贈り物
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その日は雪が降っていて、嬉しくて嬉しくて、私はお兄ちゃんの手を引いていた。
『お兄ちゃん、早く早く!』
リョ「何だよそんな急いで…」
家の近くの公園に雪だるまを作って置いておいた。
早くお兄ちゃんに見せたくて、見せたくて。
だけど、
『あれ…』
確かに作ったのに、そこには崩れた雪だるまがあった。
遠くでは雪合戦をしている男の子達がいて、その雪が当たったのだと悟った。
『お、お兄ちゃんに見せようと思ったのに……』
思わず泣き出しそうになった時、お兄ちゃんが突然しゃがみ雪を集め出した。
目を丸くしながら見ていると、それは可愛らしいウサギの形をした雪だるまになった。
リョ「りんにあげる」
『え…?』
リョ「…誕生日プレゼント」
そう呟くと、お兄ちゃんは照れたように横を向いた。
『…ありがとう!!』
『私もお兄ちゃんにあげる!』とお返しに雪を集め始める。
せっせとそれに没頭していると、遠くから名前を呼ばれた。
倫「りん、リョーマ、そろそろお家でパーティーしましょ」
リョ「お母さん、」
『うん!』
お兄ちゃんが作った雪だるまの隣に並べて、皆で手を繋いで帰った。
家族で過ごせるその日が、好きだった。
お兄ちゃんと一緒にお祝いして貰えることが、すごく、嬉しかったの。
『…よし、完成』
手を止め小さく息を吐き、完成したそれを眺め頬を緩めた。
冬になると極度に編み物をしたくなる私は、今年も当然のように編んでいた。
お兄ちゃんに誕生日プレゼントをあげたくて、マフラーを編むことにした。
(アメリカの冬は寒いし…)
真っ白なマフラーの網目をチェックしながら、お兄ちゃんの姿を想像した。
今日送れば、24日には着くはず。
と、ふと手を伸ばし深緑色の毛糸に触れる。
白い毛糸とは別に、実はもう一つ買っていた。
『…あ、編むだけ、』
ある人を想像したら頬に熱が溜まってゆく。
勢いで買ってしまったけど、ちゃんとあげられる自信がないし、喜んでくれるかもわからない。
でも、いつもお世話になってるし、そのお礼に…
(うん、ほんのお礼だよ!)
自分に強く言い聞かせ、一人で顔を縦に振り頷く。
編むのに夢中になっていると、トントンと部屋の戸がノックされた。
菜「りんちゃん、雪ちゃんから電話よ」
『雪ちゃんから?』
菜々子さんに受話器を渡され耳に当てると、雪ちゃんの弾んだ声が聞こえた。
『お母さんあのね、24日のことなんだけど…』
倫「ん?」
『友達と遊びに行っていい?』
夕食の支度をしてるお母さんを不安そうに見上げる。
雪ちゃんはその日一緒に遊ぼうと言ってくれた。
でも毎年誕生日は家族でパーティーをしているから、承諾を得たくて。
倫「構わないけど…お父さんにもちゃんと言うのよ」
『うん!ありがとう』
南「俺がどうしたって?」
縁側で寝そべりながら新聞を読んでいたお父さんが、後ろから顔を覗かせた。
『あのね、24日なんだけど、友達と遊びに行きたいんだ』
南「…!」
何だか悪い気がして『駄目かな…』と不安そうに見上げると、固まっていたお父さんはコホンと咳払いをした。
南「い、良いに決まってるだろーが。なぁ、母さん?」
倫「そうね、りんももう中学生だし」
『ありがとう!』
微笑んでお礼を言い、早速雪ちゃんに報告するため早足で自室に戻る。
だから私がいなくなった後、
南「…ついにこの日が来たか」
倫「まだ友達って言ってるだけましじゃない」
南「友達じゃなくなる時って何だ!?」
慌てるお父さんにお母さんが深く溜め息を吐いていたことなんて、まったく気付かなかった。