恋心
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―りん、今すぐ四天宝寺中に来てくれ
手塚からの電話を受けて、りんは紅葉と別れ必死で走り四天宝寺中を目指していた。
『(桃城先輩と海堂先輩…大丈夫かな)』
二人なら大丈夫だと信じてるが陽はもう沈み掛けていて、りんは不安になってきた。
それに二人だけじゃなく、一、二年生のことも気掛かりだった。
『(…気付いてくれるといいな)』
青学は、三年生の先輩達が卒業しても何も変わらない。
大事な絆があるから。
マネージャーとして何が出来るんだろうと、りんは走りながら考え続けた。
四天宝寺中に着き、乱れた息を調えながら首を動かしていると、
『(ボールの音…?)』
パァンと鳴り響くボールの音をたどり足を運ぶと、テニスコートに人の気配があった。
荒「…っお願いします!」
堀「先輩ファイトー!」
荒「おう!任せろ!」
石田の打つ打球を、荒井は必死で打ち返そうとしていた。
謙「泣かせるやないか。練習着いていく為に、特訓やなんて」
カツオ「皆で話し合って決めたんで。桃ちゃん先輩や海堂先輩に頼ってばっかりなんて、恥ずかしいじゃないですか」
謙「まったく、何処までもチーム愛なんやな」
財「ま、それが青学の精神っちゅーことやないですか」
四天宝寺の皆は、コートの周りを囲み見守っていた。
小「バンダナくんと桃尻くんをビックリさせちゃいましょ~!」
「「「おー!!」」」
銀「手加減なしや、行くぞ!」
荒「こ、こい!」
その光景を黙って見ていたりんは、そっと胸に手を当てた。
『(…皆、)』
青学のこういうところが大好きなんだと、改めて感じた。
ふと顔を動かすと、桃城と海堂も自分と同じようにそっとコートを見ていた。
『(もう、大丈夫だよね)』
りんは自然と口元を緩め、電話を貰った手塚がいないことに気付き、探そうとこの場を離れた。
手「白石、すまなかったな。わざわざメンバーを集めてもらって、」
白「いやいや。困った時はお互い様やろ」
手「感謝している。お陰で、あいつらも大切なことに気付くことが出来るだろう」
一方白石と手塚は、離れたところからコートを見守っていた。
白「…りんちゃんにも伝えたんか?」
手「ああ、四天宝寺中に来てくれと…な」
白「何やすぐ飛んで来そうやなぁ」
「あんな良いマネージャーおらへんで」と小さく微笑する白石。
手塚も微かに口元を緩め、同意するように頷く。
手「りんには、本当に感謝している。卒業しても青学をサポートして欲しい」
手塚を横目で見ていた白石は、前を向き天を仰いだ。
やがて、ゆっくり口を開く。
白「俺は…手塚くんになりたいな」
固い絆で結ばれている二人。
部長とマネージャーという間柄だけど、嫌われることも、関係が崩れることもない。
白「(…ずっと傍におられる)」
自分と彼女の関係は何もない。
ただ、片想いしてるだけ。
手塚は暫く何も言わず、自分も天を見上げた。
手「…俺は、白石になりたい」
低く呟いた言葉は夜空に消えて、
静かな周りは、届かぬ想いを物語っているようだった。