愛のカタチ
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何処を歩いてもイルミネーションが輝き、周囲からは賑やかな音楽が聞こえる。
町はすっかりクリスマスの雰囲気に包まれていた。
サンタの服を着てケーキを販売している店員の前を、3人の少女達が通り過ぎていく。
朋「美味しそ~」
桜「クリスマスって感じだね」
雪「ね~」
朋香、桜乃、雪の3人は、楽し気にきゃっきゃと騒げるほど仲良くなっていた。
前を歩いていたカップルの肩がドンッと当たり、「あ、すいませ~ん」と謝られた雪。
途端わなわなと震え出した彼女を、「雪ちゃん?」と桜乃が心配した。
雪「クリスマスは…クリスマスは……カップルで過ごす決まりなんてないでしょ?」
桜「え?う、うん」
雪「イエス・キリストの御生誕を祝う日なのよ!」
朋「そ、そうよねっ」
雪「大体日本は可笑しいのよ、カップルの日じゃないのに!!」
ブツブツと語り始める口調はだんだんと熱くなっていく。
すっかり人々の注目になっている雪を、桜乃と朋香が宥めた。
朋「でも雪ちゃん、今日は23日でしょ。明日までに一緒に過ごしてくれる男の子、見付ければ良いのよ!」
桜「あ、明日って朋ちゃん…」
雪「た、確かに…まだ時間はあったわ!」
桜「(えええ!)」
前向き過ぎる友人達を見ていたら、桜乃は何が常識なのかわからなくなっていった。
朋「桜乃も!他人事じゃないのよ?」
桜「え!?」
「明日、リョーマ様にプレゼント渡すんだから!」と朋香に言われ、呆然としていた桜乃の顔は赤みを増していく。
そう、明日…クリスマスイブはリョーマの誕生日。
今日はりんのプレゼントも合わせ、それを買うのが目的だった。
桜乃にとってはプレゼントを選ぶことより、「リョーマ様のご自宅突撃訪問」と朋香が提案したことの方が、ずっと難解であった。
朋「あーあ、今日りんちゃんも来れたら良かったのに」
明日を思って緊張していた桜乃は、あっけらかんとしている朋香を心から尊敬した。
桜「でも朋ちゃん、そしたらサプライズプレゼントじゃなくなっちゃうよ」
朋「それもそうかー。りんちゃん明日の夜には帰ってきてるんだっけ?」
雪「明日の朝には東京に帰って来るって言ってたよ」
桜&朋「「そうなの?」」
りんは今日、白石に会いに大阪に行ったと聞いている。
てっきりイブも一緒に過ごすと思い込んでいた2人は驚いた。
雪「私もせ~っかくお泊りするんだから、イブは一緒に過ごしたら?って何度も言ったんだけど。そしたらりんが…」
『でも、イブは小さい頃から家族で過ごしてたし、それに…お兄ちゃんの誕生日だから』
『お兄ちゃんにケーキ焼くんだぁ』と花を飛ばして笑ったりんに、チョップをかましたのはつい最近のこと。
去年はそのお兄ちゃんがアメリカに行っていて、別々に誕生日を過ごしたことは雪も知っている。が、
雪「(白石さんだって絶対いい気しないわよ…)」
今頃は新幹線の中だろうか、それとももう着いた頃か。
どちらにせよ、親友のブラコンぶりに雪はハァ~と溜め息を吐くのを我慢出来なかった。
『は…くしゅんっ』
東京から大阪行きの新幹線の中で、小さなくしゃみをする少女が1人。
白いダッフルコートに付いていた雪は、もう溶けてしまったみたいだ。
『(…白石さん、怒ってるかな)』
パラパラと落ちる雪は降りしきり、一面が銀世界となっていた。
その景色を窓の外から眺めながら、りんは先日、友人に叱られたことを思い出した。
クリスマスは家族と過ごす…そう言ったら、雪に何度も頭をチョップされたのだ。
恋人がいるのに可笑しいと呆れられてしまった。
けれど、りんにとって大切な大切な双子の兄。
リョーマは興味がないように言っているが、毎年その日を空けてくれていることが何より嬉しかった。
『(いいよって言ってくれたけど、)』
電話でそのことを伝えた時、りんちゃんに会えるなら構わないと白石は笑った。
夏に来た時は紅葉の家に泊まる予定だったが、色々あって白石の部屋に泊まった。
けれど、今回は初めから白石の家にお泊りすることになっていたのだ。
『(そうだ、お、お泊りするんだった…っ)』
四天宝寺の皆と旅行に行ってから1カ月は経っているもの、りんはあの事件?を忘れられずにいた。
夜は決まってその日のことを思い出してしまい、眠れぬ日々が続いて。(何度もリョーマの布団に潜り込んだ)
『……何処で眠るのかな』
声に出していたことに気付かぬまま、りんの顔は熱を帯びていく。
1人で慌てるりんに、前に座るご老人が「食べるかい?」とミカンを差し出したのだった。
大阪も東京と同じくらい雪が降っていて、到着したりんはハー…と自身の手を温めた。
迎えに行くと綴られたメールを読んで、〈寒いから何処かお店に入っててください〉と返信したのは大分前のこと。
白石に着いたことを知らせようと携帯を開く前に、見付けてしまった。
駅の前で待っている…その姿を。
『…っ』
りんは駆け足で近付いていくと、壁に背を向けていた白石とすぐに目があった。
ぱっと嬉しそうに微笑んだ顔を見たら、胸がいっぱいになったような気がして。
『白石さん…っ寒いから中に入ってて良かったんですよ?』
白「堪忍な。りんちゃんが来る思うたら、いてもたってもおれんくて」
「落ち着かへんねん」と白石が困ったように笑うと、りんの顔はカァッと赤くなった。
白「?りんちゃん、顔赤いで」
『な、何だか暑くて…!///』
ぶんぶん首を振るい、慌てて熱を冷まそうとしていると、白石の手がりんの頬を包んだ。
それをされたことで更に顔が赤くなっていくが、「冷たいやろ?」とわざとなのかそうじゃないのか。
りんの肌は元が雪のように白いので、顔が赤いとすぐにバレてしまうのだ。
『(良かった…怒ってなくて)』
いつもの白石さんだと、触れている手が優しくて安心出来た。
本当に怒ってないかなと、確認の為にじっと見つめてしまう。
何故か白石の顔も赤くなっていくことにりんが首を傾げた時、ぎゅうっと真っ正面から抱き締められた。
『わ!し、白石さ…っ///』
白「あ、(アカン…つい)」
白石も無意識だったらしく、赤い顔をしたりんが腕の中にいることに驚いている。
りんはドキドキと高鳴る胸を静めることに精一杯だったが、次第に、彼の体温が低いことに気付いた。
『白石さん、もしかして冷えちゃったんじゃ…手も冷たかったですし』
白「こんくらい大丈夫や。室内入れば温まるやろうから」
『(私が、待たせちゃったからだ…っ)』
りんはどうしたらと考えた結果、自分の体温が高いことを思い出し、咄嗟にぎゅぅうと白石に抱き付いた。
距離を縮めてしまえば顔が見られないことは学んでいる。
白「………………あの、りんさん?」
『カ、カイロ、です』
白「そうか……ありがとう」
りんはくっついていたので、白石が自分に負けないくらい顔を赤くしていることに気付けなかった。