アナタと私の秘密の恋
名前変更
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【デフォルト】
高野 千良(たかの ちよ)
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「クール、ご飯できたよ」
「わーい! いただきまーす」
千良も手を合わせると、お昼を食べ食器を片付ける。
「僕が人間だったら……」
「え?」
食器を洗う千良の姿をじっと見つめていたクールが、ポツリと溢した言葉に振り返る。
だが、そこにはすでにクールの姿はない。
気のせいだったのだろうかと首を傾げると、千良は片付けを続ける。
「これでよしっと! クール、一緒に遊ぶわよ」
振り返るが、そこにクールの姿はなく、何時もなら水の流れる音が止まると直ぐにやって来ると言うのに、今日はなかなか現れないのを不思議に思った千良はクールを探す。
「クール、片付け終わったわよー」
名前を呼びながら探すが、どの部屋にもクールの姿はなく、こんなこと今までなかった千良は慌てて外に飛び出すとクールの名を叫ぶが、何時もは聞こえる声が今は聞こえてこず、千良は必死にクールを探す。
だが、どこを探してもクールは見つからず、人に聞いても見た人はいない。
「もしもこのまま、クールが見つからなかったら……」
考えただけで胸が苦しくなり、目には涙が滲み視界を歪ませる。
大切な存在がいなくなるなど、考えられるはずがない。
「クール……」
絞り出すように千良の口からクールの名が呟かれたその時、頬に冷たい何かが触れる。
横を見ると、そこには泥だらけになったクールの姿があり、クールは千良の涙を舐め取っていた。
「クール、アナタ何処へ行ってたのよ。こんなに汚れて」
「わわわッ!! ダメだよ千良、汚れちゃうよ」
思い切り抱き締める千良だが、汚れないようにと離れようとするクール。
そんなクールを千良は抱き締めたまま放そうとしない。
クールの体温が温かく、傍にいることを実感する千良だが、それよりも今は聞かなければいけないことがある。
「で、そんな泥だらけになって何をしていたの?」
「人間に少しでも近づけるように、いろんな人を観察してたんだよ」
何故そんな事をしたのか尋ねると、どうやらクールは千良の助けになりたいといつも思っていたようだ。
だからこそ、少しでも人間の事を理解して、千良の助けになれるように人間観察をしていたらしい。
勝手に何処かへ行ってしまい怒っていた千良だが、自分の為にしたことだとわかると、怒りも何処かへといってしまう。
「それで、なんで人間観察してたらそんなに泥だらけになるわけ」
「子供に見つかっちゃって逃げてたら、泥水にバシャッ、ってね?」
「もぅ、しょうがないんだから。お家に帰ったらお風呂だからね」
しゅんと落ち込むクールを再び抱き締めると、汚れちゃうよ、とまたクールは千良の腕の中でおろおろしだす。
そんなクールの耳元に口を近づけると、千良は掠れる声で口にする。
「もう、私の傍からいなくならないでね……」
その不安げな声音に、クールがはい、と返事をすると、二人家へと帰る。
空はすっかり暗くなっており、さっきお昼を食べたかと思ったらもう晩御飯だ。
どれだけ自分が必死に探していたのかを実感し、千良はクスリと笑みを溢す。
「どうしたの?」
「ふふ、なんでもなーい」
帰路を歩き、周りに誰もいないことを気にしつつクールと会話をする。
それが少し悲しくもあるが、こうして二人笑い合っていられるなら、少しのことは我慢しなくてはいけない。
それが、クールに恋をした千良の運命なのだから。
家に着くと、千良はまずクールをお風呂へと入れる。
泥で汚れた体を綺麗にするのだが、お腹を洗う時はいつも気持ち良さそうに目を細めているのが可愛くなり、つい洗う時間が長くなってしまう。
「よし! これで綺麗になったわ」
最後に、風邪を引かないように体を綺麗に拭くと、クールにはリビングで待つように伝え、千良もお風呂へと入る。
今日は沢山走り回ったせいか、お湯に浸かると一気に疲れが取れていく。
「結局私も、他の皆と同じだったんだよね……」
犬と人間が話すことを気味悪がる人のように、千良もクールが犬だからと意識していたのかもしれない。
そんな千良の気持ちを感じ取ったからこそクールは、人間に少しでも近づこうとしたのだろう。
千良がお風呂から上がると、扉の前で待っていたクールが千良に飛び付く。
リビングで待っているように伝えたはずだが、どうやらクールはまだ構ってほしいようだ。
「もう、まだ遊び足りないの? 明日もまだ学校は休みだから、続きは明日ね」
千良の言葉にしゅんとするクールだが、そんな顔をされては構わないわけにはいかなくなる。
しかたないなぁ、と千良が言葉を漏らせば、やったーっと喜びの声を上げながらまたもクールは千良に飛び付く。
「嬉しいのはわかったけど、このままじゃ遊べないわよ?」
遊べないと言う千良の言葉に、そうだねと頷くと、クールはスッと千良から離れる。
何をして遊ぼうかと二人仲良く話す日常風景。
誰にも話せないこの恋は、一体どうなってしまうのかなんてわからないが、それでも、今はこうして笑っていられればいいのだと思った。
《完》