一羽の鳥は二羽となる《修正中》
名前変更
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高野 千良(たかの ちよ)
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世話係りの和京と共に奥州に来ているのだが、城へ向かうその前に城下を見たくなり寄っている最中だ。
いつもはお城の中ばかりでなかなかこのような機会はないため、こうして他国に来るのも城下を見るのも初めてのこと。
父上は私をとても大切にしてくれていたのだが、大切にするが故、私を城外へけして出してはくれなかった。
姫に生まれたくて生まれた訳ではないのに。
そんな父上が私を奥州へと向かわせた理由、それは、私を奥州へ嫁がせようとしているから。
あんなに大切に育てられても、結局国のために顔も知らない殿方の元へ嫁ぐ事になる。
そんなの嫌に決まっているが、国のためには犠牲になるしかない。
だからこそ、せめて今だけは自由でいたい。
「姫様、城下に寄っている時間などありませんよ。政宗様がお待ちです。早くお城に向かわねば」
後を追ってくる和京の目を盗みその場から離れると、一人城下を歩いて回る。
呉服屋、簪が売られているお店。
いつもは父上から貰った物ばかりだったが、それも全てここに並んでいるようなお店から買われていたのだろう。
店をキョロキョロと見ながら歩いていると、前から来た人に気付かずぶつかってしまった。
「大丈夫か?」
伸ばされた手は後ろへ倒れそうになる私の腰を支え、そのまま抱き寄せられてしまう。
「はい、すみません。余所見をしていて」
顔を上げると至近距離には、右目に眼帯をつけた殿方の顔があり、私は慌ててその人から離れると謝罪する。
その人物は、じっと私を見詰めたまま何も言わない。
怒っているのだろうかと不安に思っていると、その人の口角が上がる。
「そんな顔しねえでも怒っちゃいねーよ。ただ、綺麗だと思ってな」
突然の言葉に頬が熱を持つ。
私を見詰める瞳に視線を重ねると、その人は言葉を続け「着物が」と付け加える。
「くははっ! 自分だとでも思ったのか?」
「そ、そんなことは……」
吹き出すように笑う姿を見て、自分の勘違いに顔から火が出そうなる。
「姫様ーッ!」
自分の名を呼ぶ声が聞こえ振り返ると、少し離れた距離に和京の姿が見える。
「そうか、やはりお前が……」
「え?」
「いや、なんでもねえ。んじゃ、また後でな」
それだけ言い残しその人が去ると、走ってきた和京が私の元へとようやく辿りつき私を叱る。
手を引き連れて行かれる私には、見つかってしまったことより気になることがある。
さっきの人が言っていた「また後でな」とはどういう意味だったんだろうかと疑問を残し、私は和京と共に奥州のお城へと向かう。
お城に着くと、政宗様の家臣である片倉 小十郎様が部屋へと案内してくれる。
「殿はこの部屋にいらっしゃいます。和京さんは別の部屋へと案内致しますのでこちらへ」
「わかりました。では姫様、また後程」
残された私は、襖の前で一つ大きく深呼吸をすると意を決して襖越しに声をかけ中へと入る。
顔も知らない人の元へ嫁ぐことになるかもしれないのだと思うと、なんだか相手の顔を見ることができない。
「高野 千良と申します。この度は、お城へのお招き感謝致します」
今日から私はここで暮らし、お互いの仲を深め、政宗様に好かれなければならない。
そして国のために、私と祝言を挙げてもらわなければ。
「まさかお前が、千良姫だったとはな」
聞き覚えのある声に伏せていた顔を上げると視線が重なる。
私の瞳に映ったのは、先程城下で会った男の姿。
「あ、貴方様は先程の!」
「俺が奥州の伊達 政宗だ。やはりお前が俺の妻となる相手だったか」
この人の妻になるなんてまだ受け入れられないけど、国の為には仕方のないこと。
政宗様になんとしてでも気に入られ、婚姻を結んでもらうようにしなければここへ来た意味がなくなってしまう。
そんな事を考えていると政宗様が小十郎様を呼び、私を部屋へと案内するよう命じた。
