幸せ日和
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*りんside*
名前を呼ばれたので振り返ると、(多分)上級生の女の人が二人いた。
『?えっと、はい』
どうして私のこと知ってるのかな、と不思議に思いつつ頷く。
「やっぱり!私、りんちゃんのファンクラブに入ってるの」
『ふぇ?』
驚いて変な声が出てしまった。
女の人が言うには二、三年生を中心に私のファ、ファンクラブ…があるみたいで、主に写真や遠目で眺める密かな活動をしているらしい。
「実際に話すのは初めてだよね。…うわー本当に可愛い///」
「ね、ね、握手して貰っていい?」
『は、はい…っ』
差し出された手に両手を添えて微笑むと、女の人達は「わぁ」と私の顔を見て嬉しそうに声を上げた。
でも、ファンクラブ何て作って貰える身分でもないのに。
嬉しくも申し訳なくて複雑な気持ちになって来た時、ドドドという足音が聞こえた。
沢山の生徒さん達が…こっちに向かって全力疾走で走って来る。
『え、え、??』
「あ、あいつら最近入ったファンクラブの二年!」
「りんちゃんは皆のもの協定を破るつもりね」
チッと舌打ちして言う二人の声を聞いている間にも、その集団はどんどん接近してくる。
「りんちゃん、逃げて!!」
「ここは私達で食い止めるから!」
『…はい!』
その言葉を合図に、まだ頭がついていけないまま走りだした。
何で、こんなことになったのでしょうか…
「あ、りんちゃん!」
「え!どこどこ??」
「わーりんちゃんだ!」
校舎から顔を覗かせる人達や、擦れ違う人達から一斉に視線を受けて。
何故こんなに騒がれるのかわからないけど、兎に角後ろから物凄い数の足音が迫ってくるので、私も一生懸命に逃げていた。
(助けてお兄ちゃん!!)
ハァハァと荒い息を繰り返しながら無我夢中で走る。
『こ、ここ怖い…!』
追い掛けてくる皆は物凄い形相で、「りんちゃんのチョコー!」と叫んでいた。
もしかして、バレンタインのチョコレートが欲しいのかな。
申し訳ないけど、これは絶対に譲れない。
(先輩達のチョコ、守らなきゃっ!)
大きな鞄を両手で抱え込むようにして、キッと前を向き走るスピードを上げる。
と、突然片腕が目の前に伸びて来てぐいっと引き寄せられた。
部屋の中に連れて行かれ、次第に足音は遠退いて行く。
菊「りん!大丈夫?」
顔を上げると、心配そうな表情をした菊丸先輩がいた。
『せ、先輩…』
何だか凄く安心して、だーと涙が一気に溢れてきて。
菊「わわ、りん…!」
『こ、怖かったです…』
菊丸先輩は「もう大丈夫だかんな」と、よしよしと宥めるように頭を撫でてくれた。
涙を手で拭きながら周りを見渡すと、そこは見慣れたテニス部の部室だった。
走ることに夢中でまったく気付かなかったよ…
菊「それで、今日はどーしたの?」
『えと、先輩達にバレンタインのチョコレートを渡したくて。明日でも良かったんですけど、三年生の先輩達はいないから』
それを聞き、菊丸先輩はやったー!と両手を上げて喜ぶ。
皆にも知らせると言い、電話を掛けてくれた。
数分後、バタバタと言う足音と共に勢い良く扉が開かれた。
桃「りん!大丈夫か!?」
海「物凄い騒ぎだったぞ!」
『桃城先輩、海堂先輩!』
ハァハァと乱れた息を繰り返す先輩達の後ろから、続いて入って来る皆。
大「怪我ないかい?」
不「すぐに助けてあげれなくて、ごめんね…」
『い、いえ!』
不思議なことに、先輩達の姿を見ただけでひどく安心した。
手「良く来てくれたな」
手塚部長の言葉に、またぶわっと涙が溢れそうになる。
そんな私を見て、皆は顔を見合わせ笑った。