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今どこにいますか?

 今、どこにいますか──。


 私には、幼い頃ヒーローがついていた。
 泣いていると現れて、困っていると助けてくれるヒーロー。
 でもそのヒーローが現れると、決まって兄はいなかった。

 そんな私も成長していくにつれて、ヒーローの正体に気づく。



「お兄ちゃんだよね?」

「俺はヒーローだ」

「だからお兄ちゃんだよね?」



 頑なに兄であることを認めないヒーロー。
 六才になった私は、周りの子よりしっかりした子供となり、ヒーローの出番は少なくなっていった。

 出番といえば、飲み物などを持ってきてもらったりするくらい。
 いわば雑用。
 それでもヒーローは、私がありがとうと言えば満足気にニッと笑うのだから、一体どっちが子供なのかわからない。

 そんなヒーローも私も今は社会人。
 働いて疲れて愚痴をこぼす相手は兄。



「でさー、その人いっつも私に仕事押し付けてくるの」

「それは大変だな……」



 いつものように、嫌なことがあって兄に電話をしたけれど、何だかいつもより元気がない。
 でも私は、特に気にすることもなく一人で話し続けた。


 それから数ヶ月後。
 兄は倒れた。
 職場環境に問題があり、食事をまともにとれず疲労だったと母から連絡をもらい私は泣いた。

 私より大変だったのは兄なのに、兄はいつも私の話をきいて相談に乗ってくれた。
 そんな兄に私は何もしていない。
 していないどころか違和感を感じていたのに、私は自分の事ばかりだった。

 兄は昔から変わらず私のヒーローで、今度は私がそのヒーローになる番。

 仕事終わりや休みの日、私は毎日兄のいる病院に行った。
 電話ばかりで会っていなかった兄はとても痩せていたのに、私が行くといつも笑顔で「愚痴、きいてやるぞ」と言う。



「今日からは私がきくよ」



 口元に笑みを浮かべ「ヒーローだからね」と続ける。


 ヒーローは今、どこにいますか?
 それはきっと、私の側と私の中に──。


《完》
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