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*りんside*
夕暮れの河原に座り、流れゆく川を眺めていた。
遠くの方では石を投げている男の子達がいて、微かに笑い声が聞こてくる。
……なんで、逃げてしまったんだろう。
恥ずかしくなったとか、そんな理由もあるけど。
だけど一番は…自分が嫌になったの。
勝手に誰なのか気になって、一人で不安になって。
電話も出なかったり…最低だ。
チョコレートに書いた、自分の気持ち。
『…I… Love……You』
どうしようもない想いを、伝えたくて。
あれを見た白石さんは、どんな顔をするのかな。
「………ちゃん」
ハッとして聞こえた声に振り返ると、こっちに向かって走って来るのは張本人。
白「りんちゃん…!」
近付いて来た白石さんにドクンと鼓動が鳴り、くるっと背中を向け走りだした。
白「!ちょ、何で逃げるん!?」
だーっと、必死の全力疾走。
何でって足が勝手に動くから。
本当は会いたいのに、何でか反対のことをしてる自分がわからない。
駄目だ、
逃げちゃ駄目。
立ち向かわなきゃ。
次第にゆっくりになって来た歩調。
足音が近付いて来て、片腕を掴まれた。
白「……つかまえた…」
ハァと息を調える白石さん。
ゆっくり振り返り、そっと顔を上げた。
『…ご、めんなさい…』
その顔を見たら急に泣きたくなってきて、うるっと瞳に涙が溜まる。
当たり前だけど、白石さんは驚いてるようだった。
『ゆ、友香里ちゃんが…白石さんはチョコ沢山貰うって言って、でも食べないでほ、本命だけって……電話は勉強の邪魔で、それでお姉さんをか、彼女だって勝手に勘違いしてて……』
白「…りんちゃん」
『面倒臭くて、嫌な子で、ごめんなさ「りんちゃん」
白石さんの腕が伸びてきて、そっと私の頬に触れた。
涙を指で拭かれ、ドキンと大きく鼓動が鳴る。
白「友香里に何言われたか知らんけど、りんちゃんが謝ることなんてないで」
『で、でも…』
白「俺が全部好きでしとることや。チョコ食べへんのも、電話も。邪魔なわけあらへんやん…あれが一日の癒しなんやから」
そう言って、白石さんは優しく笑った。
また大きく鼓動が鳴ってしまって、上手く声が出ない。
コクンと頷けば、ふわりと微笑み頭を撫でてくれた。
ふと、白石さんは頭から手を離し真っ直ぐ私を見つめる。
白「…さっき、お姉さんを彼女やと勘違いしたって言うたやん」
『!そ、それは』
白「このチョコも…」
白石さんは、先程私がドアに掛けて来た袋を見せる。
それに書いたメッセージを思い出して、カァァと顔が赤く染まっていった。
白「…おおきに。めっちゃ嬉しい」
白石さんは本当に嬉しそうに笑った。
…もしかして、
まだ伝わってないのかな。
あ、あいらぶゆーまで書いたのに?
白「流石帰国子女やなって思うて。買ったやつみたいで驚いたわ」
『え、えと…』
白「あの声は姉ちゃんで彼女やないし、遠慮せんくてもええんやで」
アメリカ帰りだから、あんな言葉本気じゃないって思ってるのかな。
私の性格を把握して白石さんがそう解釈したなんて思わなくて、ただショックを受け落ち込む。
ううん、ここで諦めちゃ駄目だよ…
伝えるって、決めたんだから。
そう決意して口を開けようと白石さんを見つめる。
白「…待っててな」
低い声に思わず目を丸くする。
そんな私に、白石さんはフッと微笑んだ。
白「俺、頑張ってりんちゃんに似合う男になるから…せやから、待っててな」
白石さんは、何処か寂しそうに笑っていた。
違う
そんなこと、言わせたかった訳じゃない。
そんな顔を、させたかった訳じゃない。
私は…
一番大好きな、笑顔が見たくて。
『…い、嫌です』
小さく首を横に振る。
白石さんは多分傷付いた顔をしてると思い、顔を下に向けたまま続ける。
『頑張らないで下さい…私は、そのままの白石さんが……』
ここで好きだと言っても、きっとまたわかって貰えない。
どうしたら良いか言葉を探して、思い出した。
『前、白石さん言ってくれましたよね、私のこと、好きだって…』
白「…うん」
『すごく、嬉しかったです』
どうしてなのか考えて、考えて、わかったこと。
それは、すごく単純な理由だった。
『……私も、好きです』
ただ、それだけ。
『すごくドキドキしたり、胸が痛くなったり…白石さんだけなんです、だから、私は……』
『白石さんと同じ意味で、白石さんのことが…大好きなんです』
恐る恐る閉じていた目を開ける。
前を見たけど、白石さんの反応がない。
『あの…』
白「…………」
『し、白石さん…?』
白「…………」
不安になって顔を覗き込むと、「…アカン」と呟き手の平で顔を被う。
白「…それは、恋愛対象としてっちゅーことで、ええんか?」
カァァと再び顔に熱が溜まっていった。
『…はい』
コクンと頷けば、白石さんは「あー」と嘆く。
その声にびくっと肩を揺らした。
白「ずっと自惚れないようにしとったから……信じられへん」
また一人で嘆く白石さんにゆっくりと近寄って行く。
『自惚れて…いいです』
そう言って微笑めば、白石さんは指の隙間から私を見つめた。
目が合っただけでドキッとして、慌てて顔を逸らし思い出したように袋を探る。
『もう一つ、白石さんにプレゼントがあるんです…っ///』
今日の為に編み直した、深緑色のマフラーを取り出した。
白石さんは目を丸くして、顔から手を離す。
白「…俺に?」
『はい。迷惑かなって思ったんですけど、どうしてもあげたくて…』
おおきに、と嬉しそうに微笑まれて、また大きく鼓動が鳴る。
顔を真っ赤にしながらも、背伸びをして白石さんの首にそのマフラーを掛けようとする。…けど、上手くいかない。
『……んしょ、』
白「………」
『あの、少し屈んで下さると……きゃ!?』
急に白石さんの腕が伸びて来て、一瞬のうちにその腕の中にいた。
ギュッと抱き締められ、ドキドキと最高潮に鼓動が鳴り出す。
白「…もう、離れられそうにない」
肩越しに聞こえた声音に、どんどん鼓動が速くなる。
それは私も同じで。
だけど声が出なくて。
返事をする変わりに、ゆっくり頷いた。
白石さんに、全部、伝わってたらいいな。
どれだけ私が…あなたを大好きなのかを。
腕の中、白石さんの鼓動を感じてそっと目を閉じる。
綺麗な夕日が、私達を包んでくれてるようだった。