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*白石side*
「あの、好きです!つ、付きおうて下さい…っ///」
中庭に呼び出され、まず言われたのはこの言葉やった。
顔を真っ赤にする一年生の女の子。(←名前わからない)
「堪忍な、俺…好きな子おるから」
そう言うて断わると、相手は「え…」と目を見開き固まってしまった。
「こ、この学校の方ですか?」
「いや、ちゃうけど…」
ほんまに申し訳あらへんけど、俺の答えは決まっとる。
「その子しか考えられへんねん。ごめんな」
真剣にそう言えば、女の子はペコリと頭を下げ早足で去って行った。
こういうことは慣れとるはずやけど、やっぱり苦手やな。
ハァと小さく溜め息を吐いて近くのベンチに腰掛ける。
思えば、朝からえらい忙しなかったなぁ…
良く晴れた空を見上げながら、ふと、あの子の顔が浮かんだ。
りんちゃん、今何しとるんやろ。
元旦に電話が来た時は、ほんまに嬉しかった。
好きな子に電話して良いですか言われて、断わる男なんておらへんやん。
せやけどりんちゃんは優しいから、俺が受験勉強で忙しい思うて電話してくれへんやないかって考えて。
それから、声聞きたい思うた時とか(いつもやけど)電話したりしとった。
始め掛けた時はりんちゃんめっちゃ咬んどって。
それが可愛くて、そう言うたらひどく動揺された。
…やけど、急に電話に出なくなってしもーた。
理由を考えてもわからん。
何や怒らせること言うたかなと原因を探るけど、見当たらない。
確かあの時は…姉ちゃんが部屋に入って来たよーな。
(…………)
彼女やと勘違いした、とかやろうか……………………………………………………いやいや、自惚れちゃアカンで。
「白石ー」
りんちゃんはきっとアレや。バレンタインデーとかも手作りのケーキなんか作って、皆に「先輩大好きです!」とか言うてあげるんや。
「白石聞いとるー?」
で、頬とか染めて微笑んでな。無意識やから、皆に本命なんかと勘違いされて…
「なぁ、白石!!」
びくっと肩を揺らし、顔を上げた。
「金ちゃんか…驚かせんといてや」
金「さっきから声かけてんで!白石がぼおっとしとるからやんか!」
金ちゃんはムゥーと頬を膨らませる。
ごめんなと頭を軽く叩くと、金ちゃんはすぐにいつもみたいにニパッと笑い、俺の隣に座った。
金「白石にもあげるわ!」
「え?」
金ちゃんは手に持っていた沢山のチョコレートの包みから、一つを俺の前に差し出した。
「アカンよ金ちゃん。これは金ちゃんがもろうた物やろ?」
金「せやけど沢山貰ったし…白石にあげたいんや!」
金ちゃんとチョコを交互に見て、やがてポンポン頭を撫でながら「おおきに」と微笑み受け取る。
笑った金ちゃんを見ていたら、幼い頃のりんちゃんを思い出した。
何や似とるな。
毒手信じとるとことか…
金「なぁなぁ、バレンタインデーって、好きな男の子に女の子がチョコあげる日なんやろ?」
「小春に教えて貰った」と言う金ちゃん。
「せやで」
金「なら、白石はりんからもう貰ったん?」
はたと、体が停止した。
この子ピンポイントで聞いてきよるから、心臓に悪いわ。
「いや、貰ってない…」
ああ、だんだん落ち込んできた気ぃする。
頼むからもう聞かんといてや金ちゃん。
金「何でー?りんは白石が大好きやのに、」
その言葉に、思わず目を見開いてしもうた。
金「ワイが白石のこと話してたらな、りんめっちゃ楽しそうやったから。好きなんやなー言うたら、『はい』って言ったんやで」
「…それ、いつや?」
金「大阪に青学が来た時!」
ちゃう。
喜んじゃアカン。
「その好きは…ちゃうよ」
りんちゃんの言ゔ好ぎは、きっと俺のとちゃうから。
お兄さん、先輩、友達に対する゙好ぎ。
きっと俺も、その一人やから。
「…俺のとは、ちゃうねん」
自然と唇を噛み締めていた。
金「何で?」
金ちゃんは良くわからないと言ったように、深く眉を寄せる。
金「好きに違いなんてあらへんやろ」
何かに、気付かされた気がした。
俺を見る金ちゃんの瞳はあまりにも真っ直ぐで、純粋で。
この瞳は、よう知っとる。
金「白石もりんが大好きなんやから、早よ伝わるとええな!」
満面の笑顔で笑う金ちゃん。
口元を緩め、「ありがとう」とその頭を優しく撫でた。