赤ずきんと狼王子
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「りんちゃんいた?」
「体育館の方はいないみたい~」
「赤ずきんってあの超可愛い子だろ?さっき廊下でスレ違った!」
「マジ?どっち行った??」
突如流れた放送を聞いて、生徒だけでなく一般の人達も血眼になって探していた。
その大半が、赤ずきんの服装をしたりんをターゲットにしている。
謙「えらい大袈裟なことになったなぁ…」
リョ「…………」
謙「大丈夫やって、りんちゃんは絶対俺らが見付けよっな?」
校舎は一通り見たので、中庭周辺を探すリョーマ達。
心配で無言になるリョーマの肩を、謙也は優しく叩いた。
財「謙也さんの言う通りや…絶対見付けたる」
珍しく同意してくれた後輩に、「財前…」と謙也は感動するが、
財「豪華賞品気になるやん」
謙「ああー…うん、そっちね!?」
泣きながらノリツッコミをかます謙也達の会話を聞きながら、1人で探したいと思うリョーマだった。
一方、白石も学校の隅々を走り回っていた。
白「(…何処におるねん)」
一応携帯に掛けてみたが、持たずに出て行ってしまったみたいだ。
一度冷静になって考えた方が良いと、がむしゃらに動かしていた足を止めた。
りんは暗闇が嫌いなので、体育館の倉庫や狭いところにいる確率は少ない。
虫が多い草むらなんかも選ばないだろうし、後は……
白「(…高いところは、平気やったよな)」
いつだったか、小さい頃兄の真似をして、良く木登りをしたと言っていた気がする。
顎に添えていた手を離し、白石はある場所に向かって走り出した。
そこは……聖華女学院の中でも木の多い場所。
中庭に比べると少し華やかさには欠けるが、1つだけのベンチ等が風情を感じさせる。
りんのお気に入りの場所だと、以前写真を送ってくれたことがあった。
紅葉した葉が風に舞い、白石は目を細めてなるべく枝の多い木を探した。
そこに…赤い頭巾が見えた。
白「(おった……)」
小さく肩を震わせ、体育座りをしている。
「りんちゃん」と名前を呼ぶと、ビクッと動いた。
白「おいで、」
『………っ』
そーっと振り返り、両手を広げる白石の姿を見た瞬間、その胸に飛び込むように降りた。
りんを受け止めた反動で、ドサリとその場に座る体勢となる。
『こ、怖かった…です』
白「よしよし、もう大丈夫やからな」
『白石さんが、見付けてくれなかったら、どうしよって……』
白「…俺のこと待ってたん?」
う、う、と泣きながら、小さく頷く。
そんなりんが愛らしくて、ギュッと強く抱きしめた。
暫く白石がそうしていると、だんだん落ち着いてきたらしく…急にこの状況を恥ずかしく思ったりんは慌て始めた。
だが、白石は離してやる気などない。
白「…ほんまは、越前くんが良かった?」
『ぇ、』
白「劇でキスしたのも、越前くんで嬉しかったんとちゃう?」
本当は、あの時だって。
引き離して、りんを連れ出したかった。
けれどりんの頬は桃色に染まっていて、兄が大好きなことを知っていたから、ただ傍観するしかなかった。
あの2人、どう見たって…
それは、寂しさと恐怖。
嫉妬、独占欲。
全ての感情が白石を支配し、苛立たせていた。
白「(俺だけ見とればええ)」
りんが離れてしまわないように、強く強く抱きしめる。
白「(りんちゃんに触れてええのも…俺だけや)」
頭の先から爪先まで、心だって、自分がいないと生きていけないくらい好きになって欲しい。
でもそれは自分勝手な考えにすぎなくて、りんの最優先はいつだって決まってる。
余裕ぶって大人ぶっていても、そのことが嫌で堪らない。
『……白石さん、』
白「ん…」
『あ、あのっ』
ギュゥゥと未だに強く抱きしめられ、心臓の鼓動が白石に聞こえてしまいそうだ。
離してくれそうにないと理解したりんは、おずおずと自身の腕を広い背中に回した。
『実は、雪ちゃんが豪華賞品の話をしてるの聞いちゃったんです。だから私、』
