愛のカタチ
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「友香里、」
雪が積もった道に足を突っ込みながら歩いていた幼馴染みを見掛けて、名前を呼んだ。
友香里は聞き覚えある声にゆっくり振り返ると…慌てて足を抜いた。
友「な、何や翔太かい…!」
翔「1人で遊んでて楽しいん?」
友「見てたん!?」
ニヤニヤとした笑みを浮かべる翔太を、友香里はキッと睨み付ける。
謙也の弟と白石の妹。兄同士の仲は良いが、弟妹同士は顔を合わせれば喧嘩ばかりの関係だった。
翔「お前、補習の時寝てたやろ」
友「な!寝てへんし…!翔太やってでっかいイビキかいてたやん」
翔「はー?気のせいやろ、俺は友香里と違って真面目やねんから」
「よう言うわ!」いつもの如く喧嘩腰に返してしまうと、友香里は内心ハァと溜め息を吐いた。
折角同じ教室で補習を受けていたというのに、「明日何処か行かへん?」と最後まで誘うことが出来なかった。
素直に、素直にと思えば思うほど、何故か空回りしてしまう自分を呪いたいくらいだ。
俯きながら歩いていた友香里は、「あれ蔵兄やないか?」と翔太の声に顔を上げた。
友「(……め、めっちゃイチャイチャしとる!!)」
駅前にいるのは間違いなく自分の兄で、白いダッフルコートを着ているのは恐らくりんだろう。
周囲から見てもあからさまに(バ)カップルだとわかる馴れ合いをしていた。
暫くすると仲良く手を繋いで歩き出した2人…ではなく、友香里は遠くの山を見つめた。
翔「蔵兄!」
白「あれ?翔太くん…と友香里?」
『友香里ちゃん!』
友「(翔太のアホー!)」
白石目掛けて走っていった翔太に、心の底から叫ぶ友香里。
りんは友香里に気付くと、繋いでいた手を離した。
友「りんちゃん久し振りやな!」
『うんっ』
ぱあっと嬉しそうに微笑んだりんに友香里も嬉しくなるが、同時に恐怖に襲われた。
白石はりんとの時間を邪魔されると、物凄い不機嫌になるのだ。
ギギ…と音が鳴るほど重たい首を動かすと、笑いながら翔太の頭を撫でている兄がいて、ほっと安堵した。
白「友香里、ちゃんと補習行ったん?」
友「ちゃんと行ったわ。くーちゃん過保護すぎんねん」
翔「めっちゃ寝とったけどな」
友「なぁ…!「こら、ちゃんと聞かなアカンやろ」
白石に叱られてしまった友香里は、「自分だけかわいこぶって!」と翔太を睨んだ。
幼い頃から良く面倒を見てくれた白石は、翔太の憧れだった。
自分の前と180度キャラを変えている翔太に、友香里は今日もげんなりとする。
翔「あ、りんちゃん…やったっけ」
『は、はいっお久し振りです』
翔「敬語やなくてええって。同い年なんやから」
『はいっ…じゃなくて、えと、うん!』
慌てて答えると、翔太は人懐こい笑顔を向けた。
容姿は勿論、りんが話しやすいようにしてくれる優しいところが、謙也にそっくりだ。
翔「明日誕生日なんやってな、友香里から聞いたで。おめでとう」
『えへへ、ありがとう』
すっかり打ち解けたりんは、翔太との会話を純粋に楽しむ。
白&友「「…………」」
そんな感情とは別の真っ黒なオーラを放った白石兄妹が、2人を見つめていることも知らず…
白石の家が見えてくると、りんは緊張からかギクシャクし出した。
手と足が同時に動いているりんを見て、白石は思わず吹き出してしまう。
白「ふっりんちゃんロボットやないんやから…はははっ」
『!わ、笑うなんて酷いです!』
思いっきり笑われ、むーっと頬を膨らませるりんだが、白石の言う通りロボットのようだった。
緊張するのも当然…今日は初めて、白石の両親と会うのだから。
『私、変な格好じゃないですか?髪も、顔…は生まれつきだから、』
どうしようどうしようと今更ながら確認し出すりん。
好きな人の両親に会うのだから、少しでも良く見られたい。
そんなりんを、白石は優しい眼差しで見つめた。
白「大丈夫やで。服も髪も顔も世界一かわええから(いつも通りのりんちゃんでええよ)」
友「くーちゃん…本音と建前が逆になっとるで」
キラキラなオーラをまといながらとんでもないことを言い出した兄に、唖然とする友香里。
兎に角家の中に入ろうと、2人を強引に押し入れたのだった。
友「たっだいまー!オカン、くーちゃんとりんちゃん来たでー!」
友香里が叫んだ途端、身体をピシッと硬直させるりん。
パタパタと足音が近付いてくると、白石の後ろに隠れていたりんは反射的に前に出た。
「くーちゃん、おかえりなさい」
白「ただいま。オカン、りんちゃん連れて来たで」
『はじ、初めまして…!越前りんです!』
「あらあら、くーちゃんから聞いとるわ~初めまして、蔵ノ介の母です」
深々と頭を下げるりんに、にっこり笑って同じように頭を下げてくれる。
その柔らかな笑顔を見た瞬間、緊張の糸が緩んだ気がした。
『(白石さんにそっくり…)』
目元も、口元も、輪郭も、一目で親子だとわかる容姿をしていた。
瓜二つの顔を思わずぼおっと見つめていたりんを、白石の母親は「寒かったやろ?さ、上がってや」と快く招き入れた。
『お邪魔します…!』と丁寧に靴を揃えてから、白石の後に続くりん。
「お、来たか」
白「何やオトン、眼鏡しとるなんて珍しい」
「噂の可愛い彼女をちゃんと見るためや」
友「もうめっちゃくちゃかわええで!」
『(可愛い?)あの、初めましてっ越前りんと申します』
リビングに通され、ソファーで新聞を読んでいた白石父にりんは流れるように挨拶した。
ゆっくり面を上げた父親…ではなく、何故かりんの方が目を丸くさせた。
その様子にいち早く気付いた白石は、小さく笑う。
白「ああー時代劇に出てた俳優に似てるやろ?よう間違えられんねん」
「ははっもうそない若くないけどな」
父、南次郎の影響で見ていた時代劇に出てくる人物に、白石の父親は良く似ていた。
目が細く、鼻が高く、顎鬚があるところもそっくりだ。
『(……女優さんと俳優さんみたい)』
まるでそこだけが異次元のように見えて、りんは目がチカチカとしてきた。
その存在感に圧倒されていると、バンッと扉が勢い良く開いた。
「何や~もう来ちゃったん??」