絆
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リョ「それから、りんには誰も近付かなくなって。
そのまま卒業と同時に、日本に戻って来たんです」
リョーマは閉じていた目をゆっくりと開ける。
静かに聞いていた周りには、言葉を発する者はいなかった。
暫くして…
桃「…何だよそれ、」
独り言のように呟いた桃城。
不「…りんちゃん、相当怖かっただろうね」
忍「トラウマもんやな…」
つられるように、意見を言い始める。
けれどそんな中、ずっと黙っている者がいた。
その人がゆっくり出口に向かって歩き出した時、突然ドアが開いた。
そこに立っていたのは… 全身を包帯で巻かれたミイラ男と、その隣で顔を俯かせている金太郎。
金太郎はバッと顔を上げ、大きく口を開けた。
金「ア、アホ!何でわい置いてくん!?
も、めっちゃ暗いし、道わからんし、コシマエはわいのラケット持ってくし、オサムちゃんはミイラやし…めちゃくちゃ怖かったんやで!!」
わんわんと泣きじゃくる金太郎のお陰で、その場の重たい空気は打ち消されていった。
目の前に立つ白石をポカポカと叩き、「アホー」と言いながら鼻を啜る。
白「…金ちゃんごめん。
ミ…オサムちゃん、金ちゃん送ってくれておおきに」
渡「お?別にかまへんけど…どっか行くんか?消灯時間やで」
「自主トレや」と呟き金太郎の頭をポンと軽く叩いた後、白石は静かに部屋を出て行った。
小「蔵リン…怒ってるわね」
ユ「せやな。あいつ顔に出にくいからな」
四天宝寺のメンバーは、白石が出て行った出口を見つめ思った。
宍「おい跡部、何処に…」
スッと歩き出す跡部。
追い掛けようとする宍戸を忍足は腕で制した。
その日はそれで解散となり、各自部屋に戻って行った。
ただひたすらに走る白石と、
一人筋トレに励む跡部と、
夢中で壁打ちをするリョーマを除いて。
思っていることは、きっと同じ。
合宿最終日の朝。
不「りんちゃん大丈夫かな…」
河「…昨日の今日だもんね」
菊「………」
大「どうした?英二」
菊「な、何でもないよん!」
青学の皆は食堂に向かう途中、昨日のリョーマの話を思い出していた。
いつもは騒がしいのに珍しく静かな菊丸を大石が不思議に思っている間に、食堂に着いた。
パタパタとこちら向かって走って来たのは…
『あ、皆さん。おはようございます!』
ニッコリと笑うりん。
驚いた為少し遅れて、「おはよう」と皆慌てて返す。
『朝食できてますよ』
河「あ、うん」
いつも通り笑顔で話すりんを見て、ホッと安心した。…けれど、
不「…明るすぎるね」
大「…そうだな」
普段より更に明るく振る舞っているように感じた。
金「なぁ、何かりん元気ないなー」
各学校ごとに分かれコートに集まっている時、金太郎がポツリと呟いた。
その何気ない言葉に手を止めるメンバー達。
裕「無理して笑ってる、ように見えるな…」
観「表面上はいつも通りですね」
ユ「何やこっちまで元気なくなるやんけ」
ユウジが溜め息混じりに言えば、ピクッと反応した白石と小春。
小「…ユウくん、そんなに心配なの?」
金「ユウジ、りんのこと大好きなんやな!」
ユ「な!!///」
顔をカァッと真っ赤にするユウジに対して、小春は冷たい視線を送る。
「ちゃう!小春ちゃうでー!」と慌てて弁解しても、時既に遅し。小春はユウジを置いてダブルスの相手を探しに行ってしまった。
謙「…白石、あんな」
白「ん?何や、」
深刻な表情をしている謙也と、その後ろにいる財前を見て白石は首を傾げる。
やがて重たい口をゆっくりと開けたー…
夜、トントンと遠慮がちに女子部屋の戸が叩かれた。
そっとりんが開ければ、目の前には菊丸の姿。
『?菊丸先輩、どうかしましたか…?』
ずっと顔を俯かせて黙っている菊丸。
りんは少し考えた後、ハッと気付き笑顔になる。
『トランプですか?私ちゃんと持ってきましたよ!』
自分の鞄からトランプを出そうとすると、「あのね」と菊丸は呟いた。
菊「りん、ごめんね」
『え?』
顔を上げた菊丸は、今まで見たことがないくらいに寂しそうな顔をしていた。
キョトンと目を丸くするりんに向かって言葉を繋げる。
菊「俺が肝試しなんて言い出したから…ごめん、」
再び頭を下げる菊丸にりんがゆっくりと歩み寄ろうとすると、また戸が叩かれた。
そこにいたのは謙也と財前。
白石の後ろから顔を覗かせ、静かにりんの前に立った。
謙「…りんちゃん、ごめん。俺、守れへんで」
『………』
本当に申し訳なさそうに言う謙也。
隣にいる財前も暫くして、「…ごめん」と小さく頭を下げた。
突然3人に頭を下げられて困惑していたりんだったが、静かに歩み寄って行く。
『…頭、上げて下さい』
ゆっくり頭を上げた3人と視線を合わせ、りんは口を開けた。
『皆さんのせいだなんて思ってないです。私が不注意だっただけですから。
それに…』
もっと大事なことは、
『私は、皆さんがそんな風に思ってくれていたことが…嬉しいです』
そう、ふわりと微笑む。
そんなりんにつられるように、菊丸は嬉しそうに笑った。
あとの2人はというと、顔を微かに赤く染め固まってしまった。
白「はい、仲直りタイム終了や」
静かに見ていた白石が急に間に入り、りんの前に立ち塞がる。
財「…嫉妬深いっスわ、部長」
白「!」
『…?』
財前の言葉に反応する白石を見て、何を言ったのか聞こえないりんは首を傾げた。