普通じゃない日々《修正中》
名前変更
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高野 千良(たかの ちよ)
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今瞳に映るのは、満天の星空だった。
沢山の星が輝き、少し雲はあるものの、綺麗な輝きを放つ光景が私の目の前に広がっている。
私は毎晩深夜になると、二階のベランダから星空を眺めていた。
周りの建物の明かりも無くなり、星が見えやすくなるこの時間に見る夜空が好きで決まって眺めている。
今夜も星空を眺めていると、目の前に何かがヒラヒラと舞い降りてくるのが見え、そっと両手を前へ差し出す。
掌にふわりと舞い降りたのは花びら。
月夜に輝く綺麗な花びらがなんなのかは直ぐにわかった。
「桜……?」
指で摘まみ月の明かりにかざすと、花びらは綺麗に輝いて見える。
今は冬も終わり頃、桜なんて季節外れだというのに一体どこから来たのだろうかと思っていると、突然影が射し、視線を上げた私の喉元に鋭く光る刀の刃先が向けられていた。
全く状況がわからず真っ直ぐに前を見ると、雲で隠れてしまっていた月が顔を出し、刀を握っている人物の姿が月明かりに照らされ浮かび上がるのは着物を着た男性。
今の時代でも着物を着る人はいることはいるけど、こんな時間に人の家のベランダにいるなんて不審者でしかない。
「女、貴様は何者だ」
「いやいやいや、私が聞きたいんだけど!?」
「命が惜しければ、黙って俺の質問に答えろ」
男性を刺激しないように質問に答えるのが良さそうだと判断し、この家に住んでる者だと話せば「ここが貴様のような薄汚い女の家だと」なんて言葉が返ってきてムカッとしてしまう。
不審者に薄汚いなんて言われれば流石に怒るのは当然。
そんな私のことなど気にする様子もなく、男性は私をじっと見詰めた後、何かに納得したように頷き刀を鞘へと収めると「小さくはあるが、面白い造りの城だな。小国の姫といったところか」なんて口にする。
小国とか姫とか言っている言葉の意味がわからず首を傾げている間も、男性は何だかよくわからないことを一人で話していて、耐えきれなくなった私は男性に何者なのか問う。
「この俺を知らぬだと。いいだろう、教えてやる。俺の名は、織田 信長だ」
予期せぬ名に今すぐ部屋の中へと駆け込みベッドに置いたままにしていた携帯で110番したい気持ちになる。
これは電波さんで危ない人に違いない。
隙を見つけて部屋にあるスマホを取るためには、今は男性の話に合わせる他ない。
取り敢えずこの人がなんで家のベランダにいるのかを尋ねてみれば、家臣の人達があまりに煩いから桜の木に登って逃げたところ、地面に降りたと思ったらここにいたらしい。
またよくわからないことを言い出したと思っていたとき、あることを思い出し握られていた掌を見てみると、そこには先ほど空から降ってきた桜の花びら。
もしかしたら、この男性が言ってることは事実で、今目の前にいるのは織田 信長本人なのではないかと思い始めてしまう。
この季節に桜なんて咲かないし、そもそもこの辺りに桜の木なんて一本もない。
信じがたい事ではあるけど、この話が事実だとしたら全てに納得がいく。
「突然昼が夜になっていたのにも驚いたが、いつの間にか知らぬ国へと来ていたことには特に驚いたぞ。一体ここは何という国だ」
興味津々といった様子の信長さんにどう今の現状を説明したらいいものか。
戦国時代の人に過去や未来の話をして通じるのかと考えたところで話してみないことにはわからないと思い説明を試みる。
目の前にいる人物が教科書にも載ってるあの織田 信長なんて未だに信じられないけど嘘を言っているようにも見えない。
私は自分が考えついた結論を信長さんにもわかるように説明することにした。
そう、タイムスリップ。
どういうわけかはわからないが、何らかの原因で信長さんは未来に来てしまったと考えるのが妥当。
ファンタジーな気もするけど、今の状況から考えつくのはこれくらいだ。
信長さんは私の話を聞いて黙ってしまった。
やっぱり戦国時代の人にこんな話をしてもわからなかったのかもしれない。
私でさえ信じがたいことだというのに歴史上の人物に信じろという方が無理な話だと半分諦めかけたとき、黙り込んでいた信長さんの口が開く。
「世界には、俺の知らぬことが山程あるからな。ありえなくもない話だ」
「信じてくださるんですか」
「ああ。貴様のような薄汚い女が姫という方のが信じ難いからな」
いちいち発言に棘があるけど、流石織田 信長と言うべきか。
戦国時代を生きる人間が一回説明しただけで理解したうえに、この話を信じている。
だが問題はここから。
タイムスリップをしたとして、その帰る方法がわからない。
このまま知らん振りというわけにもいかずどうしたものかと悩んでいると「こうなってしまったら仕方あるまい。元の時代に戻れるまで世話になるとしよう」なんて言い出した。
確かにそれが現段階での解決案ではあるけど、それって信長さんと同棲ってことになるわけで。
なんでこの人は今の状況をこんなあっさりと受け入れられるんだろう。
それどころか楽しんでいるようにさえ見えてきた。
だからといってこのままにすることもできず、私は信長さんの話を受け入れ空いている部屋へと案内する。
中に入るなり珍しそうに周りを見回し瞳を輝かせている信長さん。
戦国時代の人間にとって珍しい物ばかりだから無理はないけど、未だこの家を城と呼ぶのはなんとかならないものか。
取り敢えず部屋も気に入ってもらえたところで眠気も限界になってきたので今日はこれで就寝とし、私も自室へと戻るとベッドに横になる。
ベランダから夜空を眺めていただけなのに、まさかこんなことになるなんて予想できるはずがない。
明日起きたら夢だったなんて落ちを期待したいけど、まだ入ったばかりの冷たい布団が現実だと突きつけてくる。
それからどれくらいの時間が経ったのか、いつの間にか眠っていた私の耳に遠くから誰かが呼ぶ声が聞こえてきた。
煩いなと思いながら重たい瞼を薄く開ければ信長さんの姿がそこにはあり、覚醒しきってない私は少しの間信長さんを見詰めハッと目を見開く。
「なに人の部屋に勝手に入ってきてるんですか!?」
「そんなことはどうでも良い」
ここは私の部屋でありどうでもいいことではないと怒るも「朝から煩い娘だ」と耳を塞ぐのを見た私は「煩くさせてるのは誰なんですか」と更に怒る。
昔の人は皆こんな感じの人ばかりなんだろうか。
すっかり目が覚めてしまった私は溜息を吐き時計を見れば朝の六時。
折角の三連休だというのに仕事でもない日に早く起こされ渋々一階のリビングへとおりていく。
朝食を作ろうと冷蔵庫を開けるが、一人で適当に済ませるはずだったため材料は少なく、あるのは玉子と味噌くらい。
これで作れる物といったら、ワカメと味噌があるから味噌汁と、玉子があるから目玉焼きくらいだろう。
朝はそれだけで済ませて後からスーパーへ買いに行くことにし、一人増えた分も含めて二人分の朝食をさっと作る。