travel!! 後編
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観光客で賑わっている中、心ここにあらず…といった様子のユウジは、店先で饅頭を頬張っていた。
謙「あれ、ユウジやないか」
財「どないしたんです?」
ひょっこり現れたチームメイトをユウジは睨み付けるなり、財前の持っていた饅頭を横取りした。
制止の声も空しく、ガツガツと口に運んでいく。
ユ「見たらわかるやろ!小春においてかれたんや!!」
財「ちょ、先輩っ俺のなんスけど」
謙「ユウジ落ち着き!?」
気付いたら何処かに行ってしまった小春と紅葉。
相方が黙って消えたことが、ユウジに多大なるダメージを与えていたのだ。
ぐぐぐ…と財前は遠慮なく頭を鷲掴みしているが、仮にも先輩である。
ユウジが離れたのは、買ったばかりのものが既に食べられてしまった後だった。
財前が黒いオーラを放つ前に、「ざ、財前!」と謙也が慌ててフォローに入る。
謙「ほらほら、あっちでも試食配っとるで!」
財「…………っス」
珍しくも素直に頷いた後輩に、謙也はほっとする。
だがその方向には、予期せぬ光景が広がっていた。
「ほら嬢ちゃん。これもお食べ」
「こっちのも美味しいよ~」
「どうだい、もう1つ」
『あ、ありがとうございますっ』
試食用の饅頭を次々に違う店から貰っているりん。
両手に収まりきれない分を食べていたせいで、頬がリスのように膨らんでいた。
謙&財「「((ご年配にモテとる…!))」」
謙也が呆気にとられている間に、財前は溜め息を吐きながらもりんに近付いていく。
『はいへいはん…っ(財前さん)』
財「何しとる「あらお兄さんイケメン!!」
小動物化したりんから視線をシフトさせた財前は、顔を近付けてきた女性にギョッとした。
気付くと、店のおばちゃん達に囲まれていた。
「イケメンのお兄さんにはオマケしとくよっ」
「嬢ちゃんの彼氏、かっこいいねぇ」
『!ひ、ひがいまふ…!///(ちがいます)』
頬がぱんぱんなりんと違ってちゃんと話せる彼に助けを求めるが、財前は何故か黙っている。
ほれほれと進められ続けて、2人は試食の波に溺れていった。
『し、死んじゃうかと思いました……』
財「大阪のおばちゃんみたいやった……」
その後、謙也に救出された2人は土産屋のベンチにいた。
過保護な謙也は2人がまた襲撃に合わないよう、「すぐ買うてくる!」とハイスピードで土産を買いに行った。
抹茶や黒糖、りんは色んな種類の饅頭を食べていると、隣に座る財前に見られていた。
『?あの、』
財「自分、ここに来て太ったんとちゃう?」
『ふぇ!?』
慌てて食べる手を止めるりん。
更には「特に顔が」と衝撃的な事実を告げられ、ペタペタと顔を触って確認する。
『(き、昨日からずっと食べてたからだ…っ)』
行きの車の中でもお菓子を頬張っていたし、夕食も美味しいからとたくさん食べていた気がする。
りんはぐるぐると記憶を辿り、『これ、財前さんにあげます…』とおばちゃん達に貰ったものを譲ることにした。
財「そっちのも貰ってやってもええけど」
言われた通りに渡すりんは、財前がニヤリと笑っていたことを知らない。
ユ「見てみぃ、財前がまたりんで遊んどるで」
謙「なんやかんや言うて、仲ええよなぁ」
やる気を出すことが滅多にない財前が、りんと話す時だけは生き生きとしている。
謙也は孫を見るような目で見ていると、「あ、紅葉やん」とユウジが同じ方を見ながら言った。
紅葉は突然2人の前に現れたと思ったら、(自称)スピードスターも目を疑う速さで、りんを連れ去ってしまった。
謙&ユ「「…………」」
残された財前が気になり、店の中からじっと観察していると…
謙「あ、」
ユ「こっち来たで」
静かに歩いて来た財前は、謙也の前でピタリと足を止めた。
その顔を伺いながら、謙也はぽんっと黒髪に手を乗せる。
財「………」
謙「帰りも一緒なんやから、な?」
いつもより下にある気がする頭をゆっくりと撫でると、「うっさいっスわ」とすぐに振り払われてしまった。
「いっつも苛めとるからやろ」と笑ったユウジが八つ当たりの対象となったのは、言うまでもない。
『あの、ここは…?』
斯くしてりんが連れて行かれた場所は、貸し切りの露天温泉だった。
ぽかんとしながらそこを見上げるりんに、紅葉は説明を始めた。
紅「ここ、1時間の予約制なんやけど、今日は人が少ないらしくてな、今から入れるみたいなんや」
『?そうなんですか』
ほーと聞いていたりんは、まだ会話の趣旨を掴めずに?マークを浮かべたまま。
「そろそろ来るやろ」と腕時計を確認する紅葉の後ろから、パタパタと足音が近付いてきた。
小「はーい蔵リン到着~☆」
白「ちょ、何やねん小春…っ」
『!!』
小春に背中を押されながらやって来た白石に、 りんの身体がビクンと跳ねた。
確かに目が合ったのに、白石は顔を背けるようにして小春の方を向いてしまう。
小「嫌やわ蔵リン、そんな睨まんといてぇな」
白「理由もなしに連行されたんやで?」
白石の溜め息を聞いて、りんの胸がズキンと痛んだ。
思い違いかもしれない。
だけど、自分に溜め息を吐かれたような気がした。
泣かないようにと必死で唇を噛み締めると、自然と顔も下に向く。
そんなりんに気付いているが、いつものように頭を撫でることを躊躇っている白石。
そんな2人を最初は穏やかに見守っていた紅葉と小春も、遂にビキッと怒りマークを付けた。
紅「さっさと入らんかいバカップル…?」
白「『……………はい』」
ゴゴゴゴ…と何かが降臨するのが見えて、 2人は大人しく頷くしかなかった。