幸せ日和
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*りんside*
河「それにしても…りんちゃんのファンクラブってあんなにいたんだね」
『ま、まったく知りませんでした』
乾「データによると、゙りんちゃんを遠くからそっと見守り癒される会゙らしい。
本当に密かな活動しかしていないらしいから、野放しにしていたが」
チョコカップケーキを先輩達に渡して、それを食べながら乾先輩の言葉に耳を傾ける。
「美味い」と連呼しながらガツガツ食べる桃城先輩を見て、作って良かったなと思った。
不「じゃあ、どうしてあんなに追っかけ回してたのかな…」
菊「………」
大「どうした?英二」
急に食べていたカップケーキを膝の上に置き、俯く菊丸先輩。
「ごめん…」と呟きしゅんと眉を下げる。
菊「さっきさ、りんから着いたってメール貰ったじゃん。それをクラスの奴に見られちゃって…
まさかこんな騒ぎになるとは思わなくて、」
くるっと私へ向き直り、「本当にごめんね!」と頭を下げた。
そうだったんだ…と納得して、菊丸先輩の手をそっと握る。
顔を上げた先輩は目を丸くしていた。
『…菊丸先輩、助けてくれたじゃないですか。
私はそのことが…凄く嬉しかったんですよ』
『皆、ありがとうございました』と小さく頭を下げてお礼を言った。
息を乱して、駆け付けてくれて。
本当に嬉しかった。
菊「うー…りん!」
『ゎわ…っ』
ガバッと菊丸先輩に抱き付かれて、後ろに倒れそうになる。
皆の笑い声の中、私も口元を緩めて優しくその背中を擦った。
青学の皆と別れて、残すは氷帝学園だけとなった。
練習試合とかでは何回か訪れたことがあったけど、
(やっぱり広い…)
その広大な校舎を目の前にして、ゴクリと息を呑む。
取りあえずテニスコートへ行こうと足を踏み入れた時、
「きゃー忍足く~ん!」
「跡部様ぁぁ!!」
ドドドと言う足音と、女性の高い声が聞こえた。
さっきも似たようなことがあったような…
テニスコートを見ても誰の姿もなく、不思議に思いながら辺りをキョロキョロと見渡す。
校舎の中から、「キャー!」と叫ぶ声や物音が聞こえるから、きっと中にいるんだろうな。
普通には入れないだろうし、どうしよう…
(そうだ!)
大きな木を見て、窓からなら侵入?出来るかもしれないと考えた。
昔、お兄ちゃんの真似をして木登りは何回かしたことはある。
『んっしょ…』
ガシッと太い枝を掴み、腕の力を目一杯使い登り始めた。
動きやすい格好をしてきて良かったなと染々思いながら、空いてる窓に手を掛ける。
バッと顔を覗かせ部屋を見ると、その瞬間視線がぶつかった。
『!跡部さん!!』
跡「りん!?お前何やって…」
やっと知ってる人に会えたーとほっと安心する私と違って、跡部さんは何だか焦ってるように見えた。
ドドドと足音がすぐ近くに聞こえて、跡部さんはチッと舌打ちをする。
跡「りん、来い!」
『へ?…ひゃ!』
ぐいっと跡部さんに手を掴まれ、部屋の中に入ると机の中に引きずり込まれた。
バンッとドアが開けられて、女の人達の声と足音が部屋に入ってくる。
「あれ、いないー」
「絶対生徒会室だと思ったのにー」
そっか、ここは生徒会なんだ…
跡部さんに小声で「ちょっと黙ってろ」と言われたので、口に両手を添えて息を殺す。
女の人達は探し歩いてるみたいだったけど、暫くして諦めたのか、部屋を出て行った。
跡「…行ったか?」
『は、い?多分』
跡部さんはフゥと安堵の息を吐いた。
『あの、今の人達は一体…』
跡「バレンタインデーになるとああなるんだよ。毎年、二日がかりで追い掛け回される」
『………』
た、大変だなぁ…
跡部さんは不愉快だと言わんばかりに深く眉を寄せた。
『じゃあ、他のテニス部の先輩達も同じ目に…?』
跡「そーだな、」
じゃあ、見付けるのは難しそうかな…と思いしゅんと落ち込む。
そんな私とは正反対に、跡部さんは急に口元に手を添え、くく…と笑いを堪え始めた。
跡「まさか木に登ってくるとはな…」
『!あ、あれは仕方なくて…///』
可笑しそうに笑う跡部さんを見て、ムゥと頬を膨らませる。
「何か大事な用か?」と聞かれ、本来の目的を思い出した。
『一日早いけど、バレンタインデーのチョコを皆さんに渡しに来たんです。
沢山貰ってると思うけど、いつもお世話になってますし…』
大きな鞄から取り出すと、跡部さんは一瞬驚いた顔をした。
「ありがとな」と受け取り、ふっと笑う。
『?』
跡「…いや、お前は変わんねぇなと思って」
そう言うと、跡部さんはそっと私の髪に触れて付着した葉っぱを取る。
その表情にドキリと肩が揺れて、急にこの状況が恥ずかしくなってきた。
跡「……りん」
跡部さんの手が頬に移ろうとした時、
『も、もういないですし、早く出ましょう……痛っ』
慌てて立ち上がるとゴンッと鈍い音が響き…机に額を思いっきりぶつけてしまった。