『白石さんが見付けてくれて嬉しかったんです』と、俯きながら話す。
りんが顔を真っ赤にして俯く時は、可愛いことを言う時だと白石は知っていたが、
『賞品って、見付けた人が、その人にキ、キス…して貰えるんです』
わかっていたのに、その言葉は予想を遥かに越えていた。
つまり、りんは。
白「俺とならええって…そうゆうこと?」
頷いて欲しいと思いながら、真っ赤に染まった顔を見つめて問う。
あたふたと目を泳がせた後、りんは小さく顔を縦に振った。
『白石さんが、いいです』
ふわりと笑うりんに、白石の鼓動がドクンと鳴る。
自分の中で渦巻いていた愚かな感情は、たった一言でこんなにも嬉しい気持ちになるのか。
好きで、好きで、可笑しくなりそうだ。
白「…じゃ、賞品貰おかな」
『!あああの、頬っぺたですよ?///』
ぐっと顔を近付ける白石に驚いたりんは、慌てて距離を置こうとするが、抱きしめられていた為それは失敗に終わった。
顔を伏せるが、「りんちゃん」と切ない声音で呼ばれて。
その声に弱いりんは顔を上げてしまうと、すぐに白石の唇が自分のと重なった。
触れるだけの優しいもの。
一瞬だったのにりんはとても長く感じた。
唇と同時に離れたと思った白石の顔が、未だ至近距離で自分を見つめている。
鼻先が触れそうなくらい近くて、心臓がドキドキ鳴りすぎて壊れるんじゃないかと心配になった。
やがて白石の掌がりんの頬に添えられた。
白「…もう1回、ええ?」
そんな声で瞳で、聞かないで、見ないで欲しい。
胸の奥が締め付けられて、顔を横になんて振れなかった。
返事の変わりに彼の服をギュッと握る。
白石は一瞬嬉しそうに頬を緩めたが、再度近付いてくる顔は真剣だった。
さっきよりも深い口付けに、りんは息遣いが上手く出来ず苦しさで眉を寄せる。
『……っ』
角度を変えながら何回も繰り返し、白石の服を強く握りながらついていくのが精一杯。
重なる唇からお互いの気持ちが伝わってくる気がして…怖い。
『……し、しら…さっ…』
息にも気持ちにも限界が来たりんはトントンと目の前の肩を叩くと、白石はゆっくりと離してくれた。
白「大丈夫?」
『あ、だ、大丈夫です…』
白「堪忍な。りんちゃんが可愛くて、つい」
『っ!///』
未だに慣れないのか、ストレートな言葉に直ぐ様赤面するりん。
クスクス笑う白石を見てムッと頬を膨らませた。
白「あんなぁ…そんなんしてもかわええだけやで?」
『!!か、からかうのは駄目ですっ!///』
白「(…本気なんやけど)」
両手で大きく×を作る仕草も可愛いと思いながら、白石は鈍感すぎるりんに少しだけ傷付いた。
と言うより、りんは人からの好意に鈍すぎる。
今日の劇だって、今の格好だって、どんなに周りを魅了していることか……
男だけでなく女にも絶大な人気があるのだとわかった今、白石は頭を抱えて溜め息を吐きたい気分である。
何かに悩んでいる白石に?とりんが首を傾げていると、「りんー!」と遠くから名前を呼ぶ声が響いた。
『雪ちゃん…?探しに来てくれたのかな』
抱きしめる腕が弱まった隙に立ち上がり、声のする方へ自然に見せ掛け去ろうとする。
だが片腕が掴まれてしまい、振り向くと眉を下げて微笑む白石がいて。
その顔に再び胸がキュゥとした。
白「俺な、」
『?』
言葉を待つりんは無防備で、急に立ち上がった白石に警戒なんてしてなくて。
彼の顔が降りてきた瞬間、瞼にちゅ…と唇が触れた。
白「りんちゃんが思っとるより、りんちゃんのこと…ずっと好きやから」
「覚えといてな」と微笑むと、白石は質問攻めに合うことを予期して先に対処すべく行ってしまった。
残されたりんは暫く呆然と固まっていたが、やがてりんごのように顔を真っ赤に染めた。
『やっぱり、顔……洗えないよ…』
右瞼にそっと触れて、力が抜けたようにペタリとその場に崩れた。
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