恋を教えてお狐様
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高野 千良(たかの ちよ)
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「付き合ってもないのに有り得ないよね。千良もそう思わない?」
「え? あ、うん。そうだね」
突然同意を求められ、それとなく頷き返事をするが、正直よくわからないのが本音だ。
そのためいつも二人の話を聞いて、こんな風に返事を返すだけの毎日。
私の気持ちなど誰にわかるわけもなく、話は更に続けられ、わからないながらも恋愛には興味があるため話だけは聞いていた。
だが、話を聞いていてもわかるはずもなく、恋人がいたら私もこんな感じのことをするのだろうかと考えてしまう。
男の人に抱きつかれるなんて想像しただけで頬に熱が宿ってしまうのに、実際にされたりなんてしたらどうなってしまうのか想像することさえ恥ずかしい。
でも、恋人がいたらそんな恥ずかしいことでさえしたいと思ってしまうのだろう。
「でね、私昨日彼氏と初キスしちゃったんだ」
そんなことを考えていると、キスという言葉が耳に届き、昨日のことを思いだしビクッと肩が跳ね上がる。
私のファーストキスはお狐様とはいえ、もうなくなってしまったことを思い出し肩を落とす。
大切にしていたものだけに、好きでもない人、いや、好きでもない神様としてしまったことに今更ながら落ち込んでしまう。
「どうしたの千良? あっ! もしかして、キスしたことあるとか?」
図星をつかれわかりやすく反応してしまうと、ニヤニヤとした友達に詰め寄られるが「お狐様と」なんて言えるはずもなく、返事に困っていると、運よく始業ベルが鳴りなんとか助かった。
そして授業が始まると、さっきのことを考えないように、黒板に視線を向ける。
ノートに書いていると、書き間違えてしまい消ゴムを取ろうとしたとき、視界の端に見覚えのある人物が映り込む。
まさかねと思いながら、恐る恐る再び窓へと視線を向けると、ガラス越しにお狐様がニカッと笑みを浮かべている姿が見え、どうやら私の考えは的中したようだ。
部屋で待ってるように言ったのにと、怒りで伏せていた顔を再び上げると、お狐様は上へと飛んで行ってしまった。
今すぐにでも教室を飛び出し追いかけたいところだが、授業中のためそうもいかず、授業が終わるともうダッシュで屋上へと向かう。
すると屋上では、プカプカと優雅に宙を浮くお狐様の姿。
「何でアンタがここにいんのよ」
「昨日言っただろ。24時間365日体制でついててやるって」
「はぁ……もういいわ。だけどね、私の邪魔だけはしないでよね」
強い口調でお狐様に言うと、私は次の授業が始まるため教室へと戻る。
すると、教室へと戻ってきた私に同じクラスの拓海くんが声をかけてきた。
「どうしたんだ? 授業が終わったとたん教室から飛び出してくなんてさ」
拓海くんは爽やか系のイケメンであり、そのうえ優しいため女子にかなりの人気がある男子。
どうやら突然教室を飛び出した私を心配し声をかけてくれたようだ。
「ううん、何でもないの、心配してくれてありがとうね」
「ならよかった」
爽やかな笑みを浮かべ言われた安堵の言葉に鼓動は小さく音をたてる。
女子達に人気な理由がわかるかもしれないと思ったと同時に予鈴が鳴り、席へとつくと次の授業が始まる。
その後の授業でお狐様が現れることはなく、気が散ることもないまま授業を受けることができた。
そして下校時間となると、いつものように帰路を一人で歩いて帰る。
「アンタ、あの拓海とかいう奴のことが好きなんだろ」
突然目の前にお狐様が姿を現し、私は驚き悲鳴に近い声を上げた。
「ッ、突然現れないでよね。ビックリするじゃない」
「こまけぇこと気にすんなって。で、拓海のこと好きなんだろ?」
好きかと聞かれても、恋をしたことのない私にはよくわからない。
優しくてかっこよくて勉強もできる。
そんな拓海くんのことを素敵な人だとは思うが、これは恋とは呼ばない気がする。
「好きというか、ただ気になるというか……って、なんで拓海くんのこと知ってんのよ!?」
「狐情報網をなめんなよ」
「何よ、狐情報網って」
「まぁ、俺にまかせとけってことだ」
何か思い付いたのかお狐様はニカッと笑みを浮かべながら言うが、私には嫌な予感しかしない。
そんな話をしながら歩いていると、あっという間に家へとつき、自室の戸を開けると鞄を机に置く。
椅子に座り今日出された課題を書き始めるが、とくにお狐様が邪魔をすることはなく、直ぐに課題も終わらせることができベッドへと横になる。
だが、昨日と同じように天井ではお狐様が浮いており、気になって眠ることができない。
「そこで見られてると寝れないんだけど」
「気にすんな」
「気にするわよ!! 床で寝てよね」
「やだね。なら俺ここで寝るわ」
「ッ、ちょっと?!」
お狐様は私の隣に横になると、スヤスヤと寝息をたてて眠ってしまう。
「早ッ」
お狐様とはいえ、尻尾と耳を除けば普通の人間の男の人のようで、隣で眠るお狐様を見ていると何だか頬に熱が宿るのを感じる。
気持ち良さそうに眠っているのを起こすことも出来ず、今日はこのまま眠るしかない。
隣を見るとお狐様との距離が近く、鼓動が小さく音をたて、私は布団を口許まで被ると瞼を閉じ眠りへとつく。
翌朝目を覚ますと、私は制服に着替え鞄を持つ。
だが、そんな私に黒い影が差した。
「よっしゃ、学校行こうぜ」
その影の正体は、宙でプカプカと浮かぶお狐様であり、あたかも当然といった様子でついて来る発言をしている。
「行こうぜって、今日もついてくるつもり?」
「当たり前だろ」
こうなってしまっては、何を言っても聞いてもらえそうにない。
兎に角余計なことだけはしないように忠告すると学校へ向かった。
恋を知りたいという願いを叶えてくれるためとはいえ、本当に自分の願いが叶うまでずっとこのままつき纏われるのだろうかと思うと溜息を吐きたくなる。
そして今も私の横では、プカプカと浮いているお狐様の姿がある。
だが、周りを歩く人達は全く気にする様子もなく、やっぱりお狐様は自分にしか見えていないのだと実感する。
そしてとくにお狐様が何をするわけでもないまま学校に着くと、お狐様には屋上にいるように伝え一人教室へと向かう。
「高野、おはよ」
「拓海くん、おはよ」
教室の扉を開けると拓海くんと目が合い、声をかけられ挨拶を交わす。
だがその時、何故か拓海くんの背後にお狐様の姿が見えた。
屋上に居るように言ったはずなのにと心の中で怒ると同時に、なにか企んでいるんじゃないかと不安に思えてきた。