暗闇
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りん達の番になり、(面倒臭いので)早足で颯爽と歩く財前を先頭に、森の中に入って行った。
ガサッと何かの音がする度「ひっ」と肩を浮かす謙也。
謙「お、驚かすなっちゅー話や!」
先程までの自信は何処かに飛んで行ったらしい。
財「(やっぱ怖がりなんやな)」
自分の先輩に対し一人納得した後、財前は別の方向に目を向けた。
『………』
何も言わず、スタスタと歩くりん。
周りを見ない様にしているようだった。
その時、突然横の草むらからガサッと音を立て…
全身を包帯で巻かれた、いわゆるミイラ男が出現した。
謙「!ッ!!」
謙也は声にならない叫び声を上げて、だーっと走り去って行ってしまった。
「逃げ足もスピードスターやな」と呆れながら呟いた財前は、奇声を発するミイラ男へと振り返る。
財「…オサムちゃん、何してんスか」
渡「あ、バレとったんか」
財「まぁ、」
渡「他の連中には秘密やで?」
ハッハッと笑いながら再び草むらに隠れるミイラ男…否、オサム。
財前は溜め息を吐くが、はたと気付いた。
財「…?」
さっきからずっと黙っているもう一人を不思議に思い振り返ると、
『(怖くない怖くない怖くない………)』
その場で膝を丸め、顔を埋めてしゃがみ込んでいるりんの姿。
財前が近寄ってみると、肩が震えていることがわかった。
財「…もういないで」
「顔上げや」と言う声に、ゆっくりと重たい頭を上げる。
その目には涙が溜まっていて、今にも零れそうだ。
『そ、そうですか…』
良かったぁと笑って見せるが、まだ肩は震えていて。
財「ホンマは怖いんやろ」
『怖く、ないです…!』
フルフルと首を横に振るうりんに、「まぁええけど」と素っ気なく言い放ち、再び早足で進み出す財前。
りんはその後を慌てて着いて行く。
財「…あ、あれゾンビやないか?」
『!?』
そう意地悪く言ったら、りんの瞳にまた涙が溜まる。
おもろいと思った時、りんは怯えながらゾンビを探し出した。
財「(…ホンマにおもろい)」
緩みかけた口元を抑え、代わりにりんの腕を掴んで、それを自分の服の裾に持っていき握らせる。
『あの…』
財「ええから、」
「掴んどき」と短く言うと、財前はまた歩き出した。
暫く目を丸くしていたりんだったが、コクンと小さく頷いた。
『…ありがとうございます』
微笑んだ顔を横目で見ていた財前は、何も言わず前に向き直った。
暫くそうしていたが、ふと口を開く。
財「…あんた、部長とペアが良かったんやないか?」
『え?』
財「何だかんだで頼りになるし、」
「仲良いし」と言葉を続けると、りんは服の裾を掴んでいた手を緩めた。
『…嫌です、』
財「え?」
予想してなかった返答に財前は思わず聞き返す。
『白石さんと、最近うまく喋れなくて。だから…
きっと、変な子って思われるから…』
りんは消え入りそうな小さな声で言う。
財前は前を向いたまま足を止め、呆れたように息を吐いた。
財「…部長、可哀想やな」
『え…』
財「気付いてないん?白石部長はあんたが、」
財前は何かを言ったが、烏の声でそれは掻き消されてしまった。
『えと、なんて…?』
りんが聞き返そうとしたその時、
『!!?』
何かに勢い良く腕を引っ張られ、叫ぼうとするが口元が覆われて出来なかった。
運悪く烏の群れが頭上を通り抜け、その鳴き声のせいで目の前の財前に気付いて貰えない。
『(いや…!)』
そのまま引きずられるように森の奥に消えて行った。
なかなか返事が返って来ないので、財前が眉を寄せながら振り返ると…
財「は…?」
その場にいたはずの姿がなく、代わりに冷たい風が頬を掠めた。