ゴロ
猫は長く生きると、化け猫になると聞いたことがある。
そんなのただの作り話で、昔の人が考えたものなんて思っていたのに、私は偶然にも見てしまった。
それは、夏休みのこと。
お盆ということで、田舎の祖父母の家に家族で訪れていた。
正直、田舎って何もないし退屈で、何よりアイツがいるから私は正直来たくなかった。
着いて家の中に入れば、私をギロリと睨むアイツがいる。
真っ黒で、目が鋭くて、祖父母や私の両親には擦り寄るのに、私にだけ何故か近づくどころか少し離れた場所から睨むアイツは黒猫のゴロ。
毎年来てるけど、コイツとだけは仲良くなれない。
私が小さな頃からいたらしいゴロは、人の年齢からしたら長寿。
そんなゴロと、私は記憶がある頃から嫌っているのを覚えている。
まるで人を選んで甘えて、私はこの中で格下だと言われているみたいでイラッとする。
「お墓参りに行くけど、本当にお留守番してるの?」
「今年はいいが、来年は行くんだぞ」
両親と祖母がお墓参りに出かけ、私は畳の上でゴロンと仰向けに横になり天井を見つめる。
何もなくてつまらないけど、こんな暑い中お墓参りに何て行きたくない。
鞄から音楽プレイヤーを取り出し、イヤホンを耳につける。
好きな音楽を流しながら瞼を閉じ、一体どのくらい眠っていたのか。
目を覚した私は横を向いて眠っていて、ボンヤリとする頭で目の前の光景を見ていた。
ゴロの尻尾が二本と、二本足で立っている姿に「ゴロって立てたんだ」なんて呑気に思っていると、何やら声が聞こえる。
両親達が帰ってきたんだろうかと思いながら、ボーッとした脳がハッキリとしてきた。
「昔から気に入らん小娘だったが、今年も来やがったか」
聞き覚えのない声は、両親でも祖父母でもない。
一体誰がと思たとき、私は自分が見ている現実に息を呑む。
尻尾が二本、そして二本足で立ち続けているゴロ。
明らかに可笑しい。
確かに、二本足で立ち上がる猫はテレビでも見たことはあるけど、それとはどこか違っている。
そのとき、振り返ったゴロと目が合い、私はドキッと心臓を高鳴らせ、ゴロは目を見開いた。
「見られちまったか。まあいい、お前には沢山言ってやりたい事があったからな」
「ゴロが……喋ってる」
状況が理解できていない私を置いて、ゴロは淡々と話し出す。
まるでお年寄りが若者に説教するみたいに「誰もいないからと寝転がるな」だとか「墓参りは毎年行け」だとか、何か聞いててイライラしてくる。
私は起き上がると「何で猫にそんなこと言われなきゃいけないわけ」と、ムッとした表情になる。
いきなり喋りだしたかと思ったらお説教。
コイツは言葉が話せてもやっぱり仲良くなれない猫だ。
「年寄りの言う事は素直に聞くもんだ」
「誰が猫の言う事なんて聞くのよ」
「小さな頃から見てきたってのに、生意気な小娘だな」
何が見てきたんだか。
睨み続けてきたので間違いじゃないのかと突っ込みたくなる。
私には一度も懐いたことなんてないくせに、飼われてる猫が生意気だ。
「てか、何でアンタ話せるわけ」
「今更そこか。お前の頭が心配になるな」
イチイチ腹が立つ猫だ。
話さない状態でもイラッとするのに、話せる今は更に私をイライラさせる。
ゴロはやれやれといった素振りを見せると、自分が化け猫になったことを話し出す。
猫は、決められた年月生きると化け猫となり、二足で歩いたり、人の言葉が話せるようになったりする。
化け猫か、そうでないかの見分け方は尻尾。
二つに分かれているのは化け猫の印。
普段化け猫は、普通の猫と変わらず生活をする。
だが、お盆のときだけその姿を表すことが許されている。
ただし、見せることができる相手は一人と決められていた。
「残念だったね。折角の一人が私になっちゃって」
