妹離れ
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*リョーマside*
さっきまでの晴天と打って変わって、今は曇り空。
帰り道、りんは一言も喋らなかった。
横には並ばないで、俺の後ろで歩いていた。
冷たすぎた…と思う。
桃先輩に言われた言葉が、頭から離れないんだ。
夕食中も、家族とは普通に話していたけど、りんは俺を見ないようにしていた。
その様子を母さんは不思議に思っているようだった。
夜、そろそろ寝ようと部屋の明かりを消そうとした時ー…
ゴロゴロ…ピシャァン
雷が落ちた。
ふっと電気が消え、部屋は真っ暗になる。
「…停電。」
朝には戻ってるだろと、何事もなかったかのようにベッドに入った。
(……りん、大丈夫かな)
あいつは昔から暗闇が大の苦手で、いつもベッドの傍にある電気をつけて寝ている。
停電だし、雷だし。
起き上がろうとした時、部屋のドアが小さく叩かれた。
『お兄ちゃん、起きてる…?』と遠慮がちな声。
俺が返事をすると、ドアが開かれた。
枕を抱き締めるように抱えたりんが立っていた。
『あのっは、端っこで良いから!部屋の隅にいるから…えと、その、』
怯えたように話すりん。
俺にか…雷にか。
後者の方であって欲しいと思った。
『…こ、こっちの部屋で…寝てもいい…?』
りんは涙声で必死に訴える。
「…ほら。」
小さく溜め息を吐いて、布団をめくる。
りんは驚いて目を大きく開いた。
『……い、いいの?』
「うん」
とことこ歩いて、りんは布団に入った。
雷がなるたび体をビクッと動かすりん。
「…俺の服掴んでていいから」
そう言うと、ギュッと服の袖を引っ張られた。
ゴロゴロ…ピシャァン
『ひゃわっ…!!』
(ひゃわって…)
固く目を閉じるりんを見ながら、片手を握った。
『お兄ちゃ…』
「寝るまでだから」
素っ気なく呟き顔を背ける。
隣から、小さく『ありがとう』と聞こえた。
暗闇の中、暫く沈黙が続く。
「…あのさ、」
顔を背けたまま口を開く。
「俺は…りんを傍に置いておいた方が、安心だと思ってた。
いざとなったら、守れるし」
それに、りんが嬉しそうにマネージャーの話をしてきたから。
「ファンクラブとか、クラスの男子がりんの話してて、正直…ムカついた」
それはきっと…妹離れできてないからで、
だから桃先輩に言われた時、信じたくない自分がいた。
「りんの好きなようにすればいいよ。
もし何かあったら…全力で守るから」
……………
返事がないことを疑問に思い、顔を反対側に向けた。
予感的中で、りんはスヤスヤと気持ちよさそうに眠っていた。
いつの間にか体をこっちに向けて。
「…はぁ…」
恥ずかしさと呆れた思いで、深い溜め息を吐く。
いつの間にか雷は止んでいて、
りんの顔は幸せそうで、
見つめていたらそんな気持ちも消えていった。
できれば、ずっと傍にいて欲しい。
そんなことを思う俺は、やっぱり妹離れできていないんだ。
明日、いつもの笑顔で自分を呼んでくれることを願って、瞼を閉じた。
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