兄の記憶
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コートではダブルス1の試合が行われていた。
そこにリョーマの姿はなく、不安になってりんは辺りを見渡す。
河「りんちゃん!」
『先輩!お兄ちゃんは?』
不「それが、桃が越前の記憶を思い出させるって言って…」
それを聞いたりんは皆に事情を話し、再び何処かに向かって走り出した。
『(私にできる、精一杯のことは…)』
『伊武さん、お願いします!力を貸して下さい!』
不動峰の伊武に必死で頭を下げる。
記憶がないなら、テニスをすれば思い出すかもしれない。
単純だがそう考えたりんは、リョーマが今まで戦ってきた相手に協力してもらえるよう、1人1人に頭を下げて回ることに決めた。
同じ考えの桃城が、今リョーマにテニスを教えている。
伊「………」
杏「伊武くん、私からもお願い!」
側にいた杏は、必死で頭を下げるりんを見て自分も頼みこむ。
伊「…いいけど、何処行けばいいの?」
『あ、ありがとうございます!』
小さく息を吐きラケットを持つ伊武。
りんは何度も礼を言った。
その後も聖ルドルフの裕太、山吹中の亜久津、氷帝の日吉、比嘉中の田仁志と、りんは頭を下げて協力を頼んだ。
『(あとは…)』
真田にも協力を頼みに立海の応援席を訪れると、りんがいる方へ向かって歩いて来る真田。
手にはラケットを持ち、やがて立ち尽くすりんに気付く。
真「…何だ」
『え、あの…』
何て切り出したら良いのだろうかと考えたが、今はそんなことを言ってる場合じゃない。
『あの「あいつに思い出してもらわねば、立海は本当の王者にはなれん」
真田は強い口調で言葉を続ける。
真「俺が記憶を叩き込んでやる」
『…真田さん、』
くるっと前を向き階段を上がる真田。その先にいたのは…
跡「俺様も手伝ってやるぜ」
『!!』
同じくラケットを持ち真田を見据える跡部。
今の2人は同じ目的で、言葉はなく並んで歩き出す。
『…あの、よろしくお願いします!』
その背中に感謝の気持ちを込め、りんは見えなくなるまで頭を下げ続けた。
『(…お兄ちゃん、)』
きっと、大丈夫。
テニスが大好きなお兄ちゃんだから。
皆を信じよう。
菊丸と大石の試合も終わりそうで、りんはマネージャーとして働く為に青学の皆のところへ走って行った。
ダブルス1は青学が勝利し、黄金ペアは全国で一番のダブルスコンビとなった。
今は2勝2敗。すべては次の試合に託される。
「続いて、立海大附属 幸村精市VS青春学園 越前リョーマ!!」
審判の声が響いても、リョーマの姿は一向に現れない。
会場が騒めき出した時、
『私…迎えに行って来ます!』
りんは皆に一言残し、今リョーマがいるであろう練習用コートに向かう。
走ることに夢中で気付かなかったが、前から誰かが歩いてくるのが見えた。
まさか…と思い目を見開いていると、その人はりんの目の前で足を止める。
『お兄ちゃ、ん…』
リョーマの顔を見れば、さっきとは全然違った。
リョ「……りん」
知らない人を見る目ではなくて、優しい瞳だった。
『思い出した…?』
リョ「うん…ごめんな」
頭を撫でる手はいつものリョーマで、りんは嬉し涙を浮かべつつコクコクと頷いた。
『あのね、次の試合…』
リョ「わかってる」
リョーマは真剣な顔をして、目の前に建つ会場を見据えた。
リョ「あそこに…倒さなきゃなんない奴がいる」
さあ、
本当の戦いはこれから。