迷路
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*りんside*
〈喉の風邪を引いてしまったので、暫く電話に出られません〉
『(ごめんなさい、)』
綴った内容を確認してから、ピ、と白石さんにメールを送信する。
大阪へ行ったあの日以来、白石さんとはメールも電話もしてない。(年賀状は届いたけど…)
理由は、お正月で忙しいのかもと思ってしまって、自分から連絡出来ないこと。
あと…電話越しの声を聞いてしまえば、絶対絶対、会いたくなっちゃうから。
『(やっぱり…)』
今更、こんなことを思うのは可笑しいのかもしれない。
だけど…やっぱり東京と大阪の距離はすごく遠い。
今日、皆と会えたように、白石さんにもすぐに会えたらいいのに。
1日の些細な出来事を、顔を見て伝えられたらいいのに。
トントンと軽くノックをする音が聞こえて、慌てて部屋のドアを開けた。
不「りんちゃん、この本の続きあるかな?越前がりんちゃんの部屋にあるって言ってたから」
不二先輩はニッコリ笑って、以前お兄ちゃんに貸して貰った推理小説を見せた。
すぐにコクリと頷き、本棚を探す。
読み終えたばかりの本はすぐに見付かり、たたた…と小走りで先輩の元へ持って行った。
不「ありがとう。りんちゃんが推理小説なんて意外だな」
『"おにいちゃんがおススメだっていうから"』
そう書いて微笑むと、不二先輩は「そっか」といつもみたいに優しい笑みを浮かべた。
菊「いぇーい!ウノ!!」
桃「えー英二先輩もうスか!?」
リョ「ドローフォー」
桃「よくやったぜ越前!」
菊「何だよ何だよおチビー!!」
隣の部屋から響いてくる、楽し気な声。
お兄ちゃんと桃城先輩と菊丸先輩は、ウノで盛り上がってるみたい。
海堂先輩はカルピンと遊んでくれてて、乾先輩と河村先輩は、外でお父さんに付き合ってテニスをしてて、そして大石先輩はお母さんの話に付き合ってくれてて…(ほ、ほんとにごめんなさい)
心の中で頭を下げていると、不二先輩がクスリと笑った。
不「りんちゃんはこんな時でも他人の心配するんだね」
『?』
不「裕太も、同じような風邪引いた時は辛そうだったから」
それを聞いて、裕太さんも?と不安が軽くなる。
不二先輩はじっと私を見つめながら、「早くりんちゃんの声聞きたいな」と微笑んだ。
"私も早くせんぱいたちとはなしたいです"と綴っていると、「…でも」と続く。
不「言葉がない方がいい時もあるよね」
それって…?と意味を考えていると、「りんー!」と下からお母さんが呼んだ。
不二先輩と一緒に階段を下りていくと、リビングに近付く度聞こえる声が大きくなる。
そこで、はたと足が止まった。
「おっいC~!」
「やっぱ炬燵にはミカンだよなー」
『(あ、あれ?この声って…)』
もしかしてと思いながら扉を開けると、「あ、りんちゃ~ん!」と炬燵から手を振るジロちゃん。
「お邪魔してるぜ」とニッと笑うがっくん………
『(!ジ、ジロちゃんがっくん!?)』
何でここに?と言いたいのに、代わりにケホッと咳が出てしまう。
後ろにいた不二先輩が気を利かせて、「何で2人が?」と聞いてくれた。
芥「りんちゃんと一緒に初詣行きたくて、誘いに来たんだ~」
岳「そしたらおばさんが入れてくれてさぁ」
倫「岳人くん、ジローくん、ミカンいっぱいあるからね」
『(いつの間に名前聞いてる…!)』
まるで前から知っていたかのように、お母さんは2人と接している。
その適応力の高さに何だか恥ずかしくなっていると、「りん、」とお母さんに手招きされた。
倫「やるじゃないの。こーんなにたくさんの男の子に誘われるなんて……あ、大丈夫よ、蔵ノ介くんには黙っておいてあげるから」
『!』
耳元でヒソヒソと話し、ウィンクするお母さん。
「誰と一番仲がいいの?」と聞かれて、ボードの存在も忘れポカポカとその肩を叩いた。
岳「よし、じゃあ初詣行こうぜ!」
芥「わーい!りんちゃん行こ、行こーっ」
『(ゎわ…!)』
ぐいぐいとジロちゃんに腕を引かれて、言葉を綴る暇もなく玄関の外に連れていかれる。
慌てて靴を履き直していると、「あー!!」という叫び声と共にドタドタと階段を下りる音がした。
菊「りんを連れていくな!」
岳「何だよ菊丸、ちょっとくらいいーだろ!」
芥「そうだC!青学はいっつも一緒にいるじゃん!」
『!"ケンカしないで"』
菊丸先輩が慌てて私の腕を掴むと、今度はジロちゃんが反対の腕を強く握る。
右へ、左へと引っ張られて、皆には私が書いた文字なんて目に入っていない。
芥「あ!マタタビ!」
菊「ほぇ?」
菊丸先輩が気を逸らした隙に、ジロちゃんとがっくんは私の腕を引いて走り出した。
後ろから「あー!騙したにゃ!?」と先輩の大きな声が響く。
猫だまし…と呑気なことを思っていた私は、ハッと気付くと慌ててボードに書いた。
『"すぐかえります"』
手を引かれながら、しょんぼり肩を落とした菊丸先輩が、不二先輩に慰められているのが見えた。
芥「ねーねー2人は何お祈りしたの?」
岳「ばっか、人に言ったら叶わなくなるんだぞ?」
『"いっぱいお祈りしたよ”』
あれから、ジロちゃんとがっくんと神社まで行き、3人でお参りをしました。
出店で買った袋の綿あめを3人で分けながら商店街を歩いていると、「そーいやさ」とがっくんが切り出した。
岳「何でボードに書いてんだ?普通に喋ればいいじゃん」
このタイミングで聞かれたことに戸惑いつつ、のどがいたくて…とボードに綴っていく。
ばっとそれを見せた瞬間、「こら岳人!!」という声が響いた。
「お前は店番サボって何やってんだい!?」
岳「げっ母ちゃん…!」
「ジロー!!あんたも今まで何処ほっつき歩いてたの!?」
芥「わ、わ、お母さん…!」
隣同士にあるお店から、ほぼ同時に飛び出してきた女性。
2人共顔や髪型がそっくりで、すぐにジロちゃんとがっくんのお母さんだってわかった。
襟首を掴むと、「あらっ」と少し驚いたように私を見る。
「ごめんなさいね、うちの子が振り回しちゃって」
慌てて手と頭を横に振ると、がっくんに良く似た笑顔で笑った。
「ほら行くよ!」とお母さんが引き摺ると、「嫌だC~助けてりんちゃん!」と暴れるジロちゃん。
がっくんも同じようにお店の中に引き摺られていき、私はぽつんと佇むしかなかった。
『(そっか、隣同士なんだっけ…)』
"芥川クリーニング""向日電器"と書かれたお店を見上げて、冷静にそんなことを思ってしまう。
取り合えず、お兄ちゃんにメールしなきゃと鞄を探っていると、「りん様?」と後ろから声を掛けられた。