ひとりじめ
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*りんside*
体が勝手に動いて、こんなことしてしまったけれど。
白石さんとこんなにくっついて、しかも自分から……
恥ずかしいと1回感じてしまえば最高に恥ずかしくなってしまって、何て言えば良いかわからなくなる。
白「…りんちゃーん、早よせんと振り向いてまうで?」
『え、だだ駄目です…っ』
白石さんの顔を見て直接話すなんて、絶対、絶対出来ない…!(※2人は付き合ってます)
緊張からか、お腹に回した腕にギュッと力を入れていた。
『…あの人達、白石さんのこと……す、好きだと思います』
白「……そやな」
だから、私に対してあんな風に接してきたんだと思う。
あの人達は皆、同じように白石さんのことが大好きなんだ。
『……ズルいです』
廊下を歩く度に、たくさんの女の子に話し掛けられて。
ニコニコ笑って。
『あ、あんなにかっこ良く笑ったら、皆きっと期待しちゃうから……だから、ズルい…』
嫌だった、
白石さんと同じ学校に通ってるみたいで、すごく嬉しかったはずなのに。
また、あの顔で誰かに微笑む度、胸がチクリと痛くなって。
『紅葉さんにも、同じように思っちゃって…こんなの、やだ、』
白「…………」
『私、可笑しいです。紅葉さんのこと、大好きなのに…っ』
ポカポカと、吐き出す本音と共に白石さんの背中を叩いてしまう。
それでも何も言わず、最後まで聞いてくれようとする白石さんは、私よりずっと大人だ。
次第に叩くのを止めて、背中に両手を当てる。
『勝手だけど、私…本当は』
白「…うん」
途切れ途切れでしか話せなくて、まるで小さな子供のよう。
こんなことを言ったら、きっと。
困らせてしまうだろうな。
『白石さんのこと……ひとりじめ、したいの…っ』
ギュッと目を閉じて叫んでしまってから、ゆっくりと開けてみる。
その瞬間、くるっと白石さんが振り向いた。
『!だ、駄目って…(言ったのに!)』
カァァァと顔にどんどん熱が集まっていって。
どうしたら良いかわからなくなって…私はだっと逃げ出した。
後ろから白石さんの声が追い掛けてくるけど、それに気を取られず全力疾走。
『(…も、もうやっ)』
自分の不甲斐なさが嫌で堪らない。
走りに走った私は、テニス部の部室の前まで来ていた。
聞こえる足音が大きくなってきて、どうしようと迷った挙げ句ロッカーの中に身を隠した。
『(あんなこと、言うつもりなかったのに…)』
白石さんを好きになって、両想いだと知って。
それだけで充分幸せなのに、その上ひとりじめしたいだなんて…自分がわからない。
白「…こら、走るの速すぎや」
『!!』
ふと足音が止んだと思ったら、変わりに聞こえるのはハァと息を調える白石さんの声。
白「そこにいるんやろ?りんちゃん」
『い、いないです』
白「…やってそこ、俺のロッカーやもん」
『…!』
ま、まさか…と慌て出すと、「ほんまに俺んこと好きなんやな」とからかうように笑われる。
もう…言い返す言葉が見付からない……
白「ズルいのはどっちやっちゅーねん…」
『はゎわっ』
ロッカーの扉に手を付いていた為、意気なり開けられて前に倒れてしまった。
目の前には白石さんがいて、受け止めてくれたと同時にギュッと抱きしめられる。
白「言い逃げってゆーんやで?それ、」
トクントクンと聞こえる胸の鼓動は、確かに白石さんのもので。
私だけじゃ…ないんだ。
で、でも…っ
ギュウウと余りにも強く抱きしめられるから、私の心臓はバクバクとうるさい。
白「…っまにりんちゃんは、」
『…うう』
白「ひとりじめしたいんは、俺かて同じや」
う、嘘だ…もしくは夢だ。
それでも、白石さんから伝わる体温が温かくて、夢ではないと思い知らされる。
白「笑った顔も怒った顔も、拗ねた顔も照れた顔も。あとはー…泣き顔も寝顔も。今みたいなかわええ行動も全部。
俺だけに見せて欲しいって…思ってまうんや」
その言葉に、目を見開いてしまった。
だってそれじゃ、
『…同じ……』
白「え?」
私と一緒だから。
『で、でも…私の方が欲張りです。だって、もっと白石さんを知って、もっともっと大好きになりたいから、私だけの、白石さんが良いから』
貪欲って言われても仕方がない。
こんなこと言って、白石さんにフラれちゃったらどうしよう…
そう不安に思ったのに、回されていた腕に強く力が込められてびっくりしてしまった。
『(し、心臓が…!)』
さっきよりも体が密着して、バクバクの心臓が破裂しそうになる。
『し、白石さ…っ苦しいです』
それでも力が弱まることはなくて、このままじゃ呼吸も上手く出来ないのに。
顔が真っ赤になるのを感じていると、「…やって」と小さく聞こえた。
白「やって……めっちゃ嬉しいんやもん……」
聞こえた声は、気のせいかもしれないけど泣きそうで。
何でなのかな。
こんなに自分勝手で、甘えたことを言って。
それでも、それでも白石さんは……
一定のリズムを奏でる自分のじゃない鼓動も、感じる体温も。全てが愛おしいと思ったから。
私も負けないように、回した腕に精一杯力を込めた。
『…し、白石さん』
白「ん?」
『もうそろそろ行かないと…///』
あれから飽きる程抱きしめ合って、現在もテニス部の部室の中。
真ん中にあった大きな机に白石さんが座り、その膝の間に私がいた。
数分前のことは忘れてしまったのかと思うくらい、後ろからギュウギュウ抱きしめられる。
白「んー…まだあとちょっと、」
『さ、さっきからずっとそう言ってますよっ』
白「りんちゃんええ香りする」
『(聞いてない…!)』
首もとに白石さんの気配を感じて、ドキンと飛び上がってしまう。
白「甘いのと……動物的な…」
『……多分、カルピンの匂いです。絶対そうです。来る時遊んでたから、』
ね、猫の匂いがする女の子って…私のバカバカ!
