愛のカタチ
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*りんside*
扉を開けたその人は、知っている人だった。
白「…姉ちゃんもう帰って来たん?」
「何やねんその言い方!せーっかく買い物早目に切り上げて来たんやで」
去年、バレンタインの日に友香里ちゃんとチョコレートを作っている時にあった…白石さんのお姉さん。
ちゃんと挨拶しなくちゃっ
そう思って向き合った瞬間、お姉さんがあまりにも近くにいたからビクッと身体が飛び跳ねた。
「へ~蔵ノ介、あんた面食いやったんやね」
『?あ、あの、』
白「そんなんちゃうから。ちゅーかりんちゃん困らせんな」
じーっと顔を近付けてくるお姉さんから離れさせるように、私の手を引く白石さん。
「男の嫉妬は醜いでー」と言われて、白石さんの頭に怒りマークが付いた気がした。
「ふーちゃん、昼ご飯は食べたん?」
「まだーお腹ぺっこぺこやねん」
「じゃ、すぐ用意せんとね」
『あ、私もお手伝いします…っ』
お皿を並べていた白石さんのお母さんに気付いて、慌てて駆け寄る。
「ええのよ、りんちゃんは大事なお客様なんやから、座っとって」
『でも、働いてないと落ち着かないので』
「偉いんやねー家でも家事しとるん?」
『えと、はい。お料理やお洗濯が好きで、勝手にしてるだけなんですけど…』
そう言うと、白石さんのお母さんはきょとんと目を丸くさせた。
私、変なこと言ったかな…?
「……くーちゃん、ほんっまにええ子に出会えたんやねぇ」
『!へ、』
白「やから言ったやろ、めっちゃ良い子やって」
『!!』
意気なり良い子なんて言われたから、何て答えたら良いかわからない。
カァアと熱くなっていく頬を隠すように、その場で俯いた。
「ほんまやなぁ。友香里もちょっとは見習い?」
友「むー私だって女子力くらいあるで!」
「嘘やなーあんたはいっつも食べる専門やろ。それやのにまた太ったの何のって「お姉ちゃんは黙っとき…!!」
白石さんのお父さんが溜め息を吐くと、友香里ちゃんが女子力?をアピールするように髪をなびかせた。
慌ててお姉さんの口を塞ぐ友香里ちゃんを見ていたら、何だか可笑しくて笑ってしまった。
白「堪忍な、こんなやかましい家族で」
『い、いえ…!』
申し訳なさそうに謝る白石さんに、慌てて首を横に振る。
『私、本当に嬉しいです』
白「嬉しい?」
『だ、だって、その…』
白石さんが、いつも暮らしてる場所だから。
大好きな白石さんを、産んでくれたお母さんとお父さん。
そっくりなお姉さんに会えたから。
この空間に自分がいることが嬉しくて、嬉しくて。
『何だか、白石さんと一緒に暮らしてるみたいで……嬉しいです』
そう、素直な気持ちを述べたら、自然と表情も和らいでいた。
それを聞いた白石さんは何故か目を見開き、さっきまでかわされていた会話もしん…と止まる。
え、え、と不安になっていると、突然誰かに手を握られ、顔を上げると目に涙を溜めた白石さんのお母さんがいて。
「何て……何て純粋な子…っ」
「親御さんの顔を拝みたいわ……」
『あ、あの、』
震え出した白石さんのお母さんを心配していると、お父さんまでもが涙ぐんでいて。
助けを求めるように隣を見上げて、白石さんが赤い顔を背けているから更に混乱してしまう。
「ほんまに…こない息子の何処がええん?」
『え!?』
いつの間にか立ち上がっていた白石さんのお父さんに、突然そんなことを聞かれる。
ど、何処がって…と戸惑っても、皆がその答えを聞きたい空気に包まれていた。
うう…と怖じ気づきそうになるのを、服の裾をぎゅっと握ることで抑える。
『白石さんは…自分じゃ気付けないところを見ててくれて。優しい、素敵な人です』
