兄の記憶
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りんがコートへ戻って来た時には、既にシングルス3の手塚と真田が試合を始めていた。
『そんな…』
手塚の゙才気煥発の極み゙が真田には全く通用していない。
゙風林火陰山雷゙の「陰」で手塚の才気を封じ、百錬も「雷」で返されていた。
菊「関東大会決勝で、おチビと当たった時はなかったのに…」
不「手塚を倒す為の奥の手だったんだ」
手塚ゾーンで「雷」を引き寄せたが、ラケットが弾き飛ばされてしまう。
あっという間に4ゲーム取られてしまった。
手「…返せない打球ならば、返さなければいい」
『(手塚部長…?)』
容赦なく「雷」が打たれたと思ったら…
「アウト!」
手塚は"手塚ゾーン゙を逆に使い、真田の「雷」を全てアウトにしていた。
竜「いかん手塚!これ以上また腕に負担を掛けるつもりか!?」
『!!』
2ゲームを取り返した手塚。
不「君はまた…僕達チームの為に…」
手塚ゾーンはかなりの回転をかけて打っている。
それを6割増しにして、全ての打球をアウトにしているのだ。
『そんな事したら、手塚部長の腕が…』
更に零式サーブを打ち、4-4までに追い付く。
しかし、手塚の腕が鬱血して腫れ上がってしまった。
『…だめ、です…』
これ以上打ったらいけない。
りんの頭の中によみがえる記憶。
跡部との試合で痛めた肩。
手塚は今、同じことをしようとしている。
対する真田の足も、痛々しく腫れ上がってきていた。けれどまだ「雷」を打ち続け、手塚はそれをアウトにする。
お互い真っ向勝負で挑んでいた。
『…っ部長、腕見せて下さい!』
休憩になりベンチに入った手塚へ急いで駆け寄るりん。
その表情は今にも泣きそうで、手塚は自分が原因なのかと悟る。
手「りん、」
『…はい』
腕を氷で冷やしながら視線を合わせないりん。
手「迷惑をかけてすまない…だが、」
瞳を閉じて言う手塚を、りんはゆっくり顔を上げて見つめ、
『私も、青学は優勝して欲しいです。だから最後まで…見ています』
目を開けると、映るのは自分を真っ直ぐ見つめるりん。
戦ってるのは自分1人ではないんだと気付かされる。
後ろを振り向くと、コクンと頷く青学の皆。
勝ちたいと言う気持ちは皆一緒みたいだ。
手「……行ってくる」
心の中で礼を言い、手塚は再びコートへと歩いて行った。
真田は真っ向勝負を捨て、「雷」ではなく「林」を打つ事で手塚にファントムを打ち続けさせていた。
そして、真田にマッチポイントが訪れる。
手塚のサーブは…
不「零式…そうか、手塚は時間を稼いでいるんだ。
…越前の為に」
『!』
りんが不二を見上げると、コートでは真田が゙風林火山゙を連続で打ち、手塚のラケットを弾き飛ばした。
ボールはネット上を転がり…
真「向こうに入らんかーっ!!」
手塚のコートへとゆっくり落ちた。
「ゲームセット…ウォンバイ 真田弦一郎 7-5!」
真「…もう二度と貴様とはやらんぞ」
倒れ込む手塚と握手をし、試合は幕を閉じた。
『…手塚部長!大丈夫ですか?』
手「…ああ」
腕が腫れている手塚を見て、りんは素早く駆け寄る。
『病院に行った方が…』
手「平気だ。…それに、」
手塚はオロオロと慌てるりんを見つめる。
手「全員で優勝したいからな」
それを聞き、りんは手塚が誰よりも勝利を望んでいるんだと感じた。
『…はい。私もです!』
元気よく言うりんを見て、手塚は微かだが口元を緩めた。