「御意。その前に殿! 貴方という御方は、またも城下へ行くとは」
「自分の妻を出迎えに行ったまでだ」
「それなら城で御待ちください。勝手に出歩かれては困ります」
あの時、城下にいた政宗様は何も伝えず城から出たらしく、小十郎様は政宗様に説教をし、政宗様はそれを煩そうに眉を寄せ聞き流していた。
奥州の主君だというからもっと怖そうな人を想像していたけど、なんだかこうして見ていると自分と同じに思えるから不思議だ。
二人を見ていると、自分も城からよく抜け出して、城下へと出ていたことを思い出す。
だが、この人の妻となれば、もうそんなこともできず城の中に閉じ籠る日々になるのだろう。
そんなことを考え顔を伏せてしまいそうになったとき小十郎様のお説教が終わり、私は部屋へと案内された。
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「御待たせしてしまい申し訳ありません。部屋へと御案内致します」
小十郎様の後を歩き部屋へと案内されると、千良はお礼を伝える。
「和京様は彼方の角の部屋となりますので」
小十郎様は一礼するとその場から去ろうとしたため、千良はつい袖を掴み引き止めてしまう。
「っ、すみません……!」
袖からバッと手を放すと、千良は恥ずかしさから顔を伏せてしまう。
つい一人になるのが心細くて、気付いたら小十郎様を引き止めてしまっていた。
「姫様、もしよければ庭を散歩してみませんか?」
小十郎様は、千良の気持ちに気付いたのか散歩へと誘ってくれる。
「是非御願い致します」
笑みを浮かべ答えると、小十郎の口許にも微かに笑みが浮かんだ気がしたが、直ぐに立ち上がり庭へと案内されたため、見間違いだったのかもしれない。
千良と小十郎がのんびり庭を歩いていると池が見え、水の中では気持ち良さそうに泳ぐ鯉の姿がある。
「姫様は、殿との婚約がお嫌ですか?」
鯉を眺めていると唐突に聞かれ、なんと答えたらいいのかわからず戸惑ってしまうが、千良は自分の思っていることを口にしようと正直な気持ちを話す。
嫌と言うよりも、父上が決めた相手ではなく、自分が心から好意を持った人と添い遂げることができたらと千良は思ってしまう。
「今の時代では、それも叶いませんが」
想いを寄せる相手がいるわけでもないのだが、それでも、こんな想いもない婚約などしたくないと今でも思ってしまう。
それが、叶わないことだとわかっていても。
「すみません。このようなことを小十郎様にお話してしまって」
政宗の家臣の人になにを話してしまっているのだろうと、千良は慌てて謝罪する。
千良の国のことや父上のことを考えるのなら、この婚姻を成功させなければならないというのに、こんな話をついしてしまった自分に後悔する。
「謝らなければならないのは私の方です。殿はあのような御方ですから、今回の件は私が無理に引き受けるように説得したのです。殿は女人に興味を示したことがなく、少しでも変化があればと私の方が貴女様を利用したにすぎません」
千良のような小国と婚姻を結んだところで奥州には何の特もないのに、何故今回の件を引き受け入れたのか疑問に思っていたのだが、これで納得できた。
「頭を上げてください。利用しようと考えていたのは御互い様なのですから」
頭を下げ謝罪する小十郎を制止するように言うと、小十郎はゆっくりと顔を上げ千良へと視線を戻す。
「ありがとうございます。ですが、やはり今回の件をお受けしてよかったと私は思っております。殿のお気持ちに変化があったようですから」
「それはどういうことでしょうか?」
千良が尋ねると小十郎は、千良との婚姻を政宗に話した日のことを話し出す。
あの日、小十郎はなんとか婚姻の話を受け入れるように政宗を説得し、千良を招いて仲を深めるところからという条件で政宗は受け入れたようだ。
だが、やはりそんな話を受け入れたくない政宗は乗り気でないまま、千良が奥州に訪れる日がやって来てしまった。
そして当日の今日、先程千良を出迎えに城下へ行ったと言っていたが、本当は婚姻など結びたくないために逃げ出したらしい。