別れ
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『…え?』
居間へ行くと、倫子と南次郎に深刻な表情で告げられた。
『えと、どういうこと?』
意味がわからないともう一度尋ねれば、倫子は重たい口を開ける。
倫「リョーマは、さっき空港に出掛けたわ。アメリカ便の飛行機に乗らなきゃ行けないから」
『アメリカ…?』
昨日の何か言いたそうだったリョーマを思い出し、りんはドクンと鼓動が大きく鳴った。
『…すぐ戻って来るんだよね?』
そうだよね?と倫子を見るが、頷いてくれない。
南次郎はりんの前に一通の手紙を差し出した。
南「…リョーマがお前に置いていった手紙だ」
りんはゆっくりと受け取り封を開ける。
その手は微かに震えていた。
『……嘘、』
一読した後、手紙を持っていた手を下ろす。
『嘘だよ…』
どうして?
何で?
頭の中には、その言葉しか浮かばない。
『どうして言ってくれなかったの!?』
強い口調で問いただすりんに倫子と南次郎は顔を見合わせ、「…ごめんね」と呟いた。
倫「リョーマに、りんには言わないでくれって言われてたの…」
『…っだからって、』
りんが言い返そうとした時、ピンポーンと呼び鈴が鳴った。
菜々子が玄関へ行くのを見ながら、りんは唇を強く噛む。
菜「りんちゃん、お客様よ」
手招きされたので不思議に思いながら玄関へ行くと、そこにいたのは…
『…白石さん、手塚部長…』
二人の姿を見て目を見開いた。
『どうしたんですか?』
白「りんちゃんには、やっぱり言わなアカンと思って」
その言葉にぴくりと反応する。
『…もしかして、白石さんも知ってたんですか?』
何をと問わなくても理解したんだろう。
白石は静かに頷いた。
隣にいる手塚に目を向けても、同じようにゆっくりと頷く。
『(私だけ…知らなかったの?)』
お兄ちゃん、どうして?
私のこと、嫌いだったの?
そんな風に思い始めた時、後ろから倫子が顔を覗かせた。
倫「どうぞ、上がって。
玄関にいて貰っても失礼だわ」
『あ、…どうぞ』
ハッと気付くと、慌てて二人を促し家に上がってもらう。
「部屋でゆっくり話しなさい」とりんだけに聞こえるように言う母にコクンと頷き、部屋に案内した。
白「実は、昨日越前くんが来てな、」
『お兄ちゃんが?』
部屋に入るなり真剣な顔付きで切り出してくる白石。
白「アメリカに行くこと聞いて、りんちゃんには言わないでくれってお願いされたんや」
『…………』
白石や手塚や両親には伝えていて、自分には何も言ってくれなかった。
そのことだけがりんを切なくさせる。
再び唇を噛み締めると、そんなりんを見て白石は落ち着いた声音で話し始めた。
白「…りんちゃんは、越前くんにとって誰よりも大切な人だから、言えなかったんやないか?」
『え、』
白「言っとったで、越前くん…」
―何で言わないん?
―りんの泣き顔や、悲しそうな顔をされると…行けなくなりそうで、
もう泣いてるとこは見たくないから
『………』
りんは何も言えなかった。
ただ、浮かぶのは兄の顔ばかり。
その時、静かに聞いていた手塚が口を開けた。
手「…俺は、ずっと二人を羨ましいと思っていた」
りんは手塚の話に耳を傾ける。
手「兄妹がいない俺は、お互いを理解し信頼しあえる越前とりんが羨ましかった」
初めて聞く内容に驚きながらも手塚を見ると、自分を真っ直ぐに見据えていた。
手「…ここで、気持ちまで離れて欲しくない」
それは、白石も同じ願いだった。
『でも…っ』
でも、何?
何を迷ってるの?
『…私、』
―りん、
お兄ちゃん、お兄ちゃん、
お兄ちゃん
『私……会いたい』
お兄ちゃんに、もう一度
『言いたいこと、何も伝えてないから』
りんの顔付きはさっきと全然違くて、迷いのない瞳だった。
白石と手塚はそんなりんを見て、急に立ち上がる。
「行くで」と白石に腕を引っ張られ、りんが話す隙もなく階段を降りて行った。
『あの…っ』
白「お兄さんに会いたいんやろ?なら、会いに行くで」
腕を掴んでいた手は、いつの間にかりんの手を握っていた。
白「今会わんかったら、一生後悔する」
「俺が傍におるから」とギュッと繋いでいた手に力を込められる。
いつも、いつも、
力をくれる
『…はい!』
もう、迷いはなかった。