招待Ⅰ
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テニスコートの傍にば海林館゙と呼ばれる建物があって、運動部の出し物はここで行われていた。
『すごい…』
りんは目の前の光景にポカンと立ち尽くす。
両サイドは色々な出店で溢れていて、提灯が飾られ…まるで縁日のようだった。
沢山の人々で賑わい、店の人は皆浴衣を着ていた。
『お祭りだぁ』
こう言った雰囲気が大好きなりんはキラキラと目を輝かせる。
感動しながらも赤也の後について行くと、綿飴屋の前で立ち止まった。
丸「赤也おせーぞ!何処さぼって…」
前髪をピンで上げ、黒の浴衣に赤い色の帯を付けた丸井が顔を覗かせ、赤也の姿を見るなり眉を寄せた。
が、隣にいるりんに気付き押し黙る。
『丸井先輩、お久しぶりです!』
丸「あ、ああ…久しぶり」
ふわりと笑うりんに何処かぎこちない笑みで返す。
そんな丸井を見て赤也が首を傾げていると、同じく浴衣を着た仁王と柳生が店の中から出て来た。
柳生「りんさん、お久しぶりですね」
仁「良く来たのぅ」
『はい!お久しぶりです』
ペコリと頭を下げるりん。
ようやく皆に会えたので嬉しくて思わず笑顔になる。
『すごいですね、縁日なんて』
柳生「運動部が仕切ってやってるんですよ。テニス部は焼きそばと、綿飴を売ってるんです」
仁「綿飴もどうしてもやりたいって譲らんくて…なぁ、ブンちゃん?」
ニヤッと笑い仁王は丸井へと視線を映す。
「ブンちゃん言うな!」と反発しつつ、その顔は微かに赤かった。
『私、綿飴大好きです!』
『嬉しい』とニコニコ笑うりんを見て、更に顔を赤く染め「そっか」と微笑む。
赤「丸井先輩、知ってて綿飴屋にしたんスよね?」
仁「素直じゃないのぅ」
柳生「そっとしておきましょう…」
渡された綿飴を美味しそうに食べるりんを、いとおしそうに見つめる丸井。
そんな二人を見守るように小声で話していた。
柳「一通り見て来たぞ」
『柳さん、こんにちは』
柳「ああ、来ていたのか」
柳とも挨拶を済ませると、深刻な雰囲気になった。
丸「…奴ら、今年も一緒か?」
柳「みたいだ。場所的にもあっちの方が人通りがいい」
赤「チッまたやられた!」
『?』
柳の話を聞き悔しそうに嘆く皆にりんは首を傾げる。
と、その時後ろから人の気配がした。
「どーも、テニス部の先輩方」
仁「…鷺谷、」
鷺谷と呼ばれた男は、前髪を掻き上げ見下しているかのような視線を向けた。
鷺「今年も被ってしまいましたねぇ、焼きそば」
赤「なっテメェわざとだろ!」
鷺「やだなぁ、切原くん。そんなことするわけないだろ。寧ろ…」
「そっちが真似してるんじゃないの?」と軽々しく言い放つ鷺谷に赤也は攻め寄ろうとするが、柳に止められる。
柳「…お互い繁盛するといいな」
鷺「ええ。先輩も頑張ってください」
鷺谷は小さく笑うと、ふと柳の後ろに視線を向けた。
ゆっくり近付いて来る鷺谷にりんは身構えると、
鷺「君、名前は?良かったら俺らの店にも来ない?」
『え、えと「悪いのぅ、この子は俺らの知り合いなんじゃ」
りんはぐいっと仁王に引き寄せられ、それを見た丸井も店から飛び出し「そーゆうこと」と鷺谷を睨み付けた。
一瞬緊迫した雰囲気になったが、やがて鷺谷は背中を向け去って行った。
りんはホッと一安心すると同時に、すぐさまある疑問が頭を過る。
『あの、被ってるって…?』
柳生「彼は二年生にしてサッカー部のキャプテンなんです。そのサッカー部も焼きそば屋をやってるらしくて、」
丸「去年俺らが射的屋やった時も、あいつらと一緒だったんだよ」
『…いけないんですか?』
りんが首を傾げると、柳は静かに頷いた。
柳「うちの文化祭は、部活部門、個人部門、クラス部門とそれぞれ賞が付けられているんだ」
赤「で、その賞を貰うと…」
丸「一ヶ月学食特別メニューが食えるんだぜぃ!」
『すごいですね』と一緒になって目を輝かせるりんとは裏腹に、丸井と赤也以外は皆何処か冷めていた。
それよりも、鷺谷自身が気に入らないのだと言う。
赤「去年もお客全部持ってかれたんスよね」
柳生「彼は…幸村くんを毛嫌いしてますからね」
『え?』
柳生が言うには、鷺谷は幸村のファンクラブに彼の悪口を吹き込んだり、また美化委員の幸村よりも早く、花壇に水を毎回与えているらしい。
仁「…それだけ聞くと小学生みたいじゃな」
確かにと全員深く頷くが、りんだけは俯いて何か考えていた。
顔を上げると真剣な表情で、
『私も、お手伝いさせてください』
真っ直ぐな瞳で皆を見据える。
個人的な感情でテニス部と競おうとすることも、真似だと言われたことも良く思わないけれど、
やっぱり一番の理由は…
『皆さんと一緒に、頑張りたいです』
ふわり微笑むりん。
その純粋な決意に皆もやる気が沸き上がってきて、顔を見合わせ大きく頷いた。
赤「よっしゃーやるか!」
『はい!』
りんもまた笑顔で頷いたのだった。