アナタと私の秘密の恋

名前変更

名前変更
夢主(主人公)のお名前をこちらで変えられます。

【デフォルト】
高野 千良(たかの ちよ)

※一部名前が登場しないお話もあります。
名字
名前

 どんな人も恋をする。
 だが、恋はするものではなく落ちるものであり、千良も恋に落ちた一人だった。

 そんな千良の想い人は、他の人の恋とはかなり違う。

 知られてしまえば変な目で見られることはわかっているため、千良はこの恋を皆に隠している。



「ただいま、クール」

「お帰り、千良!」



 家の前で出迎えてくれるクールの頭を撫で、千良はクールと家の中へと入る。

 これから夕食の準備をしないといけない千良は、クールには先にご飯を食べているように言う。



「嫌だ! 僕は千良と一緒に食べたいから、夕飯ができるのを待つよ」

「ふふ、わかったわ。じゃあ、もう少し待っていてちょうだいね」



 クールは千良の言葉に頷き、お利口に座って待つ。

 あまり待たせては可哀想だからと、千良はさっと簡単なもので夕食を作るとテーブルの上に並べる。



「食べましょうか」

「うん!」



 まるで子供のようなクールを見ていると、千良の口許にはいつも笑みが浮かべられる。

 だが、子供っぽく見えてもクールは千良と同い年だ。

 夕食を食べ終わると、千良はクールを抱き締め、愛してるよと耳元で囁く。



「僕もだよ! 僕も千良を一番愛してる」



 二人は軽い口づけを交わすと、1つのベッドに二人で横になり一緒に眠る。

 クールは千良が恋に落ちた相手であるわけだが、何故千良は皆に話そうとしないのか。

 いくら子供っぽいからといっても、変な目で見られるることはないだろう。

 だがそれは、クールが人であるならの話だ。

 クールは犬であり、クールの言葉がわかるのは千良だけだ。

 もし好きな相手が犬などと知られれば、確実に周りからは避けられバカにされるだろう。


 そして翌日の朝、今日は学校が休みのため、千良はクールと一緒に散歩という名のデートへ出掛ける。

 街の市場を見て回り、ついでに買い物を済ませると、近くのベンチに座り一休みする。



「ふぅ、これだけ買えば、次の休みまで大丈夫そうね」



 千良は家を出ているため、今は独り暮らしだ。

 家を出た原因は、両親から気味悪がられているからだ。

 小さい頃、クールを貰った日から、千良はクールと会話ができていた。

 ただ、会話ができる動物はクールだけであり、他の動物の言葉はわからない。

 そのため、会話をするのはクールだけだった。

 最初は、小さい子が犬と話をしているのだと気にしなかった両親だが、千良の年齢が上がるにつれ、それでも話続ける千良に両親は言ったのだ。



「もう貴女も15なんだから、何時までも犬と話すものじゃないわ」

「母さんの言う通りだぞ」



 千良にとっては、クールと会話ができるのは当たり前のことであり、両親が何故クールと話してはダメだと言うのかわからなかった。


 そんなある日、両親が仕事でいない日に千良は友達を家へ呼んだ。

 両親の前でクールと話さなくなっていた千良だが、今日は友達しかいないため、クールとも普通に話すことができる。



「ふふ、今日はそんなことしてたのね」

「ねぇ、誰と話してるの?」

「え? クールよ。他には貴女しかいないじゃない」



 この時、千良は知ったのだ。
 クールと話せるのは自分だけだったのだということを。

 その日、千良の家に来た友達は、千良のことを犬と話す気味の悪い奴と皆に話、千良は友達がいなくなった。

 その噂は両親の耳にも入り、味方など誰もいなくなってしまったことに千良が涙していると、クールだけは千良を慰め味方でいてくれたのだ。

 そして千良は決めた。
 高校生になるとともに独り暮らしを始め、クールと共に暮らすことを。



「何を考えてるの?」

「うん……。ちょっと前のことをね」



 曇る表情に気づいたクールは、千良の手に自分の手を重ねる。

 その手は人間とは違い犬なのだと思うと、千良は悲しい気持ちになり、クールを抱き締めた。



「なんで……なんで私とクールの恋は誰にも認められないんだろう」

千良……」



 誰にも言えず、誰にも認められないであろう恋は、とても苦しいものだ。

 差別する人間より、犬だとしても差別しないクールの方が、何倍もいいと思う千良だが、他の人のように堂々としていられないのが嫌で仕方がない。

 こんなにも愛しているのに、それを口にすることができないことが苦しくて辛い。



千良の気持ち、僕はわかってるよ。千良は、僕のために泣いてくれてるんだよね」

「だって……だって…………ッ、クールは私の大切な人だもの!!」



 人間と同じ様に食事をし眠るというのに、この子は犬だと皆が言う。

 千良がクールを想うように、クールも千良を思っている。

 それなのに、人と犬は違うと何度も言われ続けることは、千良にとっても、そしてクールにとっても辛く悲しいことなのだ。



「ありがとう、千良。でも大丈夫だよ。僕は千良がいてくれれば、誰に何を言われようと構わないんだから」



 ニコニコとするクールの尻尾は左右に揺れており、千良は自分の涙を拭う。



「そうだよね。私とクールの想いは変わらないものね」



 クールの一言で、先程まで悲しかった気持ちが不思議と消え、そろそろ帰ろうかと千良が言うと、二人並んで帰路を歩く。

 たとえ犬であっても、心が通じ合い想い合えれば、それだけで今はいいのかもしれない。
 今ある日々が二人の幸せであることに、なんの変わりもないのだから。

 二人家へと帰ると、すでにお昼を過ぎていたため、千良はお昼を作り始める。
1/2ページ
スキ