暗闇
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*りんside*
引きずられるように連れて行かれた後、口を覆っていた手を離された。
『…ハァ、ハァ』
苦しくなっていたので、思いっきり空気を吸う。
それと同時に、ゆっくり、目の前に立つ人影を見上げた。
『……クリス?』
恐る恐る尋ねる私を見下ろして、クリスはフッと笑った。
「久しぶり、りん」
笑った彼は、昔と変わらない…とても綺麗な顔立ちをしていた。
゙クリス・エドワード゙
アメリカ時代の親友。
髪の毛は透き通った薄い金色。
瞳はビー玉みたいな青色で、肌は陶器のように白い。
アメリカ人と日本人のハーフの彼だけど、何処から見ても外人の容姿をしている。
『…ひ、久しぶりだね』
弱々しい言葉使いになってしまう。
私が最後に彼を見たのは、
人を、殺そうとしていた、あの時。
ク「…もっと喜べよ」
低い声に、ビクッと体が震える。
近付いて来たクリスに思わず後退りすると、眉を寄せ更に歩み寄って来た。
ク「…りん、」
気付いたら大きな木に背が当たっていて、クリスの片腕が頬の横に置かれる。
ク「男、デキた…?」
『え、』
ク「可愛くなったから、前より」
さらりと髪をすくわれて、真剣な表情で言われる。
『…い、いないよ。そんな人…』
―絶対、近付けない
ク「…本当?」
『うん…』
―俺が、殺してやる
ク「…あの男は?」
『え?』
首を傾げれば、クリスは微かに眉を寄せた。
ク「一緒にいたあいつ」
一緒に…あ、財前さんのことかな。
『財前さんはそういうんじゃ…』
ク「へぇ…好きでもないのに二人っきりになるんだ」
「夜に」と耳元で囁かれ、ドクンと鼓動が鳴る。
゙逃げなきゃ゙
思うのに、体が言うことを利かない。
足が固まって…動けない。
クリスにグイッと顎を捕まれて、上向きにされる。
宝石みたいな瞳と視線がぶつかり、背中に冷たい汗が流れる。
『…や、お兄ちゃん、』
助けて…お兄ちゃんっ
その時何故か、同時に浮かんだ人がいて…
『…っ白石さん!』
思わず出た言葉に自分で驚いていたら、クリスがピクッと反応したのがわかった。
その時、私とクリスの間に勢い良くテニスボールが通り抜けた。
その拍子にクリスが体勢を崩し、私は誰かに後ろから腕を引っ張られる。
『白石さん…』
白「りんちゃん、大丈夫か!?」
心配そうに尋ねて来る白石さんの姿を見たら、すごく安心して、
『は、い…』
コクンと頷くと、「良かった」と微笑んで頭を撫でてくれる。
ドクンと鼓動が鳴るが、さっきとは全然違うものだった。
優しくて、嬉しくて…
全然嫌じゃない。
ふと視線を戻すと、ラケットを構えたお兄ちゃんの姿。
さっきの球はやっぱりお兄ちゃんの…
ク「リョーマ、すごい挨拶だな」
リョ「何でクリスがいるの?」
お兄ちゃんはクリスを睨み付けるように見据えると、小さな笑いが返って来る。
ク「今度、日米親善試合に出るから日本に来たんだよ。
で、挨拶に来たってだけ」
リョ「何でりんをこんなとこに?」
ク「…別に。見知らぬ男といたから守ってあげたんだよ」
クリスは素っ気なく言うと白石さんを睨み付けた。
その視線は刃物のようで、私は気付かぬ内に白石さんの手を握っていた。
一瞬白石さんは目を丸くしたけど、ふわり、優しい笑顔になる。
すっと目を細め前を見つめた。
白「…ようわからんけど、りんちゃん怯えとるやん」
ク「怯える?俺とりんは親友なのに…?は、笑わせるじゃん」
「あんた誰?」とクリスはさっきより強く睨み付ける。
白「俺は「人に聞くならまず自分から名乗るんだな」
突然聞こえた声に振り返ると、跡部さんと忍足さんが息を切らして立っていた。
忍「(何や人形みたいな奴やな)」
跡「…りん、大丈夫か?」
跡部さんは急いで私の側まで来る。
『…はい、』
「そうか…」とホッとしたように肩を落とす跡部さん。
その表情を見たら、心配してくれてたことがわかった。
ク「…へぇ、ナイトがいっぱいだ」
クリスは口角を吊り上げながら、周りを一瞥した。
「クリス・エドワード。
日米親善試合ではシングルス1に出るよ、多分」
「楽しみにしてるよ」と一言残し、クリスは視線を私に向ける。
ク「…じゃあな、りん」
『……っ』
体がビクンと震えると同時に、繋いでいた手にギュッと力を込める。
ふと視線をそこに移し…はたと気付くと勢い良く手を離した。
『(私、何て迷惑な…っ)
ご、ごめんなさい!///』
慌てて距離を置こうと離れれば、白石さんは少し寂しそうな顔になった。
「気にせんでええよ」と言われるけど、その表情を見たら、ちくりと胸が痛くなった。
忍「…りんちゃん、皆待っとるで」
忍足さんが静かに呟き、私達は宿舎に向かい歩き出した。
帰り道、声を発する者はいなくて…ただ、静寂の中に足音だけが響いていた。
宿舎に着くと、お兄ちゃんは私を部屋まで送って行くと言い有無を言わさず連れてかれた。
リョ「疲れてるだろ、もう寝ろ」
『でも…っ』
皆に迷惑かけちゃったから、ちゃんと謝りたい。
…けど、
クリスのことを話したら、
もう…皆の近くにいられないかもしれない
そんなの、絶対に…
ふと頭に重みを感じたので前を見ると、お兄ちゃんがぽんぽんと私の頭を軽く叩いた。
リョ「大丈夫だから。寝ろ」
お兄ちゃんの声は優しくて、コクンと頷くと、小さく微笑み背を向けた。
部屋に入っても寝れると思わないけど、パタンと扉を閉めた後、
その場に崩れ落ちるようにしゃがみ込んだ。
お兄ちゃん、私、大丈夫なんて言ったけど
強く、なりたいと思ったけど
やっぱり、難しいよ
ごめんね