愛のカタチ
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*りんside*
私を見下ろしていた筈の白石さんは、すっと視線を逸らした。
ゆっくり身体を起こし、私はその場に正座する。
バクバクと乱れていた鼓動が落ち着いてくると、『やっぱりって…?』と尋ねた。
白「旅行行った時、りんちゃんのこと襲いそうになったんやろ?」
『!』
そうゆうことには鈍感な私だけれど、(←雪ちゃんに言われるから)あの時、白石さんがキ、キス…の先をしようとしていたことはわかった。
違うかもしれないけれど、もっと近付きたいって、そういうこと…だよね?
顔を赤くしたままの私に、白石さんは困ったように笑う。
白「あの時のこと覚えてへんけど、多分そうかなって……俺、りんちゃんのこと好きやから」
"好き"と言われて、無意識に鼓動が跳ねる。
白石さんは、
『…私でいいんですか?』
疑ってるわけじゃない。でも、白石さんみたいにかっこよくて素敵な人がって思ってしまう。
空いた距離のまま、白石さんは微笑んだ。
白「りんちゃんしかおらへんやろ」
白石さんを好きな女の子はいっぱいいるから、私だけって思ってくれることが嬉しくて、嬉しくて…
私も、言わなくちゃ。
『えと…』
白石さんに触れたいって思った。キスしたいって…思った。
だから、近付きたいのは、私も一緒だよって。
『……嬉しいです』
驚いた顔の白石さんと目が合っても、今度こそ俯かないように決めた。
『白石さんがそんな風に思ってくれていたこと、嬉しいです』
微かに目を見開いたままの白石さんに、更に続ける。
『それに……恥ずかしくても、白石さんとなら、何でもいいから』
ぎゅっと強く抱き締めてくれるのも、苦しくて息のする暇もないキスも。
心臓が壊れそうでも、白石さんがしてくれることなら何でも嬉しいと思うから。
距離を縮めようとすれば、白石さんはふいっと顔を背けてしまう。
白「………今見んとって。多分、めっちゃ顔赤い」
そう言って片手で顔を隠す白石さんを、ポカンと見つめる。
本当に…耳まで赤い。
白「爆弾発言やからそれ…」
『??』
どうやら爆弾発言をして、白石さんを困らせてしまったみたい。
でもでも、全部本当のことだし……
他にどんな言い方があるかなと考えていると、急に白石さんに手を引かれた。
ぽすっと白石さんの胸の中へ、横を向いたまま収まることになる。
白「…でも、そういうことはまだ先やな」
『先って…?』
白「りんちゃんが高校生になったらとか」
ほっとしたような残念なような複雑な気持ちになる。
『(ざ、残念…!?)』
何でも言っていいって言ってくれたけど。
(さっきまでとんでもない発言をしていたにも関わらず)これは絶対に言えないと首を振った。
突然白石さんの手が頬を撫でてきて、ビクッと全身が浮く。
白「これだけでそんな顔するしなぁ」
くすりと笑う白石さんは余裕いっぱいで、さっきまでの顔が嘘みたい。
自分の顔を知りたいけど、白石さんに頭を引き寄せられているから出来なかった。
トクリ、トクリと鳴る鼓動が心地好くて、そっと瞼を閉じる。
時計の針が12時を差した時、「誕生日おめでとう」と優しい声音がした。
『(眩しい…)』
カーテンの隙間から差し込む光に瞼を空ける。
見慣れない天井をぼうっと見上げていると、ぷに、と柔らかいものが頬に触れた。
『?』
顔の向きを変えると、「みゃー」と鳴く真っ白な猫。
私はそっと身体を起こして、そのこを抱えた。
『もしかして、あなたがユキちゃん?』
「みゃー」
大きさは同じくらいなのに、カルピンよりずっと軽い。(ダイエットさせなきゃっ)
猫のユキちゃんはベッドから下りると、床で眠る白石さんの元へ駆け寄った。
そういえば、昨日…どうやって眠ったっけ?
白石さんに抱き締められるのが心地好くて、安心して……
そんなことを考えていると、胸元に何かがあることに気付いた。
『……これ、』
それは、小さなハート型のネックレス。
華奢で、控え目なデザインが可愛らしくて。
私は驚いて白石さんの背中を見つめた。
『……白石さん…』
内緒でバイトを始めたのは、もしかして……
こんなに高そうなもの、大変だったに違いない。
ぽた、ぽたと涙が頬を伝う。
幸せで苦しいなんて…私、可笑しいのかな。
聞こえる筈もないのに、『ありがとう』とその背中に囁いた。
白「りんちゃんが作ってくれた卵焼き、旨かったなぁ」
さく、さくと誰も踏んだ後のない雪の上に、2つの足跡が付いてゆく。
外は寒い筈なのに、不思議と繋いだ手は温かかった。
「味噌汁も魚も全部な」と今朝作った朝ごはんを誉めてくれる白石さんに、私は微笑んだ。
『お口にあって良かったです』
白「もう毎日食べたいくらいや」
えへへと笑い返しながら、毎日…?と引っ掛かった。
そ、それって…!?
言葉の意味を深読みし過ぎて慌て出す私を、白石さんは不思議そうに見つめた。
『(私のバカバカ…!そんなわけないのに///)』
落ち着きを取り戻そうと胸に手を当てた時、首に掛かるネックレスが目に留まった。
外で見ると、もっと輝いて見えて綺麗。
『でも、文月さんってジュエリーショップで働いてるんですね』
白「せやけど、姉ちゃんのとこで買うと詮索してくるから、別のとこで買いたくてな…」
文月さんの話をすると、白石さんはぐったりした様子でそう教えてくれた。
前に白石さんがくれたペアリングは、お姉さんのお店で買ってくれたみたい。
新幹線の乗り場までついてきてくれた白石さんに、足を止めて向き合う。
『あの、送ってくれてありがとうございました』
白「気ぃ付けてな」
『家族の方にも、よろしくお伝えくださいっ』
白「うん」
ぽんぽんと頭を撫でられると、寂しいという気持ちが少しだけ和らぐ。
『これ、一生大切にしますねっ』
ネックレスをさしてそう宣言すれば、「一生って」と白石さんの顔が綻ぶ。
白石さんがくれたものだもん、命より大切にしなきゃ。
皆へのお返しのプレゼントを考えていると、発車のベルが鳴り響いた。
繋いでいた手を離し、小走りで入り口に向かっていた足を止めて、振り返った。
手を上げて微笑んでくれる白石さんを見たら、伝えたくなって。
『白石さんっ』
大好き!
鳴り響くベルに急かされるように背中を向けたから、白石さんの表情を伺うことが出来なかった。
白「…っっ殺す気やろ……」
遠ざかっていく新幹線を、白石さんはそんなことを呟いて見送っていた。