青い瞳に魅入られて《修正中》
名前変更
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高野 千良(たかの ちよ)
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「お話を聞かれたなら、小十郎さんはわかりますよね?こんな話あるはずがないと」
「はい、勿論」
「なら──」
「貴女は、どうやら政宗様が珍しい物好きと知った上で近づかれたのでしょう。一体何が目的なんですか?」
どうやら小十郎は、千良の発言を全て政宗に近づくためと思ったらしく、殺気を孕んだ視線が千良に突き刺さる。
政宗に諦めさせることにも失敗し、小十郎には誤解され、一体この先どうなるのかと不安が渦巻く中、取り敢えず誤解だけは解かなくてはと説明するが、それでも小十郎が信じることはなく。
当然といえば当然の反応なのだが、この反応は政宗にしてほしかったと愕然とする。
「兎に角私は、ここから出たいんです!!」
「その言葉が本当か、それとも、私をも信じこませようとしているのかはわかりませんが、それは無理な願いでしょう」
「何故ですか?」
「貴女は既に政宗様と約束を交わし、政宗様の物となったのです。自由に動くこともできず、ただこの城にいるだけの物という存在に」
小十郎の言う通り、理由はどうあれ千良は、政宗と約束を交わしてしまった。
政宗の物になる代わりに、千良が元の世界に帰る方法を探すという約束を。
だが、もし帰る方法が見つかったとしても、自分が政宗の物である以上、帰ることは叶わない。
それなら、自分がすることはただ一つだ。
「わかりました。なら私は、政宗に嫌われます」
「は?貴女は何を言って……。それより、様をお付けください」
「小十郎さんが私をどう思おうと構いませんが、それなら、私は政宗から嫌われるようにするだけです。それに、様をつけないのは業とです。私は未来から来たんですから、この時代の上下間系なんて知りません」
これから嫌われるように頑張らねばとはりきっている千良の姿に、小十郎は驚きの表情を浮かべる。
今まで、政宗に気に入られようとした者は腐るほどいたが、千良のように、嫌われようとする者など見たことがない。
「貴女は、変わっていますね」
「え?何か可笑しいですか?」
きょとんとする千良に、小十郎は大きく頷くが、千良本人はさっぱりわからず首を傾げる。
それから時間は過ぎ、部屋に一人となった千良は、これから先どうすればいいだろうかと考えていた。
そのとき、廊下から足音が近づいてくると、襖が勢いよく開かれ、政宗が部屋へと入ってくる。
「飯の時間だ。女、今夜から俺と共に食事をとることを許す。有り難く思うんだな」
「全然有り難くないんだけど」
「つべこべ言わず来い」
政宗は千良を物のように担ぐと、食事が二人分用意されている部屋へと連れていく。
畳へと下ろされると、膳の前に座るように促されたため、千良は渋々ながら政宗と向かい合う形で座る。
「何をしている。お前も手を合わせろ」
つい言われた通りに膳の前で手を合わせてしまうと、政宗はそれを確認したあと箸を掴み食べ始める。
嫌われなくてはならないというのに、このままではいけないと思い考えを巡らせていると、部屋に置かれた沢山の物が視界に入る。
「そこにあるもの全て、俺が集めた物だ。どうだ、珍しいものばかりだろう」
どうやらここは政宗の部屋のようだが、千良のいた時代の方のが科学が進んでいるため、ここに置かれている物は珍しくもない物ばかりだ。
ここで一言、珍しくもなんともないと言えば、この人は自分を嫌ってくれるだろうかと思い視線を向けると、目の前に座る政宗の視線と重る。
青くて綺麗なその瞳から目が逸らせず、折角の嫌われる機会を逃してしまった。
それから会話もないまま食事が終わると、静寂が部屋を包み込む。
このままじゃ嫌われることなんてできないと思った千良は、取り敢えず何か話さなくてはと、咄嗟に思ったことを口にする。
「政宗って、なんで珍しい物を集めてるの?」
なんとも普通な質問に、自分で自分に溜息をつきたくなったが、政宗の瞳が揺らいだのを千良は見逃さなかった。
この揺らいだ瞳を見るのは二回目だ。
一回目は、政宗に何故自分を連れてきたのか尋ねたときだ。
あのときも政宗は、どこか悲しそうに、寂しそうに瞳を揺らしていた。
「こっちへ来い」
政宗は立ち上がり窓へと行くと、千良を呼ぶ。