「いや。ワシが話したかったのは小娘、お前だから丁度よかった」
世話をしている祖父母のどちらかと話したかったんじゃないかと思って嫌味を言ったんだけど、ゴロが私と話したかったとはどういうことなのか。
さっきの口煩いことをただ言いたかったのか、それとも私が嫌いだということを直接言うつもりなのか。
そんなことを考えていた私の耳に聞こえたのは「ありがとう」の一言で、その言葉を聞いたあと目を覚ました私は、畳の上で眠っていた。
部屋の中をキョロキョロとすると、部屋の隅でゴロが丸まり眠っている。
その尻尾は一本で、さっきのは夢だったのかと不思議に思いながら「ゴロ、アンタ話せるの」と声をかけるがやはり返事はなく、夢だったんだと何だかホッとする。
しばらくして両親達が帰ってくると、お婆ちゃんが隅で丸々頃な近づき触れる。
お婆ちゃんは何度もゴロを撫で「良く生きたね」と一言漏らしす。
そう、ゴロは亡くなっていた。
その日、私はお婆ちゃんからある話を聞かされた。
ゴロは、私がまだ小さな頃に見つけた猫なんだと。
まだ赤ん坊だった私は、お婆ちゃんにおんぶをされて散歩をしていた。
その途中、背中で私が何かを訴えだし、どうしたんだろうかとお婆ちゃんが顔を向けると、私の小さな手がドブの溝を指差しております、そこには子猫がいた。
弱っていた子猫、それがゴロ。
お婆ちゃんはゴロを飼うことに決めた。
それから毎年私が来ると、ゴロは離れたところからジッと私を見ていたという。
お婆ちゃんが言うには、ゴロは自分を助けてくれた私をジッと見守っていたんじゃないかと言っていた。
その時、ふと夢で言われたゴロの言葉を思い出し、私の頬には一筋の涙が伝う。
この涙の意味はわからない。
ただ、ゴロはやっぱり化け猫になっていたんじゃないだろうかと思った。
《完》
そんなのただの作り話で、昔の人が考えたものなんて思っていたのに、私は偶然にも見てしまった。
それは、夏休みのこと。
お盆ということで、田舎の祖父母の家に家族で訪れていた。
正直、田舎って何もないし退屈で、何よりアイツがいるから私は正直来たくなかった。
着いて家の中に入れば、私をギロリと睨むアイツがいる。
真っ黒で、目が鋭くて、祖父母や私の両親には擦り寄るのに、私にだけ何故か近づくどころか少し離れた場所から睨むアイツは黒猫のゴロ。
毎年来てるけど、コイツとだけは仲良くなれない。
私が小さな頃からいたらしいゴロは、人の年齢からしたら長寿。
そんなゴロと、私は記憶がある頃から嫌っているのを覚えている。
まるで人を選んで甘えて、私はこの中で格下だと言われているみたいでイラッとする。
「お墓参りに行くけど、本当にお留守番してるの?」
「今年はいいが、来年は行くんだぞ」
両親と祖母がお墓参りに出かけ、私は畳の上でゴロンと仰向けに横になり天井を見つめる。
何もなくてつまらないけど、こんな暑い中お墓参りに何て行きたくない。
鞄から音楽プレイヤーを取り出し、イヤホンを耳につける。
好きな音楽を流しながら瞼を閉じ、一体どのくらい眠っていたのか。
目を覚した私は横を向いて眠っていて、ボンヤリとする頭で目の前の光景を見ていた。
ゴロの尻尾が二本と、二本足で立っている姿に「ゴロって立てたんだ」なんて呑気に思っていると、何やら声が聞こえる。
両親達が帰ってきたんだろうかと思いながら、ボーッとした脳がハッキリとしてきた。
「昔から気に入らん小娘だったが、今年も来やがったか」
聞き覚えのない声は、両親でも祖父母でもない。
一体誰がと思たとき、私は自分が見ている現実に息を呑む。
尻尾が二本、そして二本足で立ち続けているゴロ。
明らかに可笑しい。
確かに、二本足で立ち上がる猫はテレビでも見たことはあるけど、それとはどこか違っている。
