初日の出
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*りんside*
皆と別れて、一緒に行くと言う碧くんと手を繋ぎ丘を目指していた。
思ったより坂道が急で、一月の冷たい風が容赦なく肌を掠める。
『碧くん、一回家に帰ってから私一人で来れるから…』
必死に登る碧くんを見て、心配して語り掛ける。
この先の丘にある言い伝え。
゙元旦に、好きな人と一緒に日の出を見ると幸せになれる゙
クラスの女の子達が話してるのを聞いて、どうしても行きたくなって。
私の我が儘で、碧くんまで振り回す訳にはいかない。
碧「…俺はこのくらい平気だ」
「それに」と息を切らしながら言葉を繋げる碧くん。
碧「りんを守るのが…俺の使命だから、」
そう言う碧くんは、すごくかっこ良く見えた。
『…ありがとう』
微笑んで、私より一回り小さな手を強く握った。
(碧くん、大きくなったら絶対素敵な人になるだろうな)
未来の彼の姿を想像しながら、丘を目指して歩き続けた。
『……着いた、』
ハァと息を切らして前を見つめる。
そこには私達以外の姿はなく…まだ薄暗いけど、陽が登った後の丘からの景色が想像出来た。
『座って待ってよっか』
碧「……ん…」
コクンと頷いた碧くんの手を引き、近くのベンチに腰掛ける。
暫くそうしていたら、ポスッと体を傾けた碧くんが寄り掛かってきた。
(…限界だったんだ)
スーと寝息を立てて眠る顔を見つめ、何だか罪悪感を感じた。
『ごめんね…』と囁き碧くんの頬にそっと口付ける。
その寝顔を見ていたら私もだんだん眠くなってきて、眠気を払うように慌てて首を振った。
「…りん、」
『…ん、』
「りん、起きろ」
『お、にいちゃ…』
お兄ちゃんに名前を呼ばれた気がして、パチッと目を開ける。
辺りを見渡すがその姿はなく、気のせいかと肩を竦めた。
ふと前を見れば、
『……わぁー…』
ちょうど陽が登って来て、薄暗い周りを徐々に光が照らしていく場面で。
思わず立ち上がりぎりぎりまで進むと、その景色をしっかりと瞳に焼き付けた。
゙好きな人と一緒に゙
自然と、あの人の姿を思い浮かべていた。
傍にはいないけど、
でも、
一緒に、見たい。
そう強く思った時には、携帯でその景色を撮っていた。
使い方を教えてくれた菜々子さんに感謝しつつ、その写真をメールに張り付ける。
慣れない手付きで文章を打って、震える手で思い切って送信ボタンを押した。
(ど、どうしよ…っ)
本当に送ってしまったと今更緊張が押し寄せてきた。
ドキドキと高鳴る胸を押さえ暫く携帯を見つめていたが、
『…来ない、よね』
良く考えてみればまだ朝も早いし、起きてないかもしれない。
それに突然私からメールが来たら、びっくりするよね。
『…………』
もしかしたらとんでもなく迷惑なことをしてしまったのかな、と考えがマイナスな方向に進み、気持ちがどんどん沈んできた時…
~♪~♪
突然鳴り響く着信音。
メールに設定した音じゃないから…電話……
電話!?
あわあわと慌てて携帯を見ると、やっぱりその名前ば白石さん゙で。
ゴクリと息を呑み、ギュッと目を瞑りながらボタンを押した。
『…も、もしもし』
《りんちゃん?》
ドキンと鼓動が鳴る。
『あ、明けましておめでとうございます…///』
そう口から零れると、白石さんは「ははっ」と笑った。
《おめでとう、今年もよろしゅうな》
『こちらこそよろしくお願いします!』と元気良く言えば、また小さな笑い声が返ってくる。
ちょっと前に会ったばっかりなのに、その声を聞くのはすごく久しぶりな気がした。
《携帯、買うたんやな》
『はい、あの、誕生日プレゼントに貰って…!』
ドキドキ、ドキドキと鼓動が忙しなく鳴る。
直接話すより、電話の方がずっとずっと緊張するんだなと学んだ。
ふと、ある疑問が頭を過る。
『あの、何で私の携帯の番号…』
年賀状には書いたけど、まさかもう届いたのかな?
