遠距離
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菊「りんりん~!!」
『菊丸先輩!』
ガバァと抱き付いてきた菊丸に驚きながらも、りんはぎゅっと抱き締め返す。
が、すぐ後ろにいたリョーマに剥がされていた。
桃「よ!元気かー?」
『桃城先輩!』
博「げ、兄ちゃん」
海「ちゃんとやってるか?葉末」
葉「やってますよ…兄さん」
りんとリョーマの後に続いてやってきた弟達を見て、ほぼ同時に声を掛ける桃城と海堂。
3組の兄弟の戯れを静かに観察していた不二は、パシャッと謎のシャッターを切った。
大「2人共久し振り」
桃「って正月に会ってるじゃないっスかー」
河「はは、結構顔合わせてるんだね」
『そうですね』
合同練習の日に会える皆と違って、別の学校に通う大石とは会える機会が少ない。
にも関わらず、お正月には皆で越前家で鍋をつついたり、ホワイトデーはチョコフォンデュを食べに行ったりしていた。(りんへのお返しも兼ねて)
先輩達が卒業してしまった時はあんなに泣いたのに、今は以前よりも仲が良い気がする。
その事実が嬉しくて、口元を綻ばせるりん。
その横では、「で、先輩達何しに来たんスか?」と菊丸に抱き付かれながら、リョーマが溜め息を吐いていた。
大「今年の夏に、イギリスのウィンブルドンでテニスの世界大会が行われるのは知ってるか?」
リョ「…まぁ」
大「その日本代表に、候補として青春学園の名が上がっているんだ」
テニスの聖地、ウィンブルドンで強豪ジュニア選手の世界大会が行われる。
その日本代表の1校として、全国大会優勝の経歴を持つ青春学園が選ばれたのだ。
『じゃあ、大会に出れるんですか?』
乾「いや、まだ決まった訳じゃない」
不「実は…僕らの実力は不完全らしくて、世界大会に向けて3ヶ月の強化合宿が義務付けられたんだ」
『さ、3ヶ月も?』
それも、1週間後に出発するらしい。
大会の主催者側の試みなので、皆もつい最近情報を知ったのだった。
大「大会は強制参加じゃないが、今日は2人の意見を聞きにきたんだ」
リョ「俺は参加するっス」
『私も、何かお手伝い出来ることがあるなら』
選手ではないけど、マネージャーとして皆のサポートがしたい。
頑張るぞっと心の中だけで活を入れた筈が、周囲にはバレていて。
「気張りすぎ」とリョーマに軽く頭を叩かれるりんを、皆も笑って見ていた。
合宿のことは、その日の夜に話した。
南「……………」
『合宿の間の授業は、向こうで新設した学校があるから、そこで学べるんだって』
倫「へ~すごいじゃない、学校があるなんて」
菜「そしたら勉強に遅れることもないわね」
『うんっ』
『それで、それで』と興奮して話すりんの声を、リョーマは夕食をとりながら聞いていた。
こういった部活の話をするのはいつも妹で、自分は基本的に黙っている方だ。
その話し方から楽しみで仕方がないことが伝わってきて、あまりいい気はしなかった。
倫「良かったじゃない。蔵ノ介くんも参加するんでしょ?」
『!う、うん……///』
リョーマの眉がピクッと動く。
その名前に頬を赤く染めるりんだが、少し前までは『く、蔵ノ介くんって呼ばないで…!』と母に訴えていたのだ。
リョ「(…そんなに会いたいんだ)」
りんがあの人を大好きなことは知ってる。
あの人が(気持ち悪いくらい)りんを好きなことも知ってる。
兄として"見守りたい"と思っているのに、眉間に皺を寄せていることにリョーマは気付かなかった。
倫「それじゃあ一緒の学校に通えるってこと?」
『うん!おに「いたたたた」
菜「おじ様?」
突然、自身のお腹を押さえだした南次郎に視線が集まる。
その苦しそうな姿に、りんは慌てて駆け寄った。
『!大丈夫?お父さん』
南「いや、駄目みたいだ…お父さん持病があるから」
『え!お、お父さん病気だったの?』
倫「…………」
リョ「…………」
母と息子に目を細めて見つめられても、フリを続ける南次郎。
対して少しも疑わないりんは、心配そうに父のお腹をさする。
南「いや、普段は発症しないんだが…寂しいとストレスが溜まってなるんだ」
リョ「…何の病気だよそれ」
南「りんが3ヶ月も家を留守にしたら、また発症するかもなぁ…」
『!そんな、』
自分のせいで、南次郎の持病が酷くなってしまうかもしれない。
りんは深く悩んだ末、結論を出したのか顔を上げた。
『わかった……私、行かない』
南「!」
菜「そんな、りんちゃん」
山奥で合宿をしている時にもし発症してしまったら…取り返しがつかないかもしれない。
「お父さんなんか気にしなくていいのよ」と倫子が言っても、りんは頑なに首を振る。
菜「リョーマさんからも言ってあげて」
リョ「別に、いいんじゃない」
菜「え?」
空になったお皿を重ねながら、ぽつり呟いたリョーマ。
リョ「大会に出るのは選手なんだし」
南「リョーマの言う通りだ。山奥に行くのは青少年達だけで十分!」
今までは目を瞑ってきたが、3ヶ月も大事な愛娘を野獣の檻に入れるような真似は出来ない。
そんな心中の南次郎よりも、あっさりと認めたリョーマに菜々子は驚いた。
すぐにりんに視線を移すと、目を丸くしていた彼女はすっと悲しそうな表情になって。
『…うん』と声を出した時はいつもの笑顔に戻っていた。
『そうだよね。先輩達によろしくね、お兄ちゃん』
リョーマは横を向いたまま頷いただけだった。