ひとりじめ
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『あの、用って…?』
体育館の裏に連れて来られたりんは、何故こんな場所に自分を…?と不思議で堪らない。
女子達を尋ねるように見ると、しおらしい態度が一変した。
「本当に分からへんの?」
『え?』
何をだろう、とキョトンと目を丸くするりんの様子に腹を立てたのか、一斉に身を乗り出す。
が、その集団を掻き分けるようにして1人の女子が先頭に立った。
「単刀直入に聞くけど、自分…白石くんと付き合うてるってほんま?」
背が高く胸も大きいその女子は、まるでそれを協調するように、胸の下で腕を組み尋ねる。
『!はい…つ、つ付き合ってます///』
自分で言うのは慣れないから、恥ずかしい。
頬を赤らめるりんに、女子は「…そう」と呟き頷いた。
「別れてくれへんかな?」
『………へ、』
唐突な言葉に耳を疑った。
白「あれ、りんちゃん?」
ジュースを両手に戻って来た白石は、そこにりんの姿がなく首を捻る。
視線を巡らせていた時…突然、ザバァと噴水から何かが出てきた。
銀「白石はん」
白「!!!?」
本気でびっくりした白石は、手に持っていたジュースを落としそうになった。
白「…~っ銀か、びっくりさせんといてや」
銀「……すまん」
上半身裸+ずぶ濡れな状態で謝られても、相当可笑しな光景だ。
彼が今までしていたことが白石に通じていたのが、せめてもの救いだろう。
「早よ着替えな風邪引くで」と白石が持ち前のオカン気質を発揮していると、銀が重たい口を開けた。
銀「さっき、りんはんが…」
白「え?」
『な、何でそんなこと…っ』
「ウザいんよ、白石くんずっと彼女おらへんかったのに」
「それが意気なり、納得出来るわけあらへんやん」
今まで黙っていた女子も、口々に言葉を発し始める。
見ず知らずの人達にそんなことを言われて、りんは自然と拳を握り締めていた。
「お似合いやと思うてんの?」
優しくて、格好良くて。
何でも出来る…自分には勿体ないくらいの彼氏。
『………思ってないです』
お似合いなんて思ったこと一度もない。
それでも、自信を持って言えることがある。
『白石さんが、好きだから。たくさん、好きだから……』
彼が向けてくれる愛情より、もっと応えたい、与えたい。
『その気持ちは、誰にも負けない』
真っ直ぐな瞳を向けるりんに、その場は一瞬言葉を失う。
だが次の瞬間、先頭にいた女子に強く肩を押され、壁に打ち付けられてしまった。
『…っ』
「生意気言わへんでくれる?どーせ白石くんにやって全部受け身なんやろ!」
叫んだその女子は、勢い良く手を振りかざす。
殴られる、と悟ったりんは強く歯を食い縛った。
…だが痛みはなく、そっと瞼を上げてみるとそこには。
『、千歳さん…っ』
千歳が女子の背後から腕を掴んでいた。
千「俺の大事な友達に、何してると?」
「ち、千歳くん、ちゃうねん、うちらはただ注意を…ねぇ?」
「せ、せや!」
慌てて言葉を探し、皆に同意を求める。
千歳はニッコリと笑いつつも、腕を強く掴んで離さない。
千「…じゃ、俺からも注意せんと」
「い、痛い…っ」
千「次りんちゃんに何かしたら、俺達皆が許さんばい」
覚えときなっせと言う瞳は強く、先程の微笑みが嘘のようだった。
女子はみるみる内に怯えた表情に変わり、集団を連れて慌てて去ろうとするが…
「ひ!?」
ドーンと効果音がする勢いで、そこに立っていたウサギの着ぐるみ。
「な、何?」と混乱する女子達の頭を、思いっきりチョップし出した。
「な、何なんこのウサギ!いった「何しとるん?」」
その声にドキリとして、りんも振り返った。
「し、白石くん……」
白「何しとるか聞いとんのやけど」
ゆっくりと近付く白石に、集団も後退りするように1歩下がる。
近くまで来た白石は女子の髪にそっと触れた。
その動作に一瞬頬を赤らめるが、
白「俺の彼女に何したのか、答えや?」
「っう、うち……」
白「なぁ、早よ」
その表情があまりにも怒りで満ちていたので、女子はその場に膝を付いてしまった。
白「またりんちゃんに同じことしてみ?俺、」
「何するかわからへんで」
そう低い声で言えば、泣きそうに顔を歪める。
集団は慌てて去っていった。
りんは力が抜けたように、その場にペタンと座り込んでしまった。
それに気付いた白石が駆け寄ろうとするが、先に手を差し出したのはウサギの着ぐるみだった。
『…あ、ありがとうございます』
りんは立ち上がり頭を下げると、ウサギはコクンと頷いた。
そのまま背中を向けて歩き出したが、千歳にスポッと頭の部分を取られてしまった。
千「やっぱオサムちゃんばい」
渡「はっはーバレてもうた」
『せ、先生!?』
その正体はテニス部顧問のオサム。
本当はウサギのまま、格好良く去るつもりでいたのに。(←下半身だけウサギ)
驚いて瞬きを繰り返すりんを見ながら、オサムは困ったように頭を掻いた。
千「虐待とか言われなきゃよかね」
渡「ん~その時はその時やな」
『あ、あのっ』
頭を、あやすようにウサギの手の部分で撫でられ、りんはお礼を言うつもりが泣きそうになってしまって。
『(な、泣いちゃ駄目。迷惑だよっ)』
涙を堪えて複雑な表情になるりんに対し、オサムも困ったような笑みを浮かべる。
白「…千歳、ありがとうな。りんちゃん守ってくれて」
千「そぎゃん大したことしてなか。たまたま近くで寝てたけん、やから」
白「先生もおおきに」
渡「お?今は皆の愛すべきウサギさんやで」
りんのことも後は白石に任せた方が良いと、オサムに続き千歳も立ち去ろうとする。
もう一度頭を下げて、りんは2人の背中を見送った。
白「ごめんな、俺が早よ気付いてたら…怖い思いさせてもうたな」
『い、いえっ白石さんは何も…私の不注意ですからっ』
『来てくれてありがとうございました』と頭を下げるりんに、白石は優しく微笑む。
手を伸ばしてきたが、今触れられてしまえば確実に泣いてしまうだろうと思ったので、白石から少し距離を取ってしまう。
そんなりんの些細な行動に…一瞬だけ、傷付いたような顔を白石は見せた。
白「…ジュース置いてきてしもたわ。待っててな、今取ってくるから」
『あ…っ』
背中を向けた白石に向かって手を伸ばすが、それは触れることなく宙を掴んだだけ。
りんちゃんは、もっと甘えてええと思うで?
俯きそうだった顔を上げて、小走りで近付いたりんは…その背中に抱き付いた。
白「っりんちゃ『ふ、振り向かないで…っ』
驚いて振り向こうとする白石に、りんは更に強く抱き付く。
『…このままで、聞いてくれますか…?』
最後の方は小さな声になってしまったが、白石にはちゃんと届いていた。
白「…ええよ、聞かせて」
その言葉に安心して、りんはコクンと頷いた。