第壱武将「休日は地獄」
名前変更
名前変更夢主(主人公)のお名前をこちらで変えられます。
【デフォルト名】
海月(みつき)
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「そいつから離れろ」
「おいおい、苦無なんて構えてどうするきだよ。この女に当たっちまってもいいのか?」
佐助はグッと堪えると「やっぱりお前だったか」と問いかける。
どうやら二人は知り合いのようだが、仲が良いとは言えそうにない。
忍びは私の肩に座ったまま「単なる偵察だ」と言い残し姿を消してしまった。
一体あの忍びは何者だったのか。
また教えてもらえないだろうと諦め半分だったが佐助に尋ねてみると、佐助は深い溜息を吐いたあと話始めた。
先程の忍びは佐助と同じ忍びだが、仕えている人物が違う。
名は、霧隠 才蔵。
仕えている主は、織田 信長。
その話しを聞いたとき一つの疑問が浮かぶ。
あのアプリには真田十勇士の事も書かれていて、そこには才蔵の名もあったはずだ。
才蔵は何故信長に仕えているのか聞くと「裏切ったからだ」と佐助は言う。
「あいつは勝手に姿を消した。その後才蔵が信長に仕えたことが判明したんだ」
仲間が突然いなくなる辛さは私にはわからず、かける言葉が見つからない。
少しの沈黙が続くと、佐助は何時もの冷静さを取り戻し話を続けた。
才蔵がここに現れたのは、本人が言っていた通り偵察であり、それをさせたのは信長。
佐助が信玄に頼まれ私を護衛をしていた理由は、信長達が私と接触を図る可能性があったから。
あくまで可能性だったのだが、才蔵が偵察に来たことでそれは可能性では無くなった。
信長達が私を狙う理由。
それは私が、戦国時代に武将達が恋に落ちた姫だから。
今は生まれ変わり新たな人生を歩んでいるが、武将達は違う。
あれは戦国時代の頃、姫を巡って武将達の恋の火蓋が切られていた。
恋文や贈り物、会いに行った者までいたが、姫の心は誰に向くこともなかった。
そこで、各国の武将が一斉に出した恋文。
この恋文で全てが決まるはずだった。
返事が来たものが勝者。
誰にも返事が来なければ、皆諦めることも文に綴られていた。
だがその翌日。
姫の城は炎上した。
何者かの襲撃で姫は命を落とし、悲しい結末だが、この恋はここで終わりを迎えると思われた。
そんな時、姫はあの夜誰かに文を書いていたという情報が武将達の耳に入った。
武将達はその後、現代でも名を残す程の活躍を残し散っていったが、姫が最後に書いたとされる文が気になり、亡くなったあともさ迷い続け、ようやく巡り会えたのが姫の生まれ変わりである私。
「ちょっと待って。姫とか生まれ変わりとか言われても、私にはそんな記憶ないし。それにそれは前世でのことでしょ。私には関係ないわ」
何より最初に私が佐助に尋ねた時、突然こんな姿になって部屋に現れた理由はわからない。
ただ皆の記憶にあるのは、あのメールを送った記憶のみだと話していた。
前世でのことを覚えていたのなら何故あの時話してくれなかったのか問いただすと「話しても仕方がないことだからだ」と言う。
私に前世の記憶はなく、今の時代を生きる私には佐助の言う通り関係のない話。
今時分でも言ったばかりだけど、何故か心がモヤモヤしてしまう。
「ここにいる皆は一体なんの為に現れたの?」
「さあな。最初にも話したが、突然こんな姿になってアンタの部屋に現れた理由は俺にもわからない」
そう言い残し姿を消した佐助は、またどこからか私を護衛しているのだろう。
あんな話を聞かされて平然とできるはずもなく、私はソファに寝転がり瞼を閉じると考えた。
佐助の話を纏めると、私は戦国時代の姫の生まれ代わりであり、武将達の想い人。
姫の心を誰にも振り向かすことができずにいた時、武将達が考えついたのが恋文。
皆で文を出し、その中で添い遂げたいと思う人物一人に返事を書くよう伝えられた姫だったが、その文が届いた翌日、姫のいた城は炎に包まれ命を落とした。
その後武将達が知った事実。
城が炎に包まれた前の晩、姫は誰かに文を書いていたという新たな情報を得た。
すでにこの世にいない姫に聞くこともできず、書かれていた文の中身も送る相手もわからないまま武将達は散っていった。
ミニ武将達が私の目の前に現れたことが偶然とは思えない。
姫への想いを残したまま散っていった武将達。
その未練が今の現状に関係しているとしたら、姫が書いたとされる文が誰に送られるものだったのかということと書かれていた内容が、今もこの世を彷徨っている武将達の未練に違いない。
だが私に前世の記憶はない。
真実は知りようもない。
これ以上考えたところでわかるはずもなく、姫に恋文を書いた武将を思い出していく。
武田 信玄、伊達 政宗、上杉 謙信、織田 信長。
こう考えると前世とはいえ、自分は凄い人達を相手にしていたんだなと思う。
いつの間にか時間は過ぎていき、考えながら眠ってしまっていた私を起こしたのは帰宅したお母さんだった。
結局日曜日もゆっくり過ごせたとはいえないものとなり、お風呂とご飯を済ませると部屋に戻る。
扉を開けた私の目に飛び込んできたのは、いつの間にかキッチンから持ってきたと思われるチョコなどのお菓子を食べているミニ武将達の姿。
「アンタ達いつの間に……。てかそこ私のベッド」
人の布団の上でお菓子を食べている武将達を摘まみ上げ机の上に置くと、信玄が突然才蔵の名を口にした。
視線を向ければいつの間にか信玄の横には佐助の姿がある。
どうやら私が寝ている間に佐助から今日の事を聞き、ミニ武将達は皆知っているようだ。
才蔵が現れた今、隠す必要もないだろうと信玄は自分達が知る情報を私に話す。
ことの始まりは佐助から聞いた通りで、姫に恋文を出した武将が揃い踏みでこの世界に現れた。
なら、信長もこの世界のどこかにいるかも知れないという考えから佐助を私の護衛につけていたようだ。
その予想は的中。
信長は欲しいもののためなら手段を選ばない人物。
何をしてくるかわかったものではないため、これからは更に佐助の護衛が厳しくなる。
元の大きさなら兎も角、小さい武将ならたいして怖くはないが、才蔵が現れたとき私は気づくことすらできなかった。
相手が刃物などを持っていれば、いくらミニ武将相手とはいえ危険。
何より、皆が心配してくれているのが伝わってくる。
きっと自分の前世の姫は、皆から大切にされ、思われていたに違いない。
明日から学校が始まる。
少しの不安を残しながらも眠りにつき、慌ただしく、ゆっくりできなかった休日は過ぎていく。