すれ違い
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*りんside*
『おいしい…』
白石さんが焼いてくれたお好み焼きを一口食べて、思わず零れた言葉。
白「良かった」
嬉しそうに笑った白石さんを真っ正面から直視してしまい、心臓がドキンと跳ね上がった。
『///み、皆さんは何してたんですか?』
赤くなった顔を振るい、慌てて話しかける。
ユ「小春とデートやと思うたのに…まさかあいつらがおるなんて…」
『あいつら?』
小「桃尻くんとバンダナくんよ。一緒にお笑い見とったの」
そうだったんだ、と納得していると、小春さんが「そうや」と少し眉を下げて呟く。
小「あんまし気落ちしないでって二人に伝えてや」
『え?』
小春さんの話によると、三年生達はもう引退するようなことを二人に言ったら、元気がなくなってしまったらしい。
(そっか、引退…)
それを考えたら、私も寂しくなりしゅんと落ち込んだ。
この合宿が終わったら、きっと三年生の先輩達は引退する。
仕方がないけど…やっぱり寂しい。
謙「あー、俺と財前はCDショップにおったんやで!」
財「何が楽しくて、休日も謙也さんとおらなくちゃなんないんスか…」
謙「何やと!?」
手に顎を乗せて言う財前さんに向かって指を差し、「大体お前はなぁ」とブツブツ言い始める謙也さん。
その様子を見ながら仲良いなぁと思っていると、目の前に水が差し出された。
顔を上げれば、ニッコリ笑う紅葉さん。
紅「ここな、うちのオトンがやっとる店やねん」
「な!」とカウンターの方に言う紅葉さんに合わせ顔の向きを変えると、お父さん?がペコリと頭を下げたので、私も慌てて頭を下げた。
紅「こいつらよう来るんやでー…部活帰りとか」
謙「売り上げに貢献しとるんやしええやんか」
紅「はぁ、でも見飽きたわ。特に謙也」
ハッキリと言い切る紅葉さんに、「俺もっスわ」と同意して頷く財前さん。
しゅんと落ち込んだ謙也さんを見てあわあわと混乱し、
『えと、私は謙也さんといて楽しいですよ』
謙「!りんちゃん…」
バッと涙目の顔を上げた謙也さんに、優しく微笑む。
だけど、見る見るうちにその表情は青く染まっていった。
謙「(し、白石が怖い…)」
私の後ろを見て謙也さんが何でガタガタ震えてるのかわからず、ただ首を傾げた。
紅「あ、お客さんや」
「いらっしゃいませー!」と入って来たお客さんの元へ行く紅葉さん。
その姿を見つめて、『綺麗な人ですね』と思わず口に出してしまった。
白「そーか?」
謙「まぁ、見た目はな」
ユ「中身は男みたいやで」
『そうなんですか?』
紅葉さんはサラサラの黒髪で、ショートヘアだけどすごく女性らしい雰囲気だ。
顔も綺麗で、何て言うか…着物がすごく似合いそう。
それに、
(む、胸も大きいし…)
チラリと盗み見る。
自分のとを比べたら、しゅんと落ち込んでしまった。
白「紅葉は俺と謙也の幼なじみやねん」
瞬間、チクッと胸が内面から針で刺されたような気がした。
゙紅葉゙
『そ、そうなんですか』
ただ、呼び捨てで呼んだだけ。
それだけなのに。
その時、ガッシャーンとガラスの割れる音と、紅葉さんの小さな悲鳴が響いた。
『大丈夫ですか!?』
紅「あ、平気平気。お客さん失礼しました」
力のない笑みを向け、紅葉さんは割れたコップを拾おうとする。
と、白石さんがその手を掴んだ。
白「ケガしとるやんか。手当てせな」
紅「いや、このくらい平気や。舐めとけば治るし」
白「アカン」
ぐいっと手を引き、白石さんは中にいる紅葉さんのお父さんに一声掛けると、お店の奥に消えていった。
その光景を見て、またズキンと胸が痛くなる。
(…どうして?)
何でこんなに痛いの?
白石さんは優しいから、こんなのはよくあること。
なのに、
金「…りん?どっか痛いんか?」
俯く私を見て、心配そうに問い掛ける金ちゃん。
『何でもないよ』と慌てて首を振ったけど、まだ胸は痛くて。
紅「まったく…蔵は大げさやねんて」
お店に戻って来た紅葉さんの指には、丁寧に絆創膏が巻かれていた。
白「このくらい当たり前や」
紅「ホンマ、オカンみたいやな」
白「せめてお兄さんと呼べ」
言い合いしながらも、代わりにコップに水を注ぐ白石さん。
「蔵ノ介くんは優しいなぁ。早く家を継いでくれると助かるんやけど」
紅「オ、オトン何言うてんねん!」
白「ははっ」
「考えときますわ」と笑う白石さんに、紅葉さんは少し赤くなりながら抗議する。
ズキン
ズキン
(…嫌…)
私は、白石さんのそんな笑顔を知らない。
見たくなくて、見たくないのに、
『わ、私…』
ガタンと立ち上がり、震える声を押さえて小さく呟く。
『用事、思い出したので…帰らなくちゃ…すみません』
金「え?りん帰っちゃうん?」
『ごちそうさまでした』とテーブルにお金を置き、早足でお店を出る。
自然と駆け足になった時、「りんちゃん!」と名前を呼ばれて腕を掴まれた。
『や…っ』
その手を勢い良く払ってしまってから、ハッと気付いた。
『ご、ごめんなさい…』
白「……いや、」
白石さんは何か言いたそうだったけど、何も言わず眉を下げただけだった。
『あの…せ、先輩達が心配だから、』
白「なら送ってく『大丈夫です!』
一人になりたくて、
ここにいたら、どんどん嫌な子になりそうで、
『本当に、大丈夫ですから…』
強い口調で言ったはずなのに、最後は弱々しくなってしまった。
暫く静寂が続き、
白「…デートやと思って、楽しかったんは俺だけか」
顔を上げた時、白石さんは悲しそうに笑っていた。
違うと言おうとすれば、「気ぃつけてな」と頭を撫でられ、くるっと背中を向けて行ってしまった。
帰り道思い出すのは、全部同じ人。
―…俺だけやと、嫌?
―わ、私は大勢の方が賑やかで楽しいですよ
―ホンマに…?
―はい!
そういえば白石さんは、待ち合わせの30分前には来てた。
なのに、あんなに寂しそうな顔させて、傷つけて…
最低だ。
『…痛いよ、』
慣れないヒールのせいか、靴を脱ぐと赤く腫れ上がっていた。
足よりも、胸の方がずっと痛くて、
治す薬があるなら、本当に欲しいと思った。