大阪合宿
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*りんside*
一日目の練習を終え、四天宝寺が手配してくれていた宿で夕食を取っていた。
「明日さ、りんちゃんどうすんだろな」
「どうって?」
「誰かと出掛けるのかなってことだよ」
二年生の先輩達は一ヶ所に集まって、何かをヒソヒソと話しているみたい。
特に気に掛けることもなく、私は先輩達のコップに飲み物を注いでいく。
「俺、誘おうかな」
「チャレンジャーだなお前…」
一人の先輩が突然立ち上がり、こっちに向かって歩いて来た。
「りんちゃ「りん、ちょっといいか」
真剣な表情をした手塚部長に呼ばれ、不思議に思いつつコクンと頷いた。
手「すまない、何か用事だったのか?」
「い、いえ!!」
先輩は席に戻り何故だかしゅんと肩を落としていた。
静かに部屋を出ていく部長の後を慌てて追う。
着いたのは月が良く見える縁側で、手塚部長はゆっくりと視線を私に向けた。
手「…明日のことだが、」
そういえば、朝も何か言おうとしていた。
ちゃんと聞いてあげれなかったことに申し訳ない気持ちになった。
手「一緒に、図書館に行かないか」
『え?』
思いがけない言葉に目を丸くする。
思わずじっと見てしまっていたら、コホンと咳払いをして手塚部長は視線を逸らした。
手「…りんさえ良ければなんだが、」
『えと、』
明日は白石さんとの約束がある。
だから、
『ごめんなさい。その、明日は白石さんに大阪案内をして貰うことになってて…』
そう言うと、手塚部長の顔が一瞬曇った気がした。
(気のせい…かな?)
手「そうか…すまなかった」
『いえ!こちらこそ、』
戻るかと呟いた手塚部長に頷き、部屋へと歩き出す。
その背中は悲しそうに見えて、酷く罪悪感が残った。
次の日、三年生の先輩達は朝食のお好み焼きを食べに出掛けに行ってしまった。
桃城先輩はまだ寝ていて、海堂先輩は一人ランニングをしに行った。
私も誘われたけど、何だか緊張してあまり食べたくなかったので断ってしまった。
『何着てこうかな…』
部屋の隅っこに座り込み、頭を悩ませること30分。
持って来た服は全て動きやすいようにとラフな服装だったから、どれにするか迷ってしまう。
鞄の中で服を確認していると、
『何?この服…』
一着の見知らぬワンピースが入っていた。
小花柄で、ふんわりとしたデザインがすごく可愛い。
『…絶対にお母さんだ』
犯人の検討はすぐについた。
だって、昔から私に着せ替えをして遊ぶのが大好きだったもんね。
いつ買ったのかなと首を傾げながら鞄に目を向けると、中にバッグやミュールまでもが入っていた。
(い、いつの間に…!)
私が最後に荷物の確認をしたのが一昨日の夜だったから、きっと翌朝あたりに入れたんだ。
『………』
でも、ワンピースはすごく可愛いくて…少しだけ鏡の前で合わせてみたら、何だか子供っぽいと思った。
きっと菜々子さんだったら、もっと大人っぽく着こなせるんだろうな。
ふと、白石さんが頭の中を過る。
白石さんと並んで歩いても可笑しくない自分になりたくて、
何故こう思うのかわからないけど…
そっと二つに結わいていた髪を解き、おろしてみる。
だけど、
『やっぱり恥ずかしい…』
再び結わこうと髪を束ねた時、突然部屋の襖が開かれた。
不「あれ、りんちゃん」
『不二先輩!』
不二先輩の姿を見ると、反射的に服を後ろに隠してしまった。
慌てる私に気付いたのか、視線をゆっくりと鞄に向ける。
不「…今日何処か出掛けるの?」
『はい!白石さんに大阪案内をして頂くことになって』
不「(そういうことか)」
不二先輩はニコッと微笑みながら私に近付いて来て、すっと腕を伸ばした。
その手は私の髪に触れたので、驚いて体がびくっと反応する。
『あの…?』
不「髪はおろさないの?」
予想もしてなかった言葉に『え?』と思わず聞き返してしまうと、不二先輩は更にニッコリと笑う。
不「…その方が、白石も喜ぶと思うよ」
『白石さんが、ですか?』
不「うん。きっとね」
そっか、と深く考え込む。
折角の休日に、わざわざ大阪を案内してくれるんだもんね。
私に何か恩返しが出来るなら…
『じゃあ、…そうします!』
アドバイスをくれたことに感謝して頭を下げる私を見て、不二先輩がクスリと楽しそうに笑っていたなんて気付きもしなかった。
待ち合わせ場所は、梅田駅。
時間までまだ30分もあって、早く着きすぎてしまった。
今日、他に誰が来るのかな?
駅に向かって歩いてる時、ふと不思議に思った。
もしかしたら、白石さんだけとか…
…それはないか。
ふと自分の姿がお店の窓ガラスに映っていることに気付く。
じーっと見つめていたら、やっぱり変じゃないかと不安になってきた。
髪をおろしてると落ち着かないし、気のせいかもしれないけど…かなり見られてる気がする。
(うう…)
その視線に耐えながら歩いていると、雪ちゃんに(強制的に)貸してもらった本があったことに気付きバッグから取り出した。
合宿のことを話したら、勉強しろと言われ持たされていたのだ。
『えっと…お出掛け編は…』
シーン別に分かれてあると言っていたので、そのページを捲る。
そこに書かれていたのは…
〈一緒に出掛けようと言われて、もし二人っきりならそれはデートだよ。
りんファイト!〉
『…………』
無言のままパタンと本を閉じる。
デート?
私が…?
デート…
意味が理解出来た瞬間、一気に顔が赤く染まっていく。
顔の熱を冷ますために、ぶんぶん頭を横に振った。
でも
ここまで来たら、
…行くしかない。
スゥと深呼吸して、再び歩き出した。
待ち合わせ場所まで、あと少し。