ひとりじめ
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*白石side*
まさか、ここまで本気やなんて思うてなかった。
白「……これで接客するん?」
無理やろ、無理ありすぎやろ!
女装喫茶はテニス部の定番化しとるし、まぁ百歩譲って良しとしたんやけど…今年は小春の気迫が半端なく。
ユウジお手製のメイド服を着て(無理矢理)エクステ?言うやつを付け(無理矢理)メイクもされた俺は、勿論ええ気分な訳がない。
小さい頃、姉ちゃんに良く化粧されて遊ばれとったなぁ…と思い出したくない記憶まで蘇ってきた。
小「当たり前やないのぉ、蔵リンかわええわ~萌え☆」
ユ「浮気かぁ小春!」
小「ユウくんもかわええわよ」
ユ「こ、小春…///」
おっ始めたコントを無視し、俺以上に不機嫌な顔をした男に視線を向けた。
謙也が何とか説得しチラシ作りを手伝わせとるみたいやけど、あからさまに嫌々なんが伝わってくる。
財「…部長も早よ手伝って下さいよ。さっさと終らせたいんで」
"おいでやすご主人様"と書かれた文字の周りを、赤いマーカーでハートに囲む財前。
ギギギ…と強い力が込められ、歪な形になっとるけど。
健「そういや白石、今日りんちゃん来るんやろ?」
白「うん。12時に待ち合わせとる…って、やけに似合うてるな」
メイド服やなく、黒いベストを着てバーテンダーみたいな格好の小石川。
俺もそっちが良かったなと染々思いながら、腕時計を確認した。
テニス部の出し物は一応午前中までやから、それまでには羞恥心この上無い格好にも開放されとるはず。
念の為、待ち合わせ時間を遅らせといて良かったわ。
…りんちゃんにこないな格好、見せられるわけないもんな。
金「う゛ー白石っ髪絡まったわぁ」
高い位置で髪を結んでいた金ちゃんは、無理に取ろうとしたのかゴムが変な絡まり方をしとった。
白「あー金ちゃん、無理に引っ張ったらアカンで」
金「ワイ痛いの嫌や、結びたくあらへん!白石みたいに下ろしてええやんか!」
いきなしスカートを捲り上げる金ちゃんに、「金太郎さんそらアカンよ…!」と小春が慌てて止めに入る。
溜め息を吐きつつ左手の包帯に手を掛けたら、直ぐに金ちゃんは大人しゅうなった。
せやけど俺も、ほんまは金ちゃんみたいに駄々を捏ねたい気分や。
いつでもな、りんちゃんの前では男らしくおりたいて思う。
りんちゃんは優しい子やし考えにくいけど、もしな、もしこの姿を見て……
『私、白石さんはもっとちゃんとした人だと思ってました』
…アレやな、生きていける自信がない。
やから見られた時は、嫌われてもしょうがない思うたのに。
『私、あ、会いたかったから』
『早く早く白石さんに会いたかったから……だから、待てなくて、』
りんちゃんはいつも、予想のずっと先をいってくれるから。
俺は…嬉しなるんや。
『すごい…色んなお店があるんですねっ』
あれから制服に着替え、片付けは任せたと言う皆の言葉に甘えて、りんちゃんと教室を回ることにした。
四天宝寺ならではのユニークな店を見つめながら、キラキラ目を輝かせるりんちゃん。
お祭りもやけど、こうゆう賑やかな場所が好きなんやなぁと自然と口元が綻ぶ。
白「そのカーディガンかわええな。よう似合うてる」
『!あ、ありがとうございます///』
桜色のカーディガンがりんちゃんらしい。
(※何着ても似合うけど)
顔を赤くして嬉しそうに微笑んだりんちゃんは、隣で歩く俺をチラチラと見上げてきた。
『白石さんも、あの、ブレザー似合ってます…っ』
白「そうか?ありがとう」
『白石さん制服だから私も制服にしなきゃって思って、』
白「へ、何で?」
首を傾げると、『な、何でって…』とりんちゃんは更に顔を真っ赤に染める。
ようわからんけど必死に何かを伝えようとしとる姿が可愛くて、じっと見守るように待っとったら、やがてその小さな唇が動いた。
『制服デートみたいで、嬉しいからっ』
そう言って嬉しそうに笑うりんちゃんに見上げられてまえば、俺は、
白「…また、なんちゅーことを……」
『??』
ボソリと呟いた声は聞こえてないのか、未だ頬を染めながらニコニコ微笑んどるし。
俺は俺で赤なった顔を隠すように、片手で半分覆った。
越前くんはすごいわ。
この子と四六時中一緒におったら、心臓がいくつあっても足りへんのに。
込み上げてくるものを何とか落ち着かせ、隣で揺れる小さな手を自身の掌で包む。
それは俺よりずっと温かかった。
白「制服デート、やろ?」
『……!///』
りんちゃんの瞳を真っ直ぐ見て微笑むと、直ぐに逸らされる。
ギュッと強く握ったら更に慌てる姿がおもろい。
白「(…俺ばっかりこうも、悔しいもんな)」
自分の一挙一動が俺を掻き乱しとることに、りんちゃんは気付いてない。
りんちゃんに対しては嫉妬深くて、我が儘で、独占欲が強いことも…
今やって、廊下を擦れ違う度彼女を見つめる男子生徒が少し…どころやない、かなり気に食わない。
「あ、白石くん!後で教室見に行ってもええ?」
「うちらお腹空いちゃって」
白「ははっええよ、まけといたる」
隣のクラスの女の子やな、確か。
チラリと隣を見ると、直ぐに視線が絡み合った。
『白石さん、友達がいっぱいで、羨ましいです』
一瞬、胸が痛なった。
白「そんなことあらへんよ」
アホか、俺。
りんちゃんがヤキモチ妬いてくれへんことが、悲しいなんて。
真っ赤になりながらも、思っとることは伝えてくれるし、一生懸命応えようとしてくれることもちゃんとわかっとる。
好かれとるって自信もある。
せやけど、りんちゃんが俺に甘えてきたり、我が儘を言ったことは一度もない。
苦手なんは知っとるし、りんちゃんはほんまに良い子やから。寧ろ良い子すぎるくらいや。
白「(俺が、子供なんかな…?)」
直ぐに嫉妬してそれを抑え切れへんのは、俺だけなんかな。
りんちゃんは…ちゃうんやろうか。
『……白石さん?』
いつの間にか、繋いだ手を強く握っていた。