そのとき、振り返ったゴロと目が合い、私はドキッと心臓を高鳴らせ、ゴロは目を見開いた。
「見られちまったか。まあいい、お前には沢山言ってやりたい事があったからな」
「ゴロが……喋ってる」
状況が理解できていない私を置いて、ゴロは淡々と話し出す。
まるでお年寄りが若者に説教するみたいに「誰もいないからと寝転がるな」だとか「墓参りは毎年行け」だとか、何か聞いててイライラしてくる。
私は起き上がると「何で猫にそんなこと言われなきゃいけないわけ」と、ムッとした表情になる。
いきなり喋りだしたかと思ったらお説教。
コイツは言葉が話せてもやっぱり仲良くなれない猫だ。
「年寄りの言う事は素直に聞くもんだ」
「誰が猫の言う事なんて聞くのよ」
「小さな頃から見てきたってのに、生意気な小娘だな」
何が見てきたんだか。
睨み続けてきたので間違いじゃないのかと突っ込みたくなる。
私には一度も懐いたことなんてないくせに、飼われてる猫が生意気だ。
「てか、何でアンタ話せるわけ」
「今更そこか。お前の頭が心配になるな」
イチイチ腹が立つ猫だ。
話さない状態でもイラッとするのに、話せる今は更に私をイライラさせる。
ゴロはやれやれといった素振りを見せると、自分が化け猫になったことを話し出す。
猫は、決められた年月生きると化け猫となり、二足で歩いたり、人の言葉が話せるようになったりする。
化け猫か、そうでないかの見分け方は尻尾。
二つに分かれているのは化け猫の印。
普段化け猫は、普通の猫と変わらず生活をする。
だが、お盆のときだけその姿を表すことが許されている。
ただし、見せることができる相手は一人と決められていた。
「残念だったね。折角の一人が私になっちゃって」
「いや。ワシが話したかったのは小娘、お前だから丁度よかった」
世話をしている祖父母のどちらかと話したかったんじゃないかと思って嫌味を言ったんだけど、ゴロが私と話したかったとはどういうことなのか。
さっきの口煩いことをただ言いたかったのか、それとも私が嫌いだということを直接言うつもりなのか。
そんなことを考えていた私の耳に聞こえたのは「ありがとう」の一言で、その言葉を聞いたあと目を覚ました私は、畳の上で眠っていた。
部屋の中をキョロキョロとすると、部屋の隅でゴロが丸まり眠っている。
その尻尾は一本で、さっきのは夢だったのかと不思議に思いながら「ゴロ、アンタ話せるの」と声をかけるがやはり返事はなく、夢だったんだと何だかホッとする。
しばらくして両親達が帰ってくると、お婆ちゃんが隅で丸々頃な近づき触れる。
お婆ちゃんは何度もゴロを撫で「良く生きたね」と一言漏らしす。
そう、ゴロは亡くなっていた。
その日、私はお婆ちゃんからある話を聞かされた。
ゴロは、私がまだ小さな頃に見つけた猫なんだと。
まだ赤ん坊だった私は、お婆ちゃんにおんぶをされて散歩をしていた。
その途中、背中で私が何かを訴えだし、どうしたんだろうかとお婆ちゃんが顔を向けると、私の小さな手がドブの溝を指差しております、そこには子猫がいた。
弱っていた子猫、それがゴロ。
お婆ちゃんはゴロを飼うことに決めた。
それから毎年私が来ると、ゴロは離れたところからジッと私を見ていたという。
お婆ちゃんが言うには、ゴロは自分を助けてくれた私をジッと見守っていたんじゃないかと言っていた。
その時、ふと夢で言われたゴロの言葉を思い出し、私の頬には一筋の涙が伝う。
この涙の意味はわからない。
ただ、ゴロはやっぱり化け猫になっていたんじゃないだろうかと思った。
《完》
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