ふたり。
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*りんside*
どうして忘れてたんだろう…
あの時私は、お兄ちゃんとよく一緒に遊んだ、川のある公園に1人しゃがみ込んでいた。
『ふぇ…グスッ…グスッ』
「どないしたん?」
顔を上げれば、心配そうな顔をした男の子。
『…お、お花、枯れちゃったの…っ』
「お花?」
『にいちゃに、貰ったのに…』
枯れたことが悲しくて、悲しくて…泣くことしか出来なかった。
男の子は少し考える素振りをして、「そうや」とポケットから何かを取り出した。
「これ、あげる」
『え…?』
手のひらにそっと置かれた小さい飴玉。
「アメちゃん。食べると笑顔になるんやで」
ニコッと言われ、恐る恐る飴玉を口に運ぶ。
それは酸っぱいと思ったら、すぐに甘い味が口の中に広がった。
『…おいしい』
私が目を丸くして言うと、男の子は嬉しそうに笑った。
草の上に座り、2人並んで静かに流れる川を見つめる。
「枯れたんは、しょうがないなぁ」
『どして…?』
「そうゆうもんなんや。植物だけじゃなく、動物もな。だから、今までありがとうって感謝しなきゃアカン」
『……うん』
言ってる意味を何となくだけど理解し、コクンと頷いた。
『…お花さん、今までありがとう!』
目をギュッと瞑りながら叫ぶ。
頭の上に感じた、温かい感触。
「うん。いい子や」
優しく微笑みながら、男の子はずっと頭を撫でてくれた。
それからどんな話をしたのかはあまり覚えてないけど、すごく楽しかった気がする。
『にいちゃ、お名前なんてゆーの?』
首を傾げて尋ねると、男の子は少し言いにくそうに口元に手を添えた。
「……くらのすけ。」
『く、くらのしゅけ?』
「変わった名前やろ」と苦笑いする男の子。
『……かっこいい//』
「え?」
『あのね、昨日テレビで見たの!゙きもの゙着ててね、かっこ良かったの!』
勢い良く喋る私を見つめて暫く目を丸くしていた男の子は、フッと少し視線をずらした。
「…おおきに…」
小さく呟いた言葉に、満面の笑顔で返した。
『くらにいちゃ、また会える?』
「うん。いつか…な」
約束!と言って小指を突き出すと、男の子はふわり笑って、自分の小指と絡めた。
また会えたらいいなって…本当に思ってたの。
でもいつの間にか、忘れてしまった。
「15-40」
審判の掛け声に、ハッとして気付いた。
そうだ、試合…
慌ててコートを集中して見ると、白石さんが百腕巨人(ヘカトンケイル)の門番を打ち返したところだった。
白「さあ、反撃や」
もう完全に攻略してる白石さんに驚きながらも、試合に目が離せない。
不二先輩の打った打球が相手コートのライン近くに落ちた。
「アウト!ゲームセット…ウォンバイ 白石7-6」
2人握手を交わして、シングルス3の試合は幕を閉じた。
不二先輩にタオルとドリンクを手渡す。
先輩は、今まで見たことがない位悔しがっていた。
地面を静かに見つめる不二先輩から、視線を四天宝寺の席に向ける。
その瞬間、タオルで汗を拭く白石さんと目が合った。
パッと勢い良く顔を背ければ、失礼なことをしたと後々後悔した。