別れ
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外へ出ると、タクシーを探しに白石は走って行った。
しかし、曲がり門のところに見知っている人物がいたので、驚いて立ち止まる。
白「…跡部、」
腕組みをしていた跡部は、後ろにいるりんに視線を向けると「ついて来い」と背中を向け歩き出した。
理解できないままついて行くと、小型のヘリコプターが視界に映った。
『跡部さ「乗れ」
目を丸くするりんに言い放つ。
跡「事情は手塚から聞いた。今からヘリで空港に向かえば間に合う」
白「場所はわかるんか?」
跡「あ?俺様を誰だと思ってやがる」
跡部はもう一度りんに視線を向ける。
跡「…乗るのか、乗らねーのか?」
りんはギュッと拳を握り締めて、見返した。
『…ありがとうございます、跡部さん!』
お礼を言えば、跡部はフッと視線を逸らす。
素早く四人はヘリに乗り込んだ。
大「じゃあな越前。アメリカでも頑張ってくれよ」
不「気を付けてね」
青学一同、アメリカへ行くリョーマを見送りに来ていた。
菊「う~おチビのバカー!何で突然行っちゃうのさぁ!!」
泣きながら抱き付いてくる菊丸をリョーマが鬱陶しそうに払おうとすれば、大石に剥がされていた。
桃「こんのバカが、突然すぎんだよ」
リョ「…すいません」
桃城に頭を叩かれ珍しく素直に謝るリョーマ。
その姿を見て、「張り合いねーなぁ」と肩を落とす。
桃「春には戻って来いよ。青学にはお前が必要なんだから」
海「…強くなれよ」
二人の先輩を交互に見て、コクンと大きく頷く。
背を向け歩き出した時、ふと自分を呼ぶ声がした。
リョ「(…気のせいか)」
しかし、今度ははっきりと聞こえた。
『…お兄ちゃん!!』
振り返ると、こちらに向かって走って来る人物がいた。
まさかと思わず目を擦るが、近くに来た時、初めて確信する。
リョ「……りん、」
ハァハァと乱れた息を調えながら、バッと顔を上げるりん。
『お兄ちゃんのバカ!』
妹にバカと言われたのは初めてだったので、リョーマは内心傷付いた。
『何で、勝手に行っちゃうの…?あんな、手紙だけ残して…』
泣かないって決めていても、やっぱり本人を見たら溢れてしまう涙。
『お兄ちゃんなんて…』
大っ嫌い
そう言いたくても、言葉にできない。
本当は大好きだけど、今言ったら可笑しいし、かと言って思ってもないことは言えないしでりんは混乱してしまう。
『お、お兄ちゃんなんて…』
何も言えず俯いてしまったりんに、リョーマはそっと手を伸ばした。
その手には、一本の白い花。
リョ「…約束守れなくて、ごめん」
幼い頃の約束
゙ずっと妹で、傍にいで
リョ「あれから、花言葉調べたよ」
『え…?』
リョ「スイートピーの花言葉は…『門出』と、『優しい思い出』」
りんの目に映るリョーマは、優しい顔をしていた。
リョ「…ありがとう」
たくさん、たくさん
優しい思い出をくれて、
ありがとう
『…お兄ちゃんと一緒にいたいよ…』
それは、滅多に言わない我が儘。
ぽろぽろと涙を流すりんは幼い頃のままで、リョーマは「…だから」と帽子を深く被り直した。
リョ「りんがそうだから、俺も妹離れできないんだよ…」
その言葉に大きく目を開けた時、ギュッと抱き締められた。
『お兄ちゃ…』と驚き名前を呼べば更に強く抱き締められる。
リョ「…りんには、たくさんいるじゃん」
『え…?』
リョ「先輩達や、白石さんがいる。
だから、一人じゃない」
今この光景を静かに見つめている先輩達。
空港の外で待っててくれている手塚や跡部や白石。
りんの頭の中には、たくさんの人達が浮かんでいた。
ゆっくり背中に回していた腕を解き、その手はりんの頭を優しく撫でる。
幼い頃からこの行動はあたり前のようになっていて、りんはリョーマに頭を撫でられると、必ず泣き止んだ。
そして、笑顔になる。
『…私、頑張るね』
最後は笑顔で見送ってあげなきゃと、りんは涙を指で拭う。
『だから、お兄ちゃんも…頑張って』
リョーマはふと帽子を外し、りんの頭にふわりと被せた。
縁をぐいっと下げわざと目まで隠す。
リョ「またね」
慌てて帽子を上げれば、見えるのはリョーマの後ろ姿だけだった。
その姿を何度も何度も目に焼き付ける。
『(さよなら、お兄ちゃん…)』
大好きで
誰よりも大切な、人だった
そして…これからも
『(次会う時まで、もっと強くなるから)』
りんは振り返り、大切な人達の元へと走り出した。
その頃
白「りんちゃん大丈夫やろか…」
ヘリの傍で待つ白石は、心配でしょうがなかった。
跡「大丈夫だろ。…あんな素直な奴他に見たことねぇからな」
白「…まぁな。優しい子やしな」
跡「バカなほど一生懸命だしな」
白「いつも自分より他人を優先するし…」
ハッと気付き顔を見合わす二人。
どちらともなくふはっと吹き出した。
跡「…今のところ、はっきりしてやがんのは俺と白石だけか」
白「まだまだぎょーさんいるやろうけどな」
強く頷いた時、
手「…いや、三人だろう」
間に立ち呟く手塚。
その爆弾発言で一瞬場は凍りついた。
跡「ふ…そうだと思ってたぜ」
白「(気付かへんかった…!)」
手「これからは正々堂々と戦うつもりだ」
新たなライバルの出現にまだまだ先は長いと実感し、白石は深く溜め息を吐いた。
白「(…早よ戻ってこんかな)」
戻ってきたら、一番に頭を撫でてあげよう。
そう心に決めて、彼女の姿が瞳に映るのを待ち続けた。