一体何だろうかと思いながら近づいていくと、伸ばされた手に腕を掴まれ、そのまま政宗の胸へと引き寄せられてしまう。
突然のことに動揺する千良の耳に、見てみろという政宗の声が届き顔を上げる。
するとそこには、沢山の星々と一際輝く月の姿があった。
「とても綺麗ですね」
「そうだな。だがその綺麗という言葉は、無数にある星や、光輝く月に向けてのものだ」
悲しげなその声音に、夜空に向けていた視線を政宗に向けると、月の光や星々の煌めきを映した青い瞳の美しさに、千良は息を呑んだ。
口を閉ざしてしまう千良だったが、政宗の瞳が再び揺らいだことによりハッとする。
とても綺麗な瞳なのに、今はその瞳が悲しく見え、まるで泣いているかのような瞳を見つめていると、政宗はポツリと言葉を漏らす。
「何故この青い夜空は、星や月のように輝けないのだろう……」
政宗が漏らしたその言葉に、一体どんな意味があるのかはわからないが、悲しげなその瞳に吸い寄せられるように、気づけば千良は政宗を抱き締めていた。
勝手に動いた自分の体に驚き、千良は政宗からバッと離れると、すみませんとだけ言い残し自室へと戻っていく。
自室に続く廊下を歩く中、何故自分はあんなことをしたのかと考えるが答えはでない。
ただ、ああしなければいけないと思ったのだ。
それから翌日の朝、政宗は千良と一緒に朝食を食べるために千良の部屋にやって来ると、まとも千良を担ぎ無理矢理部屋へと強制的に連れて行く。
昨日のこともあるため気まずいというのに、政宗は全く気にする様子もなく朝食を食べている。
「食べぬのか?昨夜も食さず部屋に戻っただろう」
「あ、そういえば……」
昨日の夜は何も食べていなかったことを思い出し急にお腹が空いてくると、千良は箸を手に取り朝食を食べる。
二人無言のまま朝食を食べ終え自室へと戻ろうと立ち上がる千良だったが、腕を掴まれ制止されてしまった。
「誰が戻っていいと言った。昨夜もお前は勝手に部屋に戻っただろう。お前は俺の物なのだから、俺の許可なく動くことは許さん」
「なっ!?別に私はなりたくて貴方の物になったわけじゃないから!!そもそも、貴方が勝手に決めたんじゃない」
「約束は約束だ。忘れたとは言わせんぞ」
約束という言葉を言われてしまうと言い返すこともできず、渋々その場に留まるしか今の自分にできることはない。
こんな自分勝手な人が寂しいや悲しいなんて思うはずがない。
もしかしたら、昨日のは全て気のせいだったんじゃないかとさえ思えてしまう。
「で、約束って言うからには、政宗も私との約束を忘れてないんでしょうね?」
「決まっている。だが、まだこれといった手がかりは見つかっていない」
まさか本当に探してくれているとは思わず、どうやら約束は守る人のようだ。
だが、今のままでは帰り方が見つかったとしても、帰してはくれないだろう。
何とかして嫌われなければと思っていたその時、部屋に小十郎がやって来た。
「政宗様、馬の用意ができました」
「よし、では出掛けるとするか」
何処かへ行くのだろうかと思っていると、またも千良の体は宙へと浮く。
「ちょっ!?何で私を担ぐのよ!!」
「出掛けるからに決まっている」
「え、私も?」
「お前と共に出掛けるために、馬を用意させたのだから当たり前だろう」
だからって担がなくてもいいじゃないと抗議するが、そんな千良の言葉など聞いてはもらえず、結局城の外まで来てようやく地面に下ろされた。
するとそこには、昨日と同じ黒と白の馬の姿がある。
「小十郎、俺はこの女と二人で出掛けると言ったはずだが」
「はい、聞いておりましたよ。ですが、お二人だけで行かせるわけにはいきませんので、私もお供いたします」
こうして三人で出掛けることになった訳だが、こうなると、一つの不安が頭を過る。
そしてその不安は的中し、政宗は黒い馬に千良を乗せると自分も跨がり馬を走らせた。
そのあとを小十郎も追ってくるが、やはり政宗の馬の速度は早く、振り落とされないようにするので精一杯だ。
そんな恐怖とも言える道中だったが、馬が止まりようやくその恐怖から解放されると、着いた先は森の中だった。
「ここからは歩いていくぞ」
馬から下ろされると、三人森の奥へと進んでいく。
一体この先に何があるのだろうかと思っていると、目的の場所が見えてくる。
そこは泉だった。
草木に囲まれ、木漏れ日に照らされた泉は幻想的であり、千良はその場に立ち止まると、その光景を見詰めていた。