でもカルピンと遊ぶの好きだし、どうしたら良いのかな、
『香水の香りじゃなくて、ごめんなさい…(次から気を付けますっ)』
白「何で?俺猫好きやし、りんちゃんの香りも、好き」
さらっと言ってのける白石さんと、顔を真っ赤にする私。
やっぱりズルいのは…白石さんだと思うな。
私も言わなきゃと、白石さんに体を預けて、顔が見えないように白石さんの制服に顔を埋めた。
『……好き………』
本当は…大が何個も付くくらい好きなんだろうけど、今はこれを伝えるだけで精一杯だから。
ギュッとブレザーを掴みながら、顔を上げて白石さんを見てみると。
その顔は赤かった。
白「…っ甘えて欲しいなんて、言うんやなかった」
『?』
首を傾げる私をチラリと見て、少しだけ強引にまた白石さんの腕の中におさめられる。
その時、ふわっと優しい香りが鼻を掠めて。
白石さんの香り…私も好き。
白「決めた、今日はずーっとこうしとる」
『ふぇ!?で、でも白石さんライブが…』
慌てて密着する体を離そうとした時、バンッと勢い良く部室の戸が開いた。
友「りんちゃぁああああん!!」
『ゆ、友香里ちゃん…!』
びっくりして白石さんを突き飛ばしてしまい、机から下りるとすぐに友香里ちゃんに抱きしめられた。
友「もう心配したんやで!あいつら、りんちゃんが可愛すぎてひがんでるだけやわ」
友香里ちゃんの様子に、本当に心配してくれてたんだ…と申し訳なくも、嬉しいと感じた。
小「千歳に聞いたでぇ、りんちゃん苛めるなんて許さへんわ!」
ユ「多分、白石のファンクラブの奴等やな」
次々と姿を見せる皆さん。
ファンクラブあるんだ…と、わかってたことなのに、改めて言われると落ち込んでしまう。
小「安心し、仇は光ちゃんが取ってくれたから」
『え?』
ユ「ファンクラブの知らされたない内容をネット上で公開したらしいわ。あいつら二度と、テニス部には近付けへんな」
まさかそこまで大袈裟になってると思わなくて、その事実にポカンとしてしまう。
ふと、部室の外に財前さんと謙也さんの声がして、私は気付いたら駆け寄っていた。
『あの、財前さんっ』
謙「おお、りんちゃん」
私の様子を見てから、財前さんは小春さんとユウジさんを睨み付けていた。
『…ありがとう、ございました』
財「……別に、大したことしてへんし」
財前さんはすぐに顔を逸らしてしまったけれど、ちゃんとお礼が言えた。
嬉しくて口元が緩んでいたら、「にやついてキモい」と容赦なく頭を叩かれた。
金「謙也ー白石が怖いで~」
謙「はぁ…しょうがあらへんな」
部室から出てくるなり、金ちゃんは泣きそうになりながら謙也さんの腰に抱き付く。
そうだ…白石さん!とあのまま放っておいてしまったことを思い出した。
皆で部室に入ると…白石さんは後ろ向きで胡座をかいていた。
財&ユ「「((子供か…))」」
謙「ほら白石、そろそろ後夜祭のライブ、出番やで!」
白「…そやったな」
謙「………りんちゃんにかっこええとこ見せたれ!な、」
バンドのメンバーの、ユウジさんや財前さん、謙也さんと共に渋々と動き出した白石さん。
『…わ、私、皆さんのバンド楽しみにしてますねっ』
ユ「おー」
謙「おおきに」
ニッと笑う謙也さんの隣で、何も言わないけど財前さんも片手を上げてくれた。
そんな中、白石さんは振り向いてもくれなくて…
『…っ白石さん、』
白「………」
お、怒ってるよね……
ズキンと痛む胸を感じながら、白石さんに小走りで近寄る。
小さな声が聞こえるようにするには、背伸びをするしかない。
『…ラ、ライブが終わったら、』
さっきみたいに、一緒にいてくれますか?
ギュッてされるのは恥ずかしいけど、でも、嫌いじゃないから…
駄目かな…と不安気に見上げると、白石さんは目を丸くして。
いつもよりも優しく、甘くふんわり微笑んだ。
白「…喜んで」
その笑顔1つで、私の心は幸せで満たされる。
だから今度こそ…自分から好きだって言うんだ。
『…や、約束?』
白「せやな、約束」
いつか幼い頃したみたいに、お互いの小指をそっと絡めて。
あの時から始まっていた恋は、もうこんなにも大きく膨れ上がっていた。