《ああ、雪ちゃんに聞いてな》
『雪ちゃんに?』
そう聞き返した後、少しの間が合って、
《りんちゃんからメール貰って、声聞きたなってもーて……ついな》
白石さんの声は、いつもより低く感じて。
何て言ったらいいのかわからなくて、一生懸命に言葉を探す。
『えと、写真なんですけど…』
《ああ、綺麗やな。何処から撮ったん?》
『近所の神社の丘からなんです。好きな人と一緒に見ると幸せになれると言う言い伝えがあって…』
そこまで言ってしまってから、ハッと気付き慌てて口を押さえた。
《…………》
『あの、えっと///』
でも嘘は付いてないような……
カァァと一人顔を赤く染めていると、
《そっか。青学の皆とかとおるん?》
『えっと…はい』
返って来た言葉にホッと安堵した。
『し、白石さんは今何してるんですか?』
話題を返る為、慌てて違う話をしようとする。
《毎年な、謙也と大晦日から泊まりがけで紅葉の家に集まっとるんやけど。
今年は人数増えてもーて…無理矢理買い出しに行かされた帰り》
『そうなんですか…』
大変そうだなと思うと同時に、その楽しそうな光景を頭に浮かべた。
四天宝寺の皆って本当に仲が良くて、何だか羨ましくもなる。
ふと、今日のお参りで祈ったことを思い出した。
頑張らなくちゃ
勇気…出さなくちゃ
『あの…っ』
ギュッと拳を握り締めて、ゆっくり昇る陽を瞳に映す。
『もし、迷惑じゃなかったら……これからも電話していいでしょうか』
自分でも、すごく図々しいことを言ってるとわかってる。
『あの、白石さんがすごく暇な時でいいんです!本当に何もすることがない時で…っ』
『駄目でしょうか…?』と不安に思い問い掛ける。
暫く何も言われないから、思わず泣きそうになってきた。
《うん…ええよ》
聞こえる白石さんの声は優しかった。
《駄目な訳あらへん。…俺は、りんちゃんが好きなんやから》
ドキンと、今日一番に大きく鼓動が鳴った。
白石さんは、ちゃんと言ってくれるのに。
それに比べて、私は
『…も……』
《ん?》
『……私も、白石さんのこと「嫌いだ!!」
いつ起きたのか、碧くんがぴょんとジャンプして私の手から携帯を奪い取り、大きく叫んでいた。
『あ、碧くん?』と突然のことに目を丸くする。
碧「お前嫌いだ!男なら正々堂々と言うんもんだ!!それでも武士なのか!」
いつ武士になったんだろうと思いながら、慌てて碧くんを止めようとするけど携帯を返して貰えない。
碧「さっき俺はりんにちゅーされたんだからなっ」
『あ、碧くん…っ(起きてたの?)』
碧くんは携帯を自分から離して、スゥと息を吸った後口を大きく開けた。
碧「りんを嫁に貰うのは俺だかんな。お前は諦めるんだな!じゃーな」
ブッ
ツーツー
そう勢い良く叫び、電話を切った。
碧くんは満足したように腰に手を当てて、くるっと振り向く。
碧「りん、敵は退治したからなっ安心していーぞ!!」
そう言って、碧くんはニッコリと可愛らしく微笑んだ。
゙好きな人に、この気持ちを伝えられますように゙
途切れた携帯を見つめて、本当にいつになるんだろう…と途方に暮れる。
(謝らなきゃ…)
だけど、少し嬉しいのは
あの人に、また電話をする理由が出来たから。
あとがき&おまけ→