招待Ⅱ
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良く晴れた日曜日。
普通の私立中学校より少し遅れて、今日文化祭をやる学校が一つ。
聖華女学院―…東京都では有名なお嬢様学校である。
『…ゆ、雪ちゃん、どうしても着なきゃ駄目…?』
雪「当然!りんの為に作ったようなもんなんだから!」
『うう…』
さっきから同じような会話が一年のクラスで繰り広げられていた。
クラスメートの女の子達は喜んで既に衣装を着ているが、りんだけは用意された物を見て戸惑っていた。
恥ずかしそうに頬を赤く染めるりんを見て、衣装を作った雪はハァと大きな溜め息を吐く。
雪「…りんに似合うと思って頑張ったのに…」
『雪ちゃん…』
しゅんと悲しそうに眉を下げる雪にりんは胸が痛み、
『そうだよね…折角作ってくれたんだもん』
『ごめんね』と呟きながら、まだ躊躇いつつも着替え始めるりん。
雪「(りんはこうゆう顔に弱いのよね)」
心優しい彼女だから、悲しんでいる顔は見たくないんだろう。
雪はりんの背後でニヤリと妖しく笑っていた。
菊「うわぁ~人がいっぱいいるにゃ~!」
正門から入るなり発した第一声は、この言葉だった。
伝統ある学校と言うことで訪れる人は年齢層が幅広く、兎に角たくさんの人々で賑わっていた。
今到着したばかりの彼らも、遥かに予想を上回る人の数に圧倒されていた。
海「想像以上っスね…」
不「ちゃんとりんちゃんに会えるかな?」
寧ろちゃんと校舎に辿り着けるのかと不安になってきた二人。
だが、そんなのとは無縁の人もいて…
桃「うおーすげぇ!英二先輩、あっちの校舎で舞踏会やってるそうっスよ」
菊「マジ!?飛び入り参加する?」
キラキラと幼い子供のように目を輝かせる桃城と菊丸。
目に映る全てに感動してるようだった。
海「はっお前踊れんのか」
桃「!んなの当たりめぇだろ」
不「文化祭で舞踏会って…」
二人が言い合いをしてる姿を見つめながら、不二だけは冷静に呟いた。
菊「今日大石達も来れれば良かったのになー」
菊丸は残念そうに嘆く。
春からドイツへ旅立つ為、何かと準備で忙しい手塚。
大石は医者と言う夢を持ち、外部の高校を受験するので、勉学に励んでいた。
河村や乾も用事があって今日は来ていない。
桃「てゆーか、りんって何組でしたっけ?」
いつの間に出店で買ったのか、焼きトウモロコシや焼きそばを頬いっぱいに詰めて、桃城は首を傾げる。
確か…と不二が正門で渡されたパンフレットに目を通していると、自分達の前をドドドと言う足音と共に何かが通り過ぎた。
「あの!ぜひ家庭科部へ!」
「うちのクラス、今映画やってます!」
「二階でカフェやってます!」
宣伝用のチラシを配っていた女子生徒が、一ヶ所に集まり声を掛け始めた。
菊「ほぇ?何何?」
海「芸能人が誰かか?」
首を傾げながら見つめていると、視界に飛び込んできた人物の姿に目を疑った。
跡「うるせぇ!俺様に気安く話しかけんじゃねぇ」
忍「(ったく跡部は…)
堪忍な、後で時間あったら行かせてもらうわ」
苛つく跡部とは正反対に忍足は笑顔で対応していた。
芥「あー!不二!」
岳「うぉ!?青学!!」
別の方角から声が聞こえたので一斉に振り向くと、出店で買ったらしきものを両手いっぱいに持ったジローと岳人がいた。
それに気付き、跡部と忍足は女子の群れを切り抜けるとぽかんとする皆の元へ向かって来る。
跡「あーん?久しぶりじゃねーの」
海「跡部さん達も来てたんスか」
忍「りんちゃんに誘われてなぁ」
桃「偶然っスね~」
忍足はモグモグと口に焼きそばを含みながら話す桃城を見てから、同じように食べることに夢中になっているジローや岳人に視線を移す。
似てるなぁと思わず口元を緩めると、岳人にキモいと言い切られた。
芥「ねーりんちゃんって何組?」
不「…君達も知らないんだね」
人数が増えても騒がしくなっただけで、結局何も変わらないと不二は一人溜め息を吐いた。