Episode1 選択肢は最初からない
名前変更
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高林 佳(たかばやし すぐる)
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俺は何度も心の中で叫んだ。
叫んで叫んで叫びまくって走る俺の呼吸は乱れまくって限界。
声に出したい叫びを何度心で叫ぼうとも、この状況は変わらない。
今の俺の状況を説明するなら、今から十五分前に遡らなくてはいけない。
それは、コンビニ帰りだった。
家から少し離れたコンビニに、俺のお目当てのアイスはある。
家の近くにコンビニはあるが、このアイスがあるのはここだけ。
勉強を終えた俺が自分にご褒美くらい買ってもいいだろう。
だが、俺が購入したアイスは棒アイス。
家に帰るには距離があるため、溶ける前に今食べるしかない。
そう思い袋の中に手を入れようとしたとき、変な音が聞こえた。
気のせいだろうかと思い再び視線を袋に向けたとき「はっ……」という声が聞こえた。
誰かいるんだろうかと、声のした方へと足を進める。
聞こえた声は何だか苦しげに思えたが、まさか人が倒れてるとか、なんて考えが頭をよぎり薄暗い路地を覗く。
そこには地面に倒れる人。
そして近くには二人組の人影。
きっと俺と同じで、声に気付いて来たんだろう。
あとはあの二人が救急車を呼ぶだろうとその場から離れようとしたとき、二人の会話が聞こえて足が止まる。
「コイツどうする?」
「連れ帰っていつも通りに処分するだけだろ」
声からして男女のようだ。
でも、会話の意味がわからない。
その場から動けずにいると、男の方だと思われる人物が地面に倒れている男を肩に担いだ。
呻き声を漏らす男に女が「煩いなー」と一言いうと、担いでいた男がその人物の腹に膝蹴りを入れた。
「あーあ、やっと静かになった」
「おい、戻るぞ。一般人に見られたら面倒だ」
目の前で起きた事が理解できずにいたとき、俺の持っていた袋がガサリと音を立てた。
ヤバイと思ったときには遅く、二人の男女が俺を見つける。
「あらら、見られちゃった感じ?」
「はあ、やっと終わったっつーのにまた面倒事かよ。五番」
「はいはい、りょーかい!」
女は猛スピードでこっちに向かってきて、俺は慌てて逃げた。
必死に走るが「鬼ごっこ楽しいけど、今は急がないとなんだよねー」なんて呑気な声が後ろから聞こえる。
こっちはもう限界だってのに、女の方は声からして全く疲れた様子を感じない。
ここで冒頭に戻るわけなんだが、酸素も足りず足も限界な俺はとうとう地面に倒れてしまった。
「つーかまーえたー!」
女は軽々と俺を持ち上げると、そのまま走り出す。
担がれた俺が最後に見たのは、地面に落としたコンビニ袋が遠ざかっていく光景だった。
走り疲れて気を失っていた俺が目を覚ますと、そこは見なれない部屋。
部屋といってもまるで個室の病院のようで、真っ白な部屋に家具はほとんど無く、唯一あるのは机と縦長の棚とベッド。
俺はそのベッドに寝かされていた。
一体あの後、俺はどうなったのか。
あの二人が路地で話していた内容や、地面に倒れていた男性に膝蹴りをしていた光景などを思い出すと、一刻も早くこの場所を逃げ出すべきたと思いベッドから下りる。
自分の靴はどこにいったのか、この何もない部屋では探すところすらない。
取り敢えず素足のまま扉に近付くと、どうやらパスワード式のロックがかけられている扉らしく、これでは逃げようにも逃げられず時間だけが過ぎていく。
ベッドに座り直し、これから自分はどうなるのかという不安を感じていると、機械音の音が聞こえ視線を向ける。
どうやら今の音は扉が開かれた音だったらしく、そこには男女の姿。