本当はもっともっとある。
面倒見が良くて、完璧主義。
大人っぽくて、時々子供っぽくて。
『りんちゃん』って呼ぶ声も、目を細めて優しく微笑むとこも。
白石さんの好きなところを言ったら、きっと止まらなくなっちゃうから。
「な、何て良い子なんや!」
『っわわ!』
「こんっっなかわええ子が好いてくれとるんやで!?蔵ノ介、大事にしや!」
瞳を潤ませながら聞いていたお母さんとお父さんに、ガバッと挟まれるように抱き締められた。
白「!ちょ、何しとんねん!りんちゃん離しやっ」
ぐいっと2人を押し退けた白石さんの胸へ、私は倒れるように頭を付けた。
そっと顔を上げると、今までみたことがないくらい必死な白石さんがいて。
友「もーやめてや!皆まとめて恥ずかしいで!」
「それより早よ食べよー」と声を上げた友香理ちゃんを合図に、予めとってくれていたお寿司を食べることになった。
白「ごめんなぁ……疲れたやろ」
一家団欒の昼食に交ぜてもらった後、白石さんの部屋に移動していた。
部屋の真ん中にある、透明のテーブルの前に肩を並べて座る。
白石さんのお母さんが煎れてくれたお茶に口を付けようとしていた私は、首を左右に振った。
『いえっすっごく賑やかで、楽しかったですよ』
白「ほんま?そんなら良かったけど…うちの両親な、小さくて健気なものに弱いねん」
その話を聞きつつ、小さいと言う言葉に内心傷付いた。
最初は見た目に圧倒されていたけど、白石さんのお母さんもお父さんもすごく気さくで、優しい人達だった。
それより、どっと疲れた顔をしている白石さんが心配で…
『あの、白石さん。えと、』
白「ん?」
『私のこと、紹介してくれて…ありがとうございました』
あの楽しい時間は、白石さんが作ってくれたものだから。
『嬉しかったです』と微笑めば、白石さんはふっと優しい顔付きに変わった。
白「そんなん当たり前やろ。りんちゃんはほんま律儀やなぁ」
『ほ、本当に嬉しかったんです…!』
白「ははっうん」
「わかった」と頭を撫でられる。
カーッと赤くなっていく顔を隠したくても、白石さんの顔を見たら硬直したように動けなくなってしまった。
当たり前のように白石さんの部屋に入れてもらっているけれど、2人きりだったんだ。(←今更)
その事実を実感したら、ドキドキと胸の鼓動が高鳴り出した。
『お、お母さんとお父さん、すごく仲良いですねっ』
白「そーか?まぁしょっちゅう2人で出掛けとるか…今日もこれから行くらしいし」
『へ!?今日もですか?』
もしかして、私が無理矢理追い出して…?
そんな私の不安を察したのか、白石さんは「ちゃうって」と苦笑した。
白「元からイブのディナー付きホテルゆうとこ予約してたみたいなんやけど、りんちゃん来る言うたら、どうしても見たい煩くてな…」
そのことを聞いても、やっぱり私の為に予定を変えてくれたんだと申し訳なくなった。
しゅんと俯いていると、また頭を撫でられる感触がした。
白「りんちゃんが言うてくれたこと、全部嬉しかったで?」
ゆっくり頭を上げると、白石さんの瞳に私が映っていて。
白「ちょっと自惚れてしもうたわ」
照れたように笑う白石さんに、胸の奥がきゅっと苦しくなる。
自惚れて、いいのに。
白石さんを見つめていたら、少しだけ空いた距離がもどかしくなってしまった。
『(…ど、どうしよう…)』
白石さんに、触りたい。
手を握るのも抱き締めてくれるのも、いつも白石さんからだったから、こんな風に感じたことはなかった。
空いている大きな手に、自然と目がいってしまう。
白「りんちゃん?」
もしその手に触って、振り払われちゃったら…?
ぎゅっと目を瞑りながら、恐る恐る手を伸ばした。