このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

近づく鈴の音

 私の傍には猫がいる。
 名前は無いと言いたいところだけど、ブルーという名を付けた。
 毛は紺色。
 瞳は青く美しい事から、ブルーと名をつけたんだけど、あまりに安直だなと自分でも思う。

 ブルーは不思議な猫で、私以外の人には見えていない。
 最初は幽霊かなにかなんだろうかと怖くもあったが、今ではとくに気にしていない。
 ただ、首に付いた鈴でリンリンと奏でながら着いてくるだけの存在に、幽霊だとか怖いという感情は無くなっていた。

 そんなある時、ふと思う。
 ブルーの首には鈴が付いている。
 なら、飼い猫だったんだろうか。
 今まで心地良い音色にばかり気を取られ考えもしなかった。



「にゃー」



 私が考えていることがわかるのか、ブルーはいつもタイミングよく鳴く。
 今もそうだ。



「アナタ、本当に何者なの?」



 その問に応えるように、ブルーは私のそばを離れると歩き出す。
 立ち止まってこちらを見るブルー。
 ついて来いと言っているみたいで、私はその後を追う。

 離れすぎない微妙な距離を保ちながら歩くブルー。
 しばらく歩いてついた先は、私が通う学校。
 ブルーは校門を通り過ぎ、校舎の中へ入ると階段を上っていく。

 着いたのは屋上。
 まだ十七時過ぎの夕暮れ時のこの場所には、部活中の人達の声が聞こえる。
 一体ここに来て何をするんだろうかとブルーを見ると、私の方を向き座ったその口がニッと笑う。

 初めて見る猫の、ブルーの笑顔に背筋がゾクッとするのを感じる。
 何故かはわからない。
 だけど私の中で危険を知らせるサイレンが鳴っている。
 この場から逃げ出せと警告するように。

 先程まで眩しいくらいに照らしていた夕陽は一瞬にして消え。
 聞こえていた生徒たちの声も聞こえなくなる。
 闇が私を包む中。
 ブルーの姿だけはハッキリと見えていた。



「ブルー……?」



 震える声でその名を口にした瞬間、ニッと笑ったブルーの姿が瞳に映る──。


 翌日。
 朝のニュースで、屋上から飛び降りた生徒の話が流れた。
 最近よく、色々な学校で飛び降り自殺が起きていた。

 立て続けに起きたことから、自殺ではなく殺人じゃないかと捜査がされたものの、亡くなった生徒に接点もなく、最終的には自殺として扱われた。



「何か最近自殺のニュースばっかだよね」

「そうね。望結みゆ、アナタは悩みとかないわよね?」

「あるわけないよー。じゃあ、行ってきまーす」



 私に悩みなんてない。
 明るさだけが取り柄なんだから。
 なんて思いながら学校に向かっていたら「リンッ」と鈴の音が聞こえた。

 いつの間にいたのか、私の足下には猫がいた。
 瞳が青い、綺麗な猫が──。


《完》
1/1ページ
    スキ