幸せ日和
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『(えと、こっちの電車で良いんだよね…?)』
間違ってないか心配なので、もう一度路線図を確認する。
りんは一人、神奈川県に向かっていた。
その理由は…立海の皆にバレンタインデーのチョコレートを渡すため。
一日早いが、当日は土曜日でりんも部活があるので行けない。
なので今日しか渡せる日がないのだ。
普通なら平日は学校だが、今日は幸いにも゙学校創立記念日゙で休み。
『(皆喜んでくれるかな…?)』
今日は立海→青学→氷帝と訪れる予定だ。
りんは皆を想いながら、チョコレートがたくさん入った大きなバッグを大切に抱え込んだ。
電車に揺られながら、変わりゆく窓の外の景色をぼんやりと眺める。
りんの表情はどこか曇っていた。
その原因は、ほんの数日前…
『あはは、金ちゃんらしいですね』
《そやろ。ホンマ世話焼かすわ》
りんは編み物をしながら携帯を耳に当て、白石との会話を楽しんでいた。
元旦のあの日から、白石はたまに連絡をくれるようになった。
気を遣いがちなりんの性格を知ってるからか、電話を掛けるのはいつも白石だが。
《りんちゃんは今何しとるん?》
『ふぇ!?え、えと』
゙あなたにあげるマフラーを編んでまず
そんなこと恥ずかしくて言えないと顔を真っ赤にするりん。
それじゃいつもと同じだと、やがて意を決し口を開けた。
『…し、白石さんにあげるマ《くらのすけぇ、電話まだ終わらへんのー?》
高い、女の声が聞こえた。
《ちょお待って、》
「早くしてやー」と甘えた声音。
紅葉の声でもないし、りんはドクンと大きく鼓動が鳴る。
『(えと…)』
相手は早く電話が終わることを祈ってるし、頭は動転するし、
『あの、じゃあ今日は…お休みなさいっ』
《え?りんちゃ…》
相手の声を最後まで聞かず、無理矢理終わらせてしまった。
それから電話があっても何だか気まずくて出れなくて…
で、今に至る。
『(雪ちゃんにヘタレって言われたけど…本当にそうだ)』
゙あの人は誰?゙なんて、自分は彼女でもないし聞くのは可笑しい。
しゅんと肩を落とし、心の中で大きく溜め息を吐いた。
一方、ここ立海大附属中学校では…
「丸井くーん、私からもチョコあげる!」
「私も!一日早いけど」
女の子達に次々チョコを渡されているのは、甘いもの好きで有名の丸井ブン太。
「さんきゅー」と嬉しそうに笑い受け取れば、周囲はキャーと歓声の声をあげる。
予鈴が鳴り、バタバタと女の子達がクラスへ戻って行くと、後ろからツンツンと背中を突かれた。
仁「モテモテじゃのーブンちゃんは、」
丸「あったりめーだろぃ!バレンタインは俺の為に作られた日だからな」
仁「…そーかそーか」
机の上で山積みになったチョコを、どれから食べようかと目を輝かせる丸井。
仁王はまるで孫を見るように目を細めた。
「こらぁ丸井!授業中に何やってる!」
丸「う…ッ!」
世界史の先生に怒鳴られ、丸井はチョコを喉に詰まらせた。
丸「悪ぃ仁王、半分持っといて!後で分けてやるから」
仁「(いや…俺も大量に貰っとるし)」
取りあえず鞄や机に押し込めて、入り切れないのは仁王に渡した。
だが仁王自身も机から溢れ出しそうな程貰っていたので(←朝来たら既に入っていた)深く溜め息を吐く。
仁「…そーじゃ、本命の子からは貰えたんか?」
不思議に思い尋ねると、丸井の動きはピタッと止まる。
「いや…」と肩を落とす様子からして、はっきり聞かなくともわかった。
丸「(やっぱり、どんなに貰っても…)」
好きな子から貰えなきゃ意味がない。
丸井は窓の外の空を見上げて、りんの姿を思い浮かべた。
ふと視線を落とすと、正門のところに人影が見えた。
目を細めてその姿をじっと見つめ、まさかと目をごしごし擦る。
丸「…に、お、りんがいる…」
仁「は?」
想い過ぎて幻覚でも見てるのかと思ったが、窓に目を向けると、
遠慮がちに顔を覗かせ、キョロキョロと首を動かしているのは紛れもなく彼女で。
仁「…本当じゃ」
丸「……先生、チョコ食べ過ぎてお腹痛いんで、保健室行って来ます!!」
ガタンと立ち上がり、丸井は先生の許可を貰わずにして教室を出て行く。
クラスメートの笑い声を背中に受けながら、仁王も付き添いだと伝え続いて出て行った。