すれ違い
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*りんside*
「あの、今暇ですか?」
「良かったら私達と遊びません?」
目の前で繰り広げられる光景を、呆然と見つめること数分。
(…えっと、)
30分は早く待ち合わせ場所に着いてしまったはずなのに、白石さんは既に来ていて。
声を掛けようと近付いた時、二人の女の人が先に話し掛けて、タイミングを逃してしまった。
それで…現在。
白「あー…悪いけど、これから出掛けんねん」
白石さんが薄らと苦笑しつつ断わったら、女の人達は顔を見合わせる。
「笑った顔もかっこいいですねー」と語尾にハートマークを付けるように腕を絡めさせた。
白「(…話通じひんな)」
白石さんが迷惑そうに眉を寄せた時、私とバッチリ目が合った。
一瞬それが見開かれたけど、女の人の腕を払いスタスタとこちらに近付いて来る。
白「この子と出掛けんねん」
ニッコリ笑うと、白石さんは私の手を取り「ほなりんちゃん行こ」と歩き出した。
女の人達の鋭い視線を背中に感じながら慌てて連いて行く。
「やっぱ彼女可愛いかー」
「でもさぁ、全然ガキじゃん」
チクリと、針が刺さったように胸が痛む。
(ガキ……、)
白石さんの服装に目を向けると、細身のジーンズに白を基調としたTシャツ、上に黒いシャツを羽織っていて、肘あたりまで袖を捲って着ている。
シンプルだけどモノトーンが良く似合っていた。
やっぱり私は、どんなに着飾っても大人っぽくはなれないんだ。
さっきのお姉さん達の方がよっぽど、
(お似合い…)
ふと、視線をたどり手が握られていることにようやく気付く。
『!あの、手…///』
白「ああ…ごめん」
白石さんは歩く足を止め手を元に戻した。
くるっと振り向き、私と視線を合わせる。
暫く何も言わず見つめられ、ハッと気付いた。
『や、やっぱり変ですよね…!』
髪もおろしたりして、少しヒールが高い靴なんかも履いてしまって。
きっと変に思われるに違いない。
白「いや…よう似合っとるよ」
「かわええ」とふわり微笑まれて、カァァと顔が一気に赤く染まる。
心臓の音がドキドキとうるさくてなかなか声が出ない。
やがてコクンと頷くと、頭を撫でられ更に鼓動が早くなる。
『あの、皆さんは?』
恥ずかしさを隠すように問いかけると、白石さんはキョトンと目を丸くした。
白「皆おらへんけど、」
『ぇえ!?』
思わず声を上げてしまった。
(だ、だってそれって…)
―もし二人っきりなら、それはデートだよ!
雪ちゃんがくれた本に書いてあったことを思い出したら、顔がまた熱くなっていった。
あわあわと慌てる私を見て、白石さんは少し寂しそうな表情になる。
白「…俺だけやと、嫌?」
そう言って、私の返事をじっと待つ。
違うと言うようにブンブンと首を横に振った。
『…嫌じゃないです』
本当に思ったから、小さく呟いた。
きっと今顔が赤いだろう。
嬉しそうに微笑んだ白石さんにまたドキンと鼓動が鳴り、何だかうまく笑えなかった。
近いと言うこともあって、まずは通天閣に行くことにした。
昨日の夜布団に入りながら大阪観光のパンフレットを見て、丁度行ってみたいなって思ってた。
「天に通じる高い建物」という意味だと白石さんに教えてもらったり。
そうしているうちに、あっという間に目的地に着いた。
5階は展望台となっていて、窓から観ても大阪の町を一望することが出来た。
『わぁー…すごい!』
あまりの広さに感動しっぱなしの私を見て、白石さんは小さく笑う。
白「望遠鏡で観る?」
『はい!』
小銭を入れて、ワクワクと体を弾ませながら覗けば…
『わぁー…』
窓からより更に景色が近く観えて、すごいすごいと再び感動した。
もっとたくさん色んな場所が見たくて、向きを変えていく。
『あ、あれ大阪城ですか?』
白「せやな。後で行ってみる?」
『行きたいです!』
そう元気良く言えば、白石さんは「了解」と笑いながら頷いてくれた。