誓い
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りんの耳に届いた声は、懐かしくて、待ち焦がれた人のものだった。
『…お、お兄ちゃん…?』
すっと両手を差し出す姿を見て、りんは勢い良く走り出した。
『お兄ちゃん…っ』
その腕に飛び込み、堪えきれずに涙を流す。
ポンポンと頭を撫でる手は、間違いなく兄のものだった。
リョ「…本当に変わらないね」
『ほ、本当にお兄ちゃんなの?』
リョ「それ以外何に見える?」
お兄ちゃんお兄ちゃんと言いながら擦り寄ってくる姿は、幼い頃のままのりんで。
いくつになっても変わらないとわかり、リョーマは何処かホッとしていた。
『帰って来るの、まだ先だって…』
リョ「早く日本に行きたくて。りんのご飯も食べたいし」
やっぱりご飯なんだ…と嬉しくも少し落ち込むりん。
リョ「(…本当の理由なんて言えないな)」
りんに会いたくて、気付いたら飛行機に乗っていた。
そんならしくもないことは、口が裂けても言えないと思うリョーマだった。
ふと、りんの後ろに視線を向ける。
リョ「…お久しぶりです。白石さん」
白「ああ。元気やったか?」
リョ「はい。りんのこと、色々お世話になりました」
素っ気なく礼を言い、「じゃ、失礼します」とりんの手を繋ぎ去ろうとする。
展開についていけず、『お、お兄ちゃん?』とりんは慌て始めた。
『お兄ちゃん、白石さんが…っ』
後ろを振り返り、白石を気にするりん。
だが、リョーマはスタスタと早足で進んで行き見向きもしない。
『白石さん、折角大阪から来てくれたんだよっ』
リョ「(…俺もアメリカから来たんだけど)」
『お兄ちゃん…』
リョ「…………」
チラリりんを見れば、必死に訴えていて。
自然と上目遣いになってることに、きっと気付いていないんだろう。
リョーマはハァと溜め息を吐くと、足を止め繋いでいた手を離した。
『ありがとう、お兄ちゃん!』
ぱあっと嬉しそうに笑ったりんを見ては、自分も変わってないなと思った。
『お兄ちゃん、何だか背伸びた?』
左には白石、右はリョーマで、りんを挟むようにして家路を歩いていた。
リョ「そう?りんが縮んだんじゃない?」
『むぅ…縮んでないもん。これでも2ミリ伸びたんだからっ』
白「まぁ、りんちゃんは小さくてかわええけどなぁ」
『!!』
さらっとそんなことを言われて、りんはあっという間に顔を赤く染める。
リョ「…りんがでかかったら可愛くないんスか?」
白「いや、関係ないやろーな。りんちゃんそのものがかわええし」
本当に無自覚なんだろうかこの人、と眉を寄せるリョーマ。
こんな口説き文句のような台詞を日常で言われれば、間違いなくりんは気絶するのではないか。
既にりんごのように顔を真っ赤にするりんを見て、心配になった。
リョ「…泊まるとこ、どうするんスか?」
白「この近くでホテル取っとるから、そこで…」
『え、家で泊まってくれていいんですよ?』
ピタリと、二人して足を止めた。
ニコニコと何でもないように笑うりん。
白「いやいや、それはさすがにアカンやろ」
『え?どうしてですか?』
りんは良くわからず本気で首を傾げる。
ホテルへ泊まるより、家に泊まった方がお金もかからないし、何も可笑しなことは言っていない。
リョーマはそんなりんを見て深い溜め息を吐いた。
リョ「白石さんが、りんに変なことしないかってこと」
『へ、変なこと?』
何だろう…と頭を悩ませるりんの横で、白石はコホンと小さく咳払いをする。
『あ、枕投げですか?それなら大丈夫ですよ、私結構強いんです!』
ニッコリ微笑み、胸を張るりん。
ガクッと肩を落とした二人に再び首を傾げる。
白「(…まぁ、)」
リョ「(そんなりんだから…)」
気付くと、両方の手を繋がれていた。
りんは驚いたが、やがてギュッと握り返した。
『帰ろう、お兄ちゃん、白石さん!』
ふわりと、天使は微笑んだ。
これからどんなに離れても、
帰って来る場所は…きっと君の元なんだ。
代わりなんていない。
この世でたった一人の、大切な女の子。
夕暮れの中、仲良く手を繋ぐ三人の影。
それは…いつまでも、永遠に続いているようだった。
…fin…
あとがきと言う名の感謝文→