誓い
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
桜の蕾が咲き初め、肌寒かった風も暖かく変わってきた、今日この日。
青学テニス部の部室では、賑やかな声が響いていた。
桃「先輩達、卒業おめでとうございます!」
海「おめでとうございます」
花を制服に身に付けた三年生…卒業生は、部室の入り口で目を丸くした。
部室は色鮮やかに装飾が施され、沢山の料理が並べられていた。
大「皆…ありがとう」
河「こんな沢山の料理…大変だっただろう?」
堀「いやいや、それほどでもー」
カチロー「違うでしょ堀尾くん。僕達は手伝っただけじゃない」
カツオ「そうだよ。殆んどは…」
二人は後ろに視線を向け、皆も首を傾げながらその方向を見た。
一、二年生の輪を潜ると、中心に立っていたのは…
『先輩、卒業おめでとうございます!』
ニッコリと笑うりん。
不「りんちゃん」
菊「りん!」
手「…この料理はりんが?」
手塚は並べられてある料理を見渡す。
こんなに作るのは大変だったに違いない。
『はい!先輩達の為に張り切りすぎちゃいまして、』
えへへと笑う姿に、さすがと皆は驚きつつ感心する。
桃「早く乾杯しましょーよ!」
ご馳走が早く食べたくて、グラスを持ちウズウズしている桃城。
それを見た堀尾は、何故かコホンと咳払いして一歩前に出た。
堀「えーそれでは皆さん、乾杯ー!」
「「「(((乾杯~!!)))」」」
グラスを合わせ、皆勢い良く飲みほして行く。(中身はジュースです)
それぞれが談笑し、いつも以上に賑やかな部室となっていった。
手「海堂、来年のテニス部の部長は任せたぞ」
海「…はい」
壁に寄りかかりながら、手塚は真剣な表情で言う。
海堂もそれに応えるように、強く頷いた。
海「先輩達の卒業パーティーしようって言ったの、りんなんスよ」
手「…そうか」
グラスに口を付けながら、手塚は皆に囲まれて楽しそうに笑うりんを見つめた。
話した覚えもないのに、料理は自分を含め、皆の好物ばかりだった。
マネージャーとして、最後まで一生懸命に働いてくれたりん。
完璧じゃなくても良い。
彼女が傍にいて微笑んでくれるだけで、皆は幸せな気持ちになった。
手「卒業…しなければな」
海「え?」
手「いや、こっちの話だ」
海堂は首を傾げ手塚を見上げる。
その顔は今までに見たことがないくらい穏やかで、それ以上は聞けず、同じように前を向いた。
菊「ううーもう卒業かぁ」
不「高校も青学なんだし、大して変わらないよ」
『…先輩、またいつでも来て下さいね』
りんは泣きそうになるのを必死で我慢しながら、訴える。
菊「もちろん!毎日行くにゃ!」
『本当ですよ?せんぱ…』
菊「うわーんりん~!!」
ガバッと抱き付き、菊丸は小さい子のように泣きじゃくる。
りんも堪えきれなくなり、ブワッと涙が溢れてきた。
うわーんと泣き合う二人を見ながら、不二も薄らと涙を浮かべていた。
乾「そろそろ…渡さないか?」
不「ああ、うん」
服の袖で涙を拭くりんに、三年生は揃って近寄る。
顔を上げ首を傾げると、一斉に目の前に手をかざした。
そっと手の平を開くと、その中にあったものは…
『…え?』
制服の、ボタンだった。
皆の制服を見ると二番目のボタンがなくなっている。
不「皆で話して、りんちゃんにあげようって決めたんだ」
『でも、こんな大切なもの…っ』
第2ボタンは、大切だと知っていた。
そんなものを自分なんかが貰っていいのか、と手を横に振る。
菊「だから、大好きなりんに貰って欲しいんだよー」
手「それほど俺達にとって…りんは大切な存在だったからな」
人の為に泣いて、怒って、笑って。
そんな優しい彼女が大好きで、
皆にとっては、世界一可愛い妹のような存在。
『…先輩達は、ずっと、ずっと……私の先輩です』
りんは涙を拭き、『卒業おめでとうございます』と精一杯の笑顔で笑った。
皆も顔を見合わせ、嬉しそうに微笑む。
桃「あ、じゃー写真撮りましょうよ!」
桃城は何処からかカメラを持って来て、待ってましたと言わんばかりに構えた。
海「たまには気が利くじゃねぇか」
桃「な、たまには余計だ!」
大「まぁまぁ二人共…」
険悪な雰囲気を和らげながら、最後まで肩の荷が降りないと思う大石だった。
桃「行きますよー…」
カメラをセットして、桃城は皆の元へ走って行った。
菊「あーっ桃。りんの隣俺!」
桃「ちょ、英二先輩押さないで下さいよ」
『あの、先輩カメラが…っ』
パシャッと、シャッターが切られた。
ここで過ごした日々は、一生忘れない。
形には残らない、大切な宝物だから。