告白
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*クリスside*
試合は、リョーマの勝利だった。
俺がリードしてると思ってたのに、リョーマは急激に追い上げて来た。
あいつは、強くなった。
思えば、昔から強い。
俺みたいに暴力で解決しようとしない。
同じようにいつも゙一人゙でも、違った。
それにあいつには、りんがいる。
リョ「クリス、ちょっといい?」
挨拶した後、リョーマが真剣な顔で話しかけてきた。
「いいけど」
俺達は会場の裏に回った。
煩い女達の声もなく、ただ夏にしては冷たい風が頬を掠めた。
リョ「俺、ちゃんと知りたい」
「あ?」
何をだ?とリョーマを見れば、「今更だけど」と呟く。
リョ「…何であの時、あんたがあんなことしたのか、何も知らないから」
゙あの時゙
すぐに理解した。
でも、今更話してなんになる?
「…リョーマはそれを知って、どうすんだよ。信じんの?」
知ったところで、何も変わらない。
リョ「信じるよ」
その瞳は真っ直ぐに俺を見つめていて、昔と何も変わってなかった。
りん同様、何も。
「…わかった」
俺はゆっくりと話し出した。
俺の親父は、アメリカでは有名なマフィアで、その息子の俺は代々後を継ぐことになっていた。
別にそれでいいと思ってた。
母親も兄弟もいない俺はいつも一人で、ボスになったら子分も出来るし、一人ぼっちじゃなくなる。
それに、学校でも一人だ。
親から俺のことを聞かされているのか、周りにはいつも誰もいない。
そんな時、りんに出会った。
『ねぇねぇ』
「あ?んだよ…」
『瞳、すごく綺麗だよね。宝石みたい!』
何だコイツって思った。
キラキラと目を輝かせて、お前の方が宝石じゃんって。(言わなかったけど)
りんは、俺に初めて普通に話し掛けて来た奴だった。
変な奴
鬱陶しかった、けど、
『クリス、おはよー!』
うまく言えないけれど、
俺とは全然違って
眩しかった
ある日、体育の時間にテニスをやってると、りんに上手いと誉められた。
それからリョーマに出会って、毎日三人でテニスをするようになっていった。
口では、言わなかったけど
楽しかった
本当に、楽しかった
一生、こうだったらいいなって思ってた
けれど突然、俺は親父に呼び出された。
「お前に後を継がせる会議を今度行う」
「は?何で急に…」
「ボスになるなら、早く決めた方がいいからな」
「…でも俺、テニスが…っ」
ぴくりと、親父の眉が上がる。
ヤバイと察した時には、腹に激痛が走った。
「何言ってやがる!てめぇはそんなもんにはまってんのか!?」
痛い、痛いよ親父
殴られれば、人は痛いんだよ
血も流すんだよ
痛み、わかってよ
俺が正式に後を継ぐと決まった時、もうあいつらとは会わないって誓った。
汚しちゃいけない、あいつらを
りんを
学校に忘れ物をしたので取りに行った帰り道、花壇のところに同じクラスの奴らが数人集まっていた。
特に気にも留めないで通り過ぎた時、耳を疑った。
「おい本当に来るのかよ」
「来るって来るって。何せりんちゃんは優しいし?俺達友達だからな」
「お前ひでーなぁ。嘘ついてさ、あんな可愛い子に」
「ちょっと苦しい声で助けてって電話しただけだよ。まぁいいじゃん。
もうすぐで俺のもんになるんだから」
プツリと、何かがキレた音がした。
こいつ、今なんつった?
俺のもん?
りんは、お前らみたいな汚い奴が触れていい人間じゃない
覚えてるのは、赤い血に染まった男達と、
りんの恐怖に怯えた顔
俺は、嫌われてもいいから
「りんはさ、優しすぎるんだよ」
傍にいれなくてもいいから
「近付く奴は、皆俺が…殺してやる」
守らせて
「この試合を聞いた時、親父に言ったんだ。たった一回でいいからって」
最後に、もう一度会いたかったから。
俺が話し終えたら、暫く静寂が訪れた。
リョーマは何も言えないでいる。
突然背後からカサッと音がしたので振り返ると…りんがこちらを黙って見つめていた。
「…りん、」
いつからそこに?と俺が問いただす前に、りんはギュッと抱き付いて来た。
突然のことに目を丸くしていると、
『…ごめ、ごめんね…』
震える声で、俺に向かって呟く。
『わかってあげれなくて、聞いてあげれなくて、ごめんなさい……』
何で、
こいつは、
こんな気持ちにさせるんだ?
―クリス!
そっか、俺は
あの笑顔を、守りたかったんだ
「…俺も、ごめんな」
たくさんたくさん傷付けて、
たくさん泣かして、
ごめんな
ふるふると首を横に振るりんを、強く抱き締めた。
もう、間違わない
傷付けないで、守れることを知ったから