恋を教えてお狐様
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高野 千良(たかの ちよ)
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今日も私は神社に御参りに来ていた。
家の近くには、お狐様が祀られている神社があり、その神社でお願いをすると、恋愛成就すると言われている。
そのため、片想いの人がよく訪れる神社なのだが、私のお願いは少し変わっていた。
それは、私には好きな人がいるわけではないから。
そんな私の願いはただ一つ。
恋愛をしたい、それだけだ。
今日も御参りをして家へ帰る。
そんな毎日を繰り返していた。
高校生である私の周りでは恋の話ばかりで、学校に行く度に皆は自分の彼氏の話で盛り上がっている。
恋を今まで一度もしたことのない私にそんな話がわかるわけもなく、いつも苦笑いで話を聞くことしかできない毎日。
そんな自分でも恋に興味がないわけではなく、逆に恋をしてみたい気持ちのが大きかった。
それが毎日、私がこの神社に来て御参りをする理由だ。
だが、とくに変化もないまま日にちだけが過ぎ、やっぱり私に恋なんて一生できないのかもしれないと最近では諦めかけていた。
そして翌日。
学校の帰りに油揚げを買い、今日も神社へと向かう。
これで最後にしようと決め、神社に着き油揚げをお供えすると、手を合わせてお願いをする。
「お狐様、どうか私に恋を教えてください!!」
いつもより長めに瞼を閉じて祈っていると、前からクチャクチャと音が聞こえてくる。
「ゲッ、生かよ」
突然声が聞こえ、ゆっくり瞼を開いてみると目の前には、耳と尻尾をはやした男の人の姿があり、その人の手には油揚げが握られている。
驚きで声が出せず男を見詰めていると、ふいに目が合ってしまった。
二人の間に沈黙が続きどうしようかと考えた結果、何も見なかったことにしてその男に背を向けその場から去る。
「おい、今絶対俺と目が合ったろ。あんた俺のこと見えてんだろ」
背後で叫んでいる声が聞こえるが、聞こえないふりをして止まることなく歩き続ける。
この声もきっと、全ては幻覚や幻聴に違いないと思いながらも自然と早足になる。
「おい」
「わッ!?」
「やっぱり見えてんじゃねぇか」
突然目の前に逆さから顔を出され、つい声を上げてしまった。
これは幻覚に違いないと自分に言い聞かせるように呟いていると、突然唇に柔かなモノが触れるのを感じ、私の頬には熱が宿り、バッと両手で口を押さえる。
幻覚や幻聴だと思っていたというのに、唇には触れた感触が残っている。
「な、何するのよ!!」
「こうすれば信じられんだろ」
証明なんて他にも方法があるだろうに、何故キスをしたのか理解できない。
「信じらんない……」
「まだ信じられねぇのかよ」
「そっちじゃないわよ!! アンタが私にキスをしたことよ」
初めてのキスは初恋の相手に取っておくはずだった私は、男をキッと睨み付け再び背を向け歩きだす。
男は声をかけてくるが知らんぷり。
初めてがこんな形でなど怒らずにはいられない。
「なに怒ってんだよ。もしかして、キスしたこと怒ってんのか?」
「当たり前でしょ」
「よし! なら、あんたの恋をさせてほしいって願い叶えてやるよ」
その言葉で足を止めた。
今まで恋を知りたくてこの神社にお願いに来ていたが、そんな話は誰にもしたことがない。
「何で知ってるの!?」
「まぁ俺、ここの神のお狐様だからな。だから俺にまかせとけって」
耳や尻尾、そして今。
宙に浮いているこの人物が人間で無いことは理解していたが、まさかこの神社のお狐様だったとは思いもせず愕然とする。
「私は、今までこんなのにお願いしていたなんて……」
「こんなのってなんだよ! こんなのって!」
そんなことがありつつも私は家へと帰ってきた訳だが、本当にアイツがお狐様なら、恋を教えてくれるって言うのも嘘じゃないのかもしれない。
なんて、宿題をしながらそんなことを考えていた。
だがそれよりも、今一番気になることがある。
「あー、鬱陶しいッ」
私の周りでは、プカプカと浮かぶお狐様の姿があり、視界に入れたくなくても入ってしまう。
「何であんたはついてきてんのよ」
「俺が恋をさせてやるって言ったろ。あんたが恋を知るまでは、24時間365日体制でついててやるからな」
「め、迷惑だ……」
24時間365日、こんなんと一緒にいたら気が散ってしょうがない。
姿だけでも目立つというのに、周りでプカプカと浮かばれていては視界に入り宿題どころではない。
「アンタ神様なんでしょ? 神社から離れていいわけ」
「ああ。神様っつっても、神社にずっといないといけない訳じゃねぇし、それに願いを叶えんのが神様の仕事だからな」
これは何を言っても帰るきはなさそうだと確信し、追い返すことを諦めると、私は宿題を済ませそのままベッドへ横になる。
お狐様の声が聞こえるが、瞼を閉じたまま開けようとはしない。
早く眠りにつき夢だったことにしたい。
それからどのくらいたったのか。
いつの間にか眠っていたらしく、目覚ましの音で目を覚ます。
眠たい目を擦りながら目覚ましを止め瞼を開くと、最初に目に飛び込んできたのは天井ではなく天井に背を向け私を見下ろしているお狐様の姿だった。
「うわッ!?」
「朝から元気な奴だな」
平然と宙に浮きながらお狐様は言うが、普通の人間なのだからこれが一般的な反応だ。
そしてこれで、昨日のことは現実なんだと受け入れるしかなくなった。
私は深い溜息を吐くとベッドから起き上がり、パジャマのボタンに手をかける。
だがその前に、今も自分へと視線を向けているお狐様の存在があることを思い出し、一度ボタンから手を離すと、お狐様へと視線を向ける。
「後ろ向いてて」
「何でだよ」
「いくら神様でも、肌を見られるなんて嫌に決まってんでしょ」
「めんどくせえな」
お狐様が後ろを向いたのを確認するし、ボタンへと手をかけ制服に着替える。
「じゃあ、私は学校行くけど、アンタはここで大人しくしててよね」
それだけお狐様に伝えると学校へと向かう。
アイツのせいで今日は少し家を出るのが遅れたため、少し足って学校へと向かう。
せめて学校では一人で過ごしたい。
そんな願いは叶うことはなく、学校に着くと私を待っていたのは、友達との恋バナトークだった。
「でさ、ソイツったらどうしたと思う?」
「何々?」
「突然私を抱き締めてきたんだって」
「嘘、何それ~」
いつものことなのだが、私にとってこの時間が一番退屈なものである。
恋愛どころか好きな人さえできたことのない私が話に入れるはずがない。