃんが消えた場所を、ずっと見つめ続けることしか出来なかった。