「起きたみたいだね」
「丁度いい。処分についても決まったところだからな」
さっきは暗くて顔までは見えなかったが、この声は路地裏にいたあの男女の声。
つまり、俺をこの場所へ連れてきた張本人。
処分が決まったという言葉で体を固くしていた俺に、男の方がニヤリと笑みを浮かべ「お前、ここのバイトになれ」と言ってきた。
バイトとは何をするのか。
そもそもさっきのあれは何だったのか、頭の中がぐるぐる回転する。
「んっとね、丁度さっきバイトが逃げ出しちゃって代わりが欲しかったんだー」
ニコニコ笑みを浮かべながら楽しげに話す女だが、さっき路地で倒れていたのはここのバイトということなのか。
でもそれにしては、男の方は前のバイトの人に膝蹴りをくらわせたり、なんか処分するとか物騒なことを言っていた。
それに、あの元バイトの人は一体どうなったんだ。
言葉から考えると、嫌な考えが頭を過り血の気が引く。
「んで、バイトやるのかやらねーのか、どっちなんだ?」
威圧感とこの状況、俺が助かる選択など最初から一つしか存在しない。
自分の命を守る事を最優先に考え、俺はバイトを引き受けた。
その反応に気分を良くした男はドカリと俺の座るベッドの隣に腰を下ろすと、名前を尋ねてきた。
「俺は、高林 佳。二十歳で大学に通ってる」
「何だ俺とタメかよ! んじゃ、これから頼むぜ、佳」
背中をバシバシ叩いていきなりの名前呼び。
見た目は優等生って感じなのに、口を開けば口調は悪く、態度はでかい。
一緒の大学に通ってる親友と重なるところがあって、少し緊張が解けたのが自分でわかる。
「新しいバイトも見つかったし、俺は寝るわ」
そう言って出ていってしまったけど、俺、あの男の名前もバイト内容も聞いてないぞ。
このまま帰ってここには来ないっていう方法もあるが、外に出なければここが何処なのかすらわからない。
そもそも帰り道がわかるんだろうか。
それにもし俺が来なかったりしたら、それこそ命が危ない。
やっぱり来るしかないんだろうなと考えていたとき、突然顔を覗き込まれて驚く。
すっかり忘れてしまっていたが、まだ女の方がいるんだった。
なんかさっきまでのニコニコ顔と変わって怒ってるように見えるんだが、俺は何かしたんだろうか。
「えっと、何か怒ってるか?」
「当たり前だよ! 私の事忘れてたでしょ。二番と仲良くしちゃってさー」
ムッと拗ねている姿を可愛いなんて思ってしまったが、あれだけ走っても息すら乱さず平気で、その上、軽々と俺を担ぎ上げたあの力。
本当に女なのか疑いたくなる。
まさか、男の娘と言うやつなんじゃないかと疑う。
「お前って女?」
「当たり前だよ!! 私の存在忘れてた上に女の子なのか疑うなんて酷いー」
うるうるした瞳を向けられ、俺は一瞬にして女だと確信して疑いを解いた。
単純かもしれないが、それが男だ。
本当に俺を担ぎ上げた人物と同一人物なのか疑いたくなるほどにギャップはあるが、取り敢えず機嫌を直してもらおうと謝罪すると「わかった。許してあげる」なんて言うもんだから、俺はその可愛さに心を撃ち抜かれかけた。
なんとか落ち着いたところで、さっきの男が言っていたバイトの話をこの女から聞くことにした。
それと、さっきの路地裏での出来事も。
すんなり話してもらうのは難しいだろうなと思ってたんだが、女は何の躊躇いもなく話し出す。
先ずバイト内容だが、それは今いる場所で成功例達の世話係をするというもの。
「あのさ、成功例ってなんだ?」
「私とか二番とかだよ」
さっきも二番と言っていたが、あの男の呼び名なんだろうか。
だが、成功例ってのはなんだ。
バイトについてなどを聞くはずが、更にややこしいことになってきて俺の頭はオーバーヒートしそうだ。
ただでさえ勉強終えたばっかだってのに。