赤ずきんと狼王子
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その内の1人が白石の手に触れようとしていて、りんは咄嗟にカーテンをギュッと強く握っていた。
財「……何しとるん?」
『へ!!?』
ビクッと体を浮かすりんに、意地悪く笑う財前。
『ざ、財前さん?』
謙「おーりんちゃん。さっきはお疲れやったなぁ」
『謙也さんも…皆さん来てくれたんですか?』
「そやで!」とニッと笑う謙也に嬉しさが込み上げてくる。
財前に無言でジュースを差し出され、『ありがとうございます』と素直に受け取った。
それを飲もうと口に近付けたが、誰かに奪われた…と同時に、後ろからギュッと抱きしめられた。
白「この炭酸辛すぎてりんちゃん苦手やったよな?」
財「………チッ」
謙「舌打ち!?あ、そうなん?堪忍な知らんで」
頭上から聞こえる声にドキリとする。
慌てて白石の方を向こうとするが、然り気無く回された腕に力が込められて、恥ずかしさから出来なかった。
いつもなら、こんなこと人前ではしないのに……
『し、白石さん…さっきはごめんなさい。連絡もなしに///』
白「いや、それどころやなかったやろ?大変やったな、主役なんて」
恥ずかしくて早く離して欲しい…と思うけれど、何処か嬉しい気持ちもある。
クラスメートからはキャアキャア騒がれるし、りんは顔を真っ赤にして俯く。
白「りんちゃん、その格好…」
『!あ、これは…』
一瞬弱まった隙に、腕からするりと抜けて白石の方に向き直った。
『へ、変…ですよねっ』
りんのクラスはただのカフェではなく、店員は童話やお伽噺に登場するような格好をしていた。
お茶をする以外に、指名した店員と写真を撮ることが出来る。
アリスや人魚姫、白雪姫などの格好をした女の子がいる中、りんは赤ずきん。
みつあみをした頭に赤い頭巾を被り、刺繍の付いた白いエプロンの下には、裾が膨らんだワンピースを着ていた。
それだけで十分過ぎるくらい可愛いのに、恥ずかしさでモジモジするりんは白石にとって最早凶器だった。
『…あの?』
白「………っ」
『わわっ白石さん?』
じっと見られるが何も言わない白石に不安を感じて、涙目になりながら見上げた瞬間…白石は口元を手で被いながら、よろりと倒れそうになった。
慌てて支えるりんは、白石の顔が微かに赤いことに気付く。
白「…りんちゃんはズルいわ」
『え、』
目が合い、ドキッと鼓動が鳴る。
白石にこんな表情をされると、どうしたら良いかわからない。
やがて伝染するようにりんの顔もカァァと赤く染まっていった。
財「…なんなんスかこのウザいカップル」
謙「完全に俺ら邪魔やん…」
まだ再会して数分なのに甘い雰囲気を作られ、そこだけ淡いピンクのオーラに包まれて見えた。
「あれ、あの子王子役の!」
教室にいたクラスメートの声にりんも顔を向けると、入り口にはリョーマの姿が。
『お兄ちゃんっ』
リョ「りん、」
「「「お兄ちゃん!?」」」
素早く駆け寄るりんは、驚いたように大声を出すクラスメートにビクッとした。
りんが極度のブラコンなことを知っている為、興味津々な皆は一斉に入り口に向かう。
「あれ?体育祭にいた…」
「うそ!似てないから友達かと思ってた」
『(はぅ!)』
グサッと針が胸に刺さったように、ショックで固まるりん。
俯いて今にも泣き出しそうなりんの元へ行きたいのに、女子生徒に囲まれて身動きが取れずリョーマは不機嫌に眉を寄せた。
要「はいはい、お客様を待たすなー」
騒がしいクラスに要の声が響くと、女子達は渋々と接客に戻る。
りんの隣に立った要は頭に手を置き、あやすようにぽんぽんと撫でた。
それに対し、リョーマと白石は大きく反応する。
要「……(何コイツら)」
ゴォォと背後に炎が見えて、本能で危険を感じ取った要はパッと手を離した。
白「…初めまして、白石蔵ノ介言います」
要「あ、君がりんの…どうも、担任の水城です」
女子が失神してしまいそうな笑みを浮かべる白石に合わせ、笑顔で話す要。
白石も長身な方だが、要は180㎝を越えているので…自然と見下すようになる。
りんはとゆうと、既にリョーマに連れられ(比較的安全な)謙也達の元にいた。
要「さっきの劇も見てた?」
白「はい、見とりましたよ。先生も飛び入りなんですか?」
要「そうそう、もうビックリするから。俺今年からこの学校にいるから、文化祭初参加なのに」
へぇ…と白石は少し目を見開いた。
クラスの様子からして、担任になって間もないようには見えない。
テニス部顧問の顔と重ねていると、要の目がすっと細められた。
要「敵は俺じゃないと思うよ?」
その視線の先を、白石もゆっくり追った。
要「彼氏なんだし、気付かないわけないよね」
白「何を「あの2人、」
どう見たって…
「先生ー!」と呼ぶ声に遮られ、要は小さく笑うと行ってしまった。
白石はただ立ち尽くす。
『お兄ちゃん、試合どうだった?』
リョ「…引き分け。先輩達も行くって騒いでたよ」
『本当?早く会いたいな』
楽しそうに笑うりんを見て、口元を緩めるリョーマ。
今、自分はどんな顔をしてるのだろう。
怒りではない、感じたことのない寂しさが急激に心を襲う。
『あの、白石さん?』
ハッとして斜め下に顔を向けると、りんが心配そうな顔をして自分を見つめていた。
白「…あ、堪忍な。何?」
『私これから、このチラシだけ配りに行って来ますね』
白「そうなん?気ぃ付けてな」
頭を優しく撫でると、りんは照れたように微笑み教室を出て行った。
白「……っりんちゃ、」
足は自然に、彼女が出て行った方へ向かった。
……その時。
《ご来場の皆様にご連絡します。2年D組の特別企画より、只今からこの学校にいるアリス、魔女、赤ずきんを見付けて教室に連れてきた方には…豪華賞品を差し上げます!》
白「…………は、」
数秒後、ポカンとする白石の前を数え切れない程の足音が通